コンピュータ将棋研究Blog

Twitterアカウントsuimon@floodgate_fanによるコンピュータ将棋研究ブログです。

スポンサーリンク

対振り銀冠穴熊の急所 その2~基本編~

シェアボタン
スポンサーリンク

はじめに

その1からの続き。

www.fgfan7.com

その1では、居飛車側が持久戦志向の場合に振り飛車側から急戦を仕掛けてきた際の将棋を紹介した。

そこで藤井システムやトマホークの破壊力を知っていただけたかと思う。

その2では対振り銀冠穴熊システム(左美濃→銀冠→銀冠穴熊)の基本的な駒組みの仕方からみていきたい。

基本的な駒組み(骨子の▲6六角)

ponanza-990XEE vs. gpsfish_normal_1c (2015-02-10 01:30)

(初手からの指し手)

▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲5八金右 △3二銀 ▲4八銀 △4三銀 ▲7八銀

(途中図)

f:id:fg_fan7:20170513121706p:plain

△4二飛 ▲5六歩 △6二玉 ▲6八玉 △7二銀 ▲9六歩 △9四歩 ▲7九玉

(途中図)

f:id:fg_fan7:20170513121956p:plain

△7一玉 ▲5七銀 △5二金左 ▲8六歩 △6四歩 ▲8七銀 △7四歩 ▲6六角(下図)

f:id:fg_fan7:20170513122038p:plain

途中図の▲7八銀~▲7九玉の順で左美濃に組むのは今まで紹介してきた通りの指し方。

そして上図の▲6六角がこの戦法を指す上で骨子となる一手である。

この▲6六角に代えて▲7八金 △7三桂 ▲2五歩 △3三角 ▲6六歩

(下図)

f:id:fg_fan7:20170513132558p:plain

と角道を止める指し方もあるが、以下、△6三金 ▲7七角 △8二玉 ▲8八玉 △5四歩 ▲6七金右

(途中図)

f:id:fg_fan7:20170513132939p:plain

△8四歩 ▲9八香 △4五歩 ▲9九玉 △1四歩 ▲1六歩 △4四銀 ▲3六歩 △8三銀 ▲6八銀 △7二金(下図)

f:id:fg_fan7:20170513133037p:plain

と進み、互角の形勢(先手+200ほど)。

先手も堅陣には組めたが、後手も△4四銀型と銀冠の好形に組み替えており、先手はっきり良しとまではいかないようだ。

とくに先手側としては角が窮屈なのが気になる方も多いのではないだろうか。

そこで本譜の▲6六角である。(図を再掲)

f:id:fg_fan7:20170513122038p:plain

この▲6六角の狙いは角筋を通したまま堅陣に組み上げることを目指している点にある。

では本譜の進行を見ていこう。

悠々と銀冠穴熊へ

(上図からの指し手)

△7三桂 ▲8八玉 △8二玉 ▲2五歩 △3三角 ▲9八香 △8四歩 ▲9九玉(途中図)

f:id:fg_fan7:20170513133855p:plain

△8三銀 ▲6八金寄 △5四銀 ▲7九金 △7二金 ▲7八金寄 △1四歩 ▲8八金上(下図)

f:id:fg_fan7:20170513133938p:plain

本譜の後手の指し方はとてもオーソドックスなものだが、アマチュア初段クラスならこのような展開になりやすいと思う。

▲6六角の効果で△6五桂が角銀両取りにならないので先手は悠々と銀冠穴熊に組み上げることに成功した。

上図、▲8八金上の局面をソフトに6533653297局面読ませたところの評価値はなんと先手+525。

まだ、駒がぶつかっていない段階でここまで高い数値が出るのは珍しい。

その理由を考察してみるに、

・銀冠穴熊の金銀の連結の良さ

・角筋が通っていることにより、その後の攻めを組み立てやすい

といったものが挙げられると思う。

実は上図はアマチュア高段レベルなら厳しく言えばすでに勝負ありの局面なのだが、初段クラスの方向けにその後の展開もみていきたいと思う。

(上図からの指し手)

