はじめに
アマチュア間では根強い人気がある角換わり右玉。
今までも本Blogではその対策記事をいくつか書いてきた。
www.fgfan7.com
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また、豊島の将棋 実戦と研究という棋書に載っている銀矢倉から穴熊に組み替える作戦も対角換わり右玉の作戦として有力視されている。
(参考図)
ただ、この指し方は駒が偏るうえ、攻めを繋げるのに高度な技術を要するため、
普段穴熊を指さない人にとっては特に指しこなすのが難しいと思う。
よって、駒の配置をバランスよくした中住まいの作戦を今回は考えてみたい。
実戦例
実戦例その1
開始日時:2013/06/20 20:00:00
棋戦:wdoor+floodgate-900-0+ponanza-990XEE+NineDayFever_XeonE5-2690_16c+20130620200004
先手:ponanza 後手:NDF
動く再生盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/176953
(初手からの指し手)
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △8四歩 ▲2五歩 △3二金 ▲7八金 △8八角成 ▲同 銀 △2二銀 (途中図)
▲3八銀 △3三銀 ▲1六歩 △7二銀 ▲1五歩 △6四歩 ▲4六歩 △6三銀 ▲3六歩 △7四歩 ▲4七銀 △6二玉 ▲3七桂 △7三桂 ▲5八玉(下図)
後手のNineDayFeverが一手損角換わりから右玉を見せたところで、先手のponanzaが▲5八玉と上がったのがこの作戦の骨子となる一手である。
ここではまだ先手からの狙いがわからないので本譜の進行を見てみよう。
(上図からの指し手)
△5二金 ▲4八金 △5四歩 ▲7七銀 △8一飛 ▲6六歩 △9四歩 ▲9六歩 △7二玉 ▲6八銀 (途中図)
△8五歩 ▲6七銀 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △8一飛 ▲2九飛 △4四銀 ▲5六歩(下図)
先手は▲7七銀~▲6八銀と引き、▲6七銀型に組み替える。
これは左桂の活用と将来飛車を左辺に転回する狙いを秘めている。
右玉がバランスに優れているのならさらにその上を行くバランスのとれた構えを見せようというのがこの作戦のポイントである。
(上図からの指し手)
△3五歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲3六歩 △4四銀 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △5五歩 ▲2三歩 (途中図)
△5六歩 ▲同銀右 △3五歩 ▲2二歩成 △3三銀 ▲2九飛 △2二銀 ▲3五歩 △3六歩 ▲4五桂(下図)
後手は△3五歩から一歩を持とうとするが、先手も手に乗って応戦する。
上図は難しい形勢ながら、後手にとっては5筋の薄さが気になる展開となった。
実戦例 その2
開始日時:2013/06/28 11:30:00
棋戦:wdoor+floodgate-900-0+ponanza-990XEE+gps_l+20130628113001
先手:ponanza
後手:gps_l
動く再生盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/176955
(初手からの指し手)
▲2六歩 △8四歩 ▲7六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3二金 ▲7八金 △8八角成 ▲同 銀 △2二銀 ▲3八銀 △3三銀 ▲7七銀 △6二銀 (途中図)
▲1六歩 △6四歩 ▲1五歩 △6三銀 ▲3六歩 △9四歩 ▲9六歩 △7四歩 ▲3七桂 △7三桂 ▲4六歩 △5二金 ▲2九飛 △8一飛 ▲4七銀 △6二玉 ▲5八玉(下図)
gpsの一手損角換わりからはじまった将棋で、実戦例その1と似たような展開。
ここでも相手の右玉が確定したのを見て早々と先手は▲5八玉型にする。
(上図からの指し手)
△8五歩 ▲4八金 △5四歩 ▲6六歩 △4四銀 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △7二玉 ▲2九飛 (途中図)
△3三桂 ▲2三歩 △2一歩 ▲6八銀 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △8一飛 ▲6七銀 △5五歩 ▲7七桂 △6二金 ▲8九飛(下図)
実戦例その1と同じように先手は▲6七銀型に組み替える。
そして▲7七桂から▲8九飛と左辺からの逆襲を見せた。
右玉という構えは8筋から9筋が案外脆いのでこのような指し方は有力である。
(上図からの指し手)
△5四角 ▲8六歩 △3五歩 ▲同 歩 △3六歩 ▲8五歩 △3七歩成 ▲同 金 △3五銀 ▲8四歩 (途中図)
△2五桂 ▲3八金 △8二歩 ▲6八玉 △2六銀 ▲2二歩成 △同 歩 ▲5六歩
(途中図)
△3七銀成 ▲5五歩 △4七成銀 ▲5四歩(下図)
後手は△5四角と打ち先手の右桂を狙うが、先手はあっさりとその桂馬を取らせる。
その代償に8筋の歩をどんどん伸ばしていく。
上図以下は▲9五歩からさらに9筋にも手を付け、最後は▲9四角が決め手となった。
(参考図)
その他 参考棋譜1
https://shogi.io/kifus/176957
その他 参考棋譜2
https://shogi.io/kifus/176958
その他 参考棋譜3
https://shogi.io/kifus/176961
まとめ
今まで角換わり右玉に苦しんできた人は、ぜひこの中住まいバランス型の作戦を試してもらいたい。
玉形は従来の作戦よりも薄いが、自陣のバランスは非常によく、角の打ち込みの心配も少ない。
持ち時間の短いアマチュア大会では常に角打ちの隙の心配をともなう従来の指し方よりも有力と言えるかもしれない。
また今回は▲7七銀型から▲6七銀型に組み替える作戦を中心に紹介したが、▲7七銀から▲6六銀→▲7五歩と仕掛けるのも有力である。
実戦を重ねることにより、皆さんもこの作戦独自の指し回しを会得してみてほしい。