コンピュータ将棋研究Blog

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【矢倉】5手目▲7七銀に対する急戦策の研究

現在、矢倉の序盤は繊細さを極めており、一手一手が非常に難しくなってきている。

特に分岐点となる5手目の▲6六歩と▲7七銀の比較はその時々により選択率が異なっており、現在(2016年7月時点)では▲7七銀が優勢のようである。

これは▲6六歩と指すと後手からの居角左美濃急戦が嫌だからという見方が強いと思われる。

今回は5手目▲7七銀(▲6六歩保留型)に対する2つの急戦策を研究していきたいと思う。

①gpsfish流△6五桂速攻作戦

ponanza-990XEE vs. GPSFish-WCSC24 (2014-05-08 21:30) http://wdoor.c.u-tokyo.ac.jp/shogi/view/2014/05/08/wdoor+floodgate-900-0+ponanza-990XEE+GPSFish-WCSC24+20140508213006.csa

 (初手からの指し手)

▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲7七銀 △6四歩 ▲2六歩 △3二銀 ▲4八銀 △4二玉 ▲3六歩 △7四歩 ▲2五歩 △8五歩 ▲7八金△7三桂 ▲3七銀 △6五桂

(下図)

f:id:fg_fan7:20160717141009p:plain

5手目▲7七銀型は▲6六歩を突いていない為に6筋が争点になりにくいが、それを逆用した速攻もある。それがこのgpsfish流△6五桂速攻作戦である。

ここでもし▲6六銀なら △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △7六飛▲4六銀 △7二銀といった進行が考えられ、互角である。

本譜は▲4六銀 △3一玉 ▲3五歩 △同 歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △7七桂成 ▲同 金 △3三角 ▲2八飛 △3六銀(下図)と進んだ。

f:id:fg_fan7:20160717141812p:plain

序盤早々で銀桂交換に成功し、後手まずまずの序盤戦といえるだろう。

この展開は一気に先手が潰れるわけではないが、先手としては嫌な筋である。

もう一例見てみよう。

Nanoha_FX8350_4GHz vs. gpsfish_mini (2015-04-29 18:00) http://wdoor.c.u-tokyo.ac.jp/shogi/view/2015/04/29/wdoor+floodgate-600-10+Nanoha_FX8350_4GHz+gpsfish_mini+20150429180004.csa

(初手からの指し手)

▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲7七銀 △3二銀 ▲5六歩 △7四歩 ▲4八銀 △7三桂 ▲2六歩 △6五桂(下図)

f:id:fg_fan7:20160717142451p:plain

第一例よりも早い段階での仕掛け。ここで▲6六銀なら △8五歩 ▲7八金 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛▲8七歩 △7六飛 ▲6九玉 △6四歩といった進行が考えられる。

本譜は▲7八金 △8五歩 ▲2五歩△6二銀 ▲2四歩 △同 歩 ▲6六銀 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △7六飛 ▲6九玉 △8六歩 ▲5五歩 △7八飛成(下図)と進んだ。

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この作戦は形によっては△7八飛成の強襲が成立する場合がある。以下▲同 玉 △8七歩成▲同 玉 △8六歩 ▲同 玉 △7八金と進み、先手は受けが難しい。

第一例の将棋と違って、先手の飛車の横利きが効いていないのが辛いところだ。

後手としてはチャンスがあればこのような飛車切りを常に狙っていきたいところだ。

②左美濃飛車先歩交換逆襲作戦

将棋ウォーズ棋譜(2016Pona九段対yuuki_130八段)

(初手からの指し手)

▲3八銀 △3四歩 ▲2六歩 △4二銀 ▲7八銀 △3二金 ▲2五歩 △3三銀 ▲7六歩 △8四歩 ▲3六歩 △6二銀 ▲3七銀 △5四歩 ▲4六銀
△8五歩 ▲6八玉 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲6六角 △8二飛 ▲8四歩(下図)

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今回は先手番が左美濃の将棋だが、後手番でも応用可能なので紹介する。

△4四歩保留型矢倉に対して、先手は一目散に早繰り銀にする。

私の見解ではこの早繰り銀は有力で、△4四歩保留型に対しては腰掛銀よりも良いと思う。さて本譜だが後手は早々に8筋の飛車先の歩を交換した。それに対する▲6六角が狙いを秘めた一手で▲8四歩とプレッシャーをかける。

(上図からの指し手)

△5二金 ▲3三角成 △同 角 ▲8三銀 (下図)

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本譜は△5二金だったので▲3三角成からの強襲が成立した。

このように△4四歩(▲6六歩)保留型矢倉はいきなり角を切る強襲が狙える。

後手としては△6四歩と指して、金を一段目にしておいたほうがよかっただろう。

(技巧、やねうら王での検討より)

まとめ

今回は5手目▲7七銀に対する2つの急戦策の研究をした。

どちらも序盤早々から攻める展開で一手一手が非常に難しい。

勿論今回紹介した作戦以外にも、矢倉中飛車、米長流、中原流、△5三銀右急戦なども有力である。

またそれらも紹介していきたい。

下の本は矢倉の序盤の駒組みを徹底追及した名著。

今回の記事と合わせてご覧いただきたい。