▲3六歩 △6三金直 ▲3五歩 △同 歩 ▲3八飛 △3二飛 ▲3五飛 (途中図)

f:id:fg_fan7:20170513135239p:plain

△4三銀 ▲4六歩 △3四歩 ▲3七飛 △1五歩 ▲4五歩(途中図)

f:id:fg_fan7:20170513135317p:plain

△2二飛 ▲4四歩 △同 角 ▲同 角 △同 銀 ▲3四飛(下図)

f:id:fg_fan7:20170513135409p:plain

通常の持久戦の将棋と異なり、先手の角筋が通っているのでより攻めが強力になる。

まず、3筋に飛車を持っていき歩を交換。そして4筋を絡めて攻めていく。

途中図の▲4五歩に対して△同歩と取ると、▲3三角成が厳しい。

以下△同飛なら▲2二角。△同桂なら▲4四歩で先手勝勢となる。

また、▲4五歩に対して△5四金と全力で受けにきても以下、▲4四歩△同 金▲4七飛△4五歩打 ▲3七桂△6五歩▲7七角(参考図)

f:id:fg_fan7:20170513140657p:plain

と進み、先手好調となる。

どこまでいっても先手の角道がすーっと通っているのが大きく攻めが途切れる心配がない。

本譜は△2二飛と回ったものの角交換に成功し、先手は有利を拡大した。

f:id:fg_fan7:20170513135409p:plain

(上図からの指し手)

△3三銀 ▲3七飛 △2八角 ▲3四歩 △4二銀 ▲6六角 △1二飛 ▲2四歩(途中図)

f:id:fg_fan7:20170513141015p:plain

△1九角成 ▲2三歩成 △1四飛 ▲2七飛 △6五歩 ▲7七角 △1八馬 ▲2六飛 △3四飛 ▲1一角成

(下図)

f:id:fg_fan7:20170513141111p:plain

先手は▲3七飛と引いておくのが桂馬のヒモを利用して好位置となる。

角を6六に設置して▲2四歩から戦線を拡大。

上図は互角の駒割ながら玉形の堅さが段違いなのもあり、先手+1000以上で優勢の局面である。

形勢判断のポイント

ここで形勢判断における玉形の堅さについて説明しておきたい。

上図の局面は先手+1000以上だったが、もし下図のような居飛車急戦対振り飛車の局面における中盤戦ならどうだろうか。

f:id:fg_fan7:20170513141943p:plain

↑居飛車急戦対振り飛車の仮定の局面。▲1一角成まで。

図で6840925811局面を読ませてみたところ、評価値は先手+240まで下がってしまった。

銀冠穴熊の局面と比べると約800点ほど下がってしまったのである。

その原因は玉形の堅さの違いにあると考えられる。

盤面左側の駒の配置が違うだけだが、ここまでソフトの評価値は変わってしまうのである。

それだけ互いの陣形の堅さというのは形勢に大きく左右されるという事なのだ。

形勢判断における玉形の堅さについて説明し終わったので本譜に戻る。

銀冠穴熊の寄せ

f:id:fg_fan7:20170513141111p:plain

(上図からの指し手)

△3九飛成 ▲3二と △同 龍 ▲2一馬 △3八龍 ▲2二飛成 △4九龍 ▲4四歩 △同 龍 ▲4五歩 △同 馬 ▲4七香(途中図)

f:id:fg_fan7:20170513143029p:plain

△4六歩 ▲同 香 △同 馬 ▲同 銀 △同 龍 ▲2四角(途中図)

f:id:fg_fan7:20170513143126p:plain

△4九龍 ▲4二角成 △3二歩 ▲同 龍 △6六歩 ▲同 歩 △7九銀 ▲6一銀(下図)

f:id:fg_fan7:20170513143156p:plain

まで105手でponanzaの勝ち

あとはponanzaの正確な寄せを見るばかりとなる。

途中図の▲4七香の田楽指しが痛打となった。

▲2四角で銀を手順に取り、▲6一銀と引っ掛けたところでgpsfishの投了となった。

投了図以下は、△8八銀成▲同金△6二金打に▲5五桂と攻めていけば先手が勝つ。

この一局を振り返ると対振り銀冠穴熊の基本のエッセンスが序盤・中盤・終盤それぞれにおいて凝縮されており、何度も棋譜を鑑賞して自分のものとして吸収したいクオリティである。

まとめ

・対振り銀冠穴熊システムの骨子は角道を通す▲6六角にある。

・堅陣に組み上げてまずは作戦勝ち以上の形勢に。

・角道が通っているので攻めやすい。

・攻め合ったところで形勢は+1000以上。その理由は陣形の堅さの差にある。

この戦法については増田康宏四段がTwitterでポイントを解説しているのでそちらも参考にされたい。

twitter.com

また、来月には増田四段によるこの戦法の戦術書も発売されるので要チェックだ。

次回その3ではまた違う棋譜からこの戦法のポイントを紹介していきたい。