コンピュータ将棋研究Blog

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雁木戦法の復活!ponanzaから学ぶ新戦略 その4(前編)

はじめに

雁木の流行が続いている。

その要因のひとつとして、5手目▲6六歩からの矢倉が左美濃急戦に苦戦を強いられているのが関係しているかもしれない。

(5手目▲6六歩からの矢倉)

手数=7 ▲7七銀 まで
後手:後手
後手:後手
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 ・ 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 角 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:先手
先手の持駒:なし
手数=7  ▲7七銀  まで
後手番

f:id:fg_fan7:20170625083006j:plain

(5手目▲6六歩からの雁木模様)

手数=7 ▲7七角 まで
後手:後手
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 角 ・ 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ ・ ・ 銀 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:先手
先手の持駒:なし
手数=7  ▲7七角  まで

後手番

f:id:fg_fan7:20170625083204j:plain

このようにソフトの評価値的にも5手目▲6六歩から矢倉を目指すよりも雁木にしたほうが数値がいいというデータも出ている。(矢倉を目指すなら5手目▲7七銀を推奨)

とにもかくにも、雁木は今後も研究が進められていくだろう。

ではまえがきはこれくらいにしてその4の実戦を見ていこうと思う。

実戦例

↓動く再生盤はこちらから

雁木戦法実戦例その4 | Shogi.io(将棋アイオー)

棋戦:第27回世界コンピュータ将棋選手権 二次予選
先手:読み太
後手:Ponanza Chainer

(初手からの指し手)

▲7六歩 △3二金 ▲2六歩 △8四歩 ▲7八金 △8五歩 ▲7七角 △3四歩 ▲8八銀 △4四歩 ▲6九玉 △4二銀 ▲3六歩 △4三銀(下図)

手数=14 △4三銀 まで
後手:Ponanza 
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v銀 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 歩 ・|六
| 歩 歩 角 歩 歩 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 銀 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:読み太
先手の持駒:なし
手数=14  △4三銀  まで

10手目△4四歩のところで△7七角成なら角換わりの将棋になっていたところ。

本譜は△4四歩と角道を止め、△4二銀~△4三銀と雁木模様の駒組みとなった。

先手の9手目▲8八銀では▲6八銀も考えられ、本譜と同じく△4四歩と指すと、相雁木の展開も考えられる。(その5以降で紹介する)

(上図からの指し手)

▲6八角 △5二金 ▲2五歩 △6二銀 ▲4八銀 △7四歩 ▲5八金 △7三桂 ▲5六歩 △3三角(下図)

手数=24 △3三角 まで
後手:Ponanza
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀v金 ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v桂v歩v歩v銀v角v歩v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 銀 金 角 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:読み太
先手の持駒:なし
手数=24  △3三角  まで

先手は▲8八銀と上がったので矢倉を目指すのは自然な駒組みだろう。

それに対して、後手は先手の▲5六歩をみて△3三角と上がる。

その1、2、3で見てきた指し方とほぼ同じでponanzaの得意形と言えそうだ。

(上図からの指し手)

▲3七銀 △5四歩 ▲7七銀 △4一玉 ▲7九玉 △4二角(下図)

手数=30 △4二角 まで
後手:Ponanza
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀v金v角v金 ・ ・|二
|v歩 ・v桂v歩 ・v銀 ・v歩v歩|三
| ・ ・v歩 ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 銀 歩 ・ 歩 銀 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 角 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:読み太
先手の持駒:なし
手数=30  △4二角  まで

先手の読み太はすぐに▲2四歩と突かない方針。

それに対してponanzaは△4二角と引く指し方を採用した。

△4二角に対して▲2四歩と突くのは、以下△同角▲同角△同歩▲同飛△2三歩と指してその1~3で紹介した指し方に合流すれば大丈夫だ。

その展開は後手は角を引いた分一手損にはなるが、それでも駒の配置に隙のない雁木にとってはのぞむところの展開となる。

(上図からの指し手)

▲6六歩 △6四歩 ▲6七金右 △6三銀 ▲3五歩 △同 歩 ▲同 角 △8一飛(下図)

手数=38 △8一飛 まで
後手:Ponanza
後手の持駒:歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金v角v金 ・ ・|二
|v歩 ・v桂v銀 ・v銀 ・v歩v歩|三
| ・ ・v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ 角 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 銀 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:読み太
先手の持駒:歩 
手数=38  △8一飛  まで

本局は先手は2筋の交換をせずに3筋の歩を交換する展開に。

雁木側にとってはこちらの指し方のほうが難敵である。

△8一飛はバランスのいい指し方。

雁木と下段飛車は基本的に相性がいいので間合いを図る意味でも覚えておいて損はない。

(上図からの指し手)

▲9六歩 △9四歩 ▲6八角 △1四歩 ▲3六銀 △6五歩 ▲同 歩 △9五歩 ▲同 歩 △6五桂(下図)

手数=48 △6五桂 まで
後手:Ponanza
後手の持駒:歩二 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金v角v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v銀 ・v銀 ・v歩 ・|三
| ・ ・v歩 ・v歩v歩 ・ ・v歩|四
| 歩v歩 ・v桂 ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ 銀 ・ ・|六
| ・ 歩 銀 金 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 金 角 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:読み太
先手の持駒:歩三 
手数=48  △6五桂  まで

先手の▲3六銀をみて△6五歩から仕掛けていく。

△3一玉などと指すとかえって2~3筋の戦場に近づく意味合いがあるのでこの場合は△4一玉型が好位置だ。9筋も突き捨てて△6五桂と勢いよく仕掛けていった。

(上図からの指し手)

▲6六銀 △9六歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲6五銀 △6四歩 ▲5四銀 △同銀右 ▲5五歩 △6三銀(下図)

手数=58 △6三銀 まで
後手:Ponanza
後手の持駒:銀 歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金v角v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v銀 ・v銀 ・ ・ ・|三
| ・ ・v歩v歩 ・v歩 ・v歩v歩|四
| 歩v歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|五
|v歩 ・ 歩 ・ ・ ・ 銀 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 金 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 金 角 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:読み太
先手の持駒:桂 歩四 
手数=58  △6三銀  まで

△6五桂と跳ねた局面では1、▲8八銀 2、▲6六銀 が考えられる。

1、▲8八銀は6五の桂を取り切ってしまおうという指し方だが、

以下△8六歩 ▲6六歩 △8七歩成 ▲同 銀 △8六歩 ▲9六銀 △9五香 ▲8二歩 △9六香 ▲8一歩成 △9九香成 ▲6五歩 △9六歩(参考図)

手数=62 △9六歩 まで
後手:後手
後手の持駒:銀 香 歩二 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ と ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金v角v金 ・ ・|二
| ・ ・ ・v銀 ・v銀 ・v歩 ・|三
| ・ ・v歩 ・v歩v歩 ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 ・|五
|v歩v歩 歩 ・ 歩 ・ 銀 ・ ・|六
| ・ ・ ・ 金 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 金 角 ・ ・ ・ 飛 ・|八
|v杏 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:先手
先手の持駒:飛 桂 歩二 
手数=62  △9六歩  まで

と進んで後手も戦える形勢。

先手としてもこのように桂を取りに行く指し方にはリスクが伴う。

よって本譜は、▲6六銀を選択した。

後手は△9六歩と攻めの味付けをしておく。

本譜最終図は銀桂交換になったものの、後手としては△6四歩は打ちたくはなかった歩なのでお互いつり合いは取れている。

強豪ソフト同士らしく均衡が保たれた展開となった。

ここから相居飛車の将棋らしく、華麗な斬り合いの将棋になっていく。

(その4 後編に続く)