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第二期電王戦第1局で指されたPonanzaの初手▲3八金戦略について

はじめに

昨日4/1に第二期電王戦2番勝負第一局が行われ、先手のPonanzaが後手の佐藤天彦名人に71手の短手数で完勝した。

↓はその棋譜のリンク。

http://denou.jp/2017/kifu/20170401.html

私は今まで将棋ウォーズの2016Ponaが初手▲4八金という手を指しているのは知っていたが、この初手▲3八金という手は盲点になっていた。

もちろん、この初手の意図にはソフトの事前貸し出しによる研究にハマらないためにランダム性を持たせるための戦略であることが間違いないが、それでもいざ咎めるとなるとそれはなかなか困難であると思う。

今回は私が現時点で考えている初手▲3八金から派生する戦略について書いていきたいと思う。

なお、今回の記事を書くにあたっては私が実際に初手▲3八金と指した将棋を参考にして執筆した。

 

初手▲3八金対中飛車

ケース1

(初手からの指し手)

▲3八金 △3四歩 ▲2六歩 △4二銀 ▲2五歩 △3三角 ▲7六歩 △5四歩 ▲6八玉 △4四歩 ▲7八銀 △5二飛 ▲7九玉 △6二玉 ▲3六歩△7二玉 ▲3七金 △4三銀 ▲4六金 △8二玉 ▲4八銀(下図)

f:id:fg_fan7:20170402103806p:plain

対中飛車には左美濃+▲4六金型で戦う。

中飛車に対する▲4六金型は昔からタコ金戦法というものもあり、悪い形ではない。

後手から△4五歩と突かれても▲同金でまた▲4六金の位置に戻りやすいのである。

これは▲4六銀型では実現できない点だ。

(上図からの指し手)

△9二香 ▲9六歩 △9一玉 ▲9五歩 △8二銀 ▲7七角 △7四歩 ▲8六歩 △7一金
▲8七銀 △7二飛 ▲7八金 △7五歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲7六歩 △7二飛 ▲8八玉 △5一金 ▲9八香 △6一金左 ▲9九玉(下図)

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本譜は相穴熊の展開になった。

この後は右銀を59~68と引き付け、場合によっては88まで持っていく指し方も視野に入れて一局だ。

ケース2

(初手からの指し手)
▲3八金 △3四歩 ▲2六歩 △5四歩 ▲4八銀 △5二飛 ▲6八玉 △5五歩 ▲2五歩 △3三角 ▲3六歩 △4二銀 ▲3七金 △6二玉 ▲4六金△7二玉 ▲7八銀 △8二玉 ▲7九玉 △7二銀 ▲9六歩 △9四歩 ▲3七桂 △3二金 ▲3五歩 △同 歩 ▲同 金

(下図)

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ケース2は先手が角道を保留する指し方をみていく。

この場合もケース1と同様に左美濃+▲4六金型に組んでみた。

そして▲3五歩△同歩▲同金と仕掛けていったのが▲4六金型を活かした指し方。

これも銀の場合だと上図最終手から△3六歩の傷が残っている。

しかし、金で仕掛けていったので36の地点を利きがあるので大丈夫だ。

(上図からの指し手)

△5六歩 ▲同 歩 △同 飛▲5七歩 △5一飛 ▲2六飛 △1五角 ▲3六飛 △3三銀 ▲1六歩(下図)

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後手は5筋の歩を交換してきたが、それにはいったん歩で受けてから▲2六飛と浮いておく。次に▲3六飛~▲4五桂といった仕掛けを狙っているのだ。

本譜は△1五角から揺さぶりをかけたものの、角が狭くなり▲1六歩で角が捕まり先手優勢となった。

相居飛車で▲3六歩を取らせる形

(初手からの指し手)

▲3八金 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲7八金 △2二銀 ▲4八銀 △3二金 ▲3六歩 △8五歩 ▲5八玉 △8六歩 ▲同 歩△同 飛 ▲8七歩 △3六飛

(下図)

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次に相居飛車で▲3六歩を取らせる指し方をみていく。

初手で▲3八金と上がってしまった以上、先手は相掛かり模様の場合は中住まいに組むのがバランス面を考えても自然だろう。

本譜は後手に意図的に▲3六歩を取らせる指し方を選んだ。

(上図からの指し手)

▲3七銀 △3五飛 ▲4六銀 △8五飛 ▲7六歩 △5二玉 ▲3七桂 △8八角成 ▲同 銀 △3三銀 ▲7七桂 △8四飛▲7五角 △5四飛 ▲6五桂 △6二銀 ▲4五桂(途中図)

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△4四銀 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲3四飛 △3三歩 ▲5三桂左成△同銀上 ▲同桂成△同 銀 ▲5四飛 △同 銀 ▲5三飛(下図)

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36の歩を後手に取らせる代わりに先手は37~46と銀を活用できる。

そして85に戻った飛車を▲7七桂と飛車取りに当てながら活用できるのも味が良い。

あとは両桂を跳ねて角と桂で中央を狙う。最後に飛車も活用して中央突破が決まり、攻めが成功した。

初手▲3八金対後手矢倉

(初手からの指し手)

▲3八金 △3四歩 ▲2六歩 △4二銀 ▲2五歩 △3三銀 ▲7六歩 △5四歩 ▲7八銀 △3二金 ▲6八玉 △5二金 ▲7九玉 △4四歩 ▲3六歩△4一玉 ▲3七金 △3一角 ▲4六金(下図)

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本記事の最後として初手▲3八金に対して後手が矢倉に組むケースをみていく。

これには流行の矢倉左美濃急戦に近い形をイメージして指していく。

この場合も左美濃+▲4六金型に組んでみた。

案外この形は応用範囲が広く万能な構えといえるかもしれない。

(上図からの指し手)

△4三金右 ▲4八銀 △6二銀 ▲3七桂 △8四歩 ▲3五歩 △同 歩 ▲同 金 △5三銀 ▲4六歩 △8五歩▲7七角 △4二角 ▲4五歩(下図)

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5段目まで金を進出した後は、4筋も絡めて桂馬の活用も視野に入れつつ攻めていった。上図は後手の矢倉陣がすでに収拾困難になっている可能性が高い。

右金で攻めるというのは意外と有力かもしれないとこの指し方を選んでみて感じた。

(上図からの指し手)

△3四歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲4四歩 △同銀右 ▲同 金 △同 銀 ▲2二歩 △同 金 ▲4五歩 △3三銀 ▲4四銀△3二金打 ▲4三銀不成△同 金 ▲4四金 △3二銀 ▲4三金 △同 銀 ▲4四金 △3二金打 ▲4三金 △同 金 ▲4四銀 △3二金打 ▲4三銀成 △同 金▲2四飛 (途中図)

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△2三歩 ▲2九飛 △6四角 ▲2五桂 △4七歩 ▲3三桂成 △同金上 ▲4七銀 △3七角成 ▲4四銀 △同金直 ▲同 歩 △4七馬 ▲4三歩成△2九馬 ▲3三角成 △同 桂 ▲5三金(下図、以下先手の勝ち)

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攻めが上手く決まった一局だった。

まとめ

今回はPonanzaの指した初手▲3八金を私の実戦をもとにしていくつかの戦型別に指し方を紹介してみた。

ここで紹介した戦型は一部ではあるが、他の戦型でもこの初手▲3八金戦略は十分指しこなせるものだと感じている。

皆さんもまずはネット将棋でこの指し方を取り入れてみて「これはなかなかいけるぞ」

と感じてもらえればうれしく思う。