はじめに
2016年12/31に行われた、電王戦合議制マッチ2016(非公式戦)。
棋士軍のメンバーは森下卓九段、稲葉陽八段、斎藤慎太郎六段。
ソフト軍のメンバーはponanza、nozomi、大樹の枝。
この注目の一戦である話題になった一手が現れた。
それが下図の△8六香である。
この手を見て、稲葉八段は頭を抱え、斎藤六段は「人類を終わらせにきたような手。こちらの玉が8八にいないのに……」局後に森下九段は「たまげました」と発言した。
この将棋の棋譜リンクは以下から
プロ棋士でも盲点になりやすいこの一手を今回はfloodgateで類似局を調べてみることにした。では早速みていきたいと思う。
矢倉囲い崩し△8六香の実戦例その1
動く将棋盤は以下のリンクから
棋戦:wdoor+floodgate-900-0+Jupiter+NineDayFever_XeonE5-2690_16c+20140128033002
先手:Jupiter
後手:NineDayFever_XeonE5-2690_16c
(途中図から)
(上図からの指し手)
△同 歩 ▲同 香 △1四歩 ▲同 香 △同 香 ▲1五歩 △7五歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲1四歩 △8六香(下図)
矢倉の脇システムの将棋で▲1五同香と取る変化。
以下、数手進んで最終手の△8六香がスピードアップを図る一手。
ここから先手陣がきれいに崩れていく。
(上図からの指し手)
▲同 歩 △同 歩 ▲8三歩 △同 飛 ▲6五角 △8四飛 ▲8五歩 △同 飛 ▲9七桂 △8四飛 ▲8五香 △7三桂 ▲8四香 △6五桂(下図)
先手の▲8五香に対して△7三桂が絶好の切り替えし。
後手の攻めは切れる心配がなくなった。それに対し先手の攻めは2六の銀が重く、出足に遅れた格好となった。
(上図からの指し手)
▲1三歩成 △同 桂 ▲6五歩 △7六歩 ▲同 金 △8七角 ▲8六金 △7八角上成▲同 飛 △6七金(途中図)
▲7九香△7八角成 ▲同 香 △5八飛 ▲3一角 △同 金 ▲7二飛 △4二銀 ▲1四桂△2一玉(途中図)
▲6八角 △6九角 ▲7九歩 △6八金 ▲同 銀 △8六銀(投了図)
まで96手で後手の勝ち
最後は鮮やかな後手の寄せを見るばかりとなった。
矢倉囲い崩し△8六香の実戦例その2
動く将棋盤は以下のリンクから
棋戦:wdoor+floodgate-900-0+gpsshogi_expt+ponanza_expt+20130501013000
先手:gpsshogi_expt
後手:ponanza_expt
(途中図から)
相矢倉から先手が攻勢に出た将棋で後手陣にも火が付いているが、後手の持ち駒は銀、桂、香がありここから反撃に出る絶好のチャンスだ。
(上図からの指し手)
△8六桂 ▲7九金 △9六歩 ▲同 歩 △9八歩 ▲同 香 △同桂成 ▲同 玉 △9六香 ▲8八玉 △8六香(下図)
まずは矢倉崩しでおなじみの△8六桂から入る。その後、端を絡めて攻めを継続させて上図の△8六香がスピードアップの寄せ。さらにこの後もponanzaは攻めの手を緩めない。
(上図からの指し手)
▲7八金 △8七香成 ▲同 金 △8六香(途中図)
▲3二と △同 玉 ▲8三歩 △同 飛 ▲8四歩 △同 飛 ▲7五歩 △9八銀 (途中図)
▲7八金 △8七香成 ▲同 金 △8六金 ▲2四桂 △4一玉 ▲9六金 △8七銀成 ▲7九玉 △9六金 (途中図)
▲6八金 △5七歩成 ▲2六香 △6八と ▲同 玉 △4七歩成(下図)
1回目の△8六香から▲7八金△8七香成▲同金△8六香(途中図)と2度目の△8六香が炸裂した。
これによって一気に先手の矢倉陣は弱体化した。
先手は飛車と角の威力を弱めようと必死の防戦を試みるが、△4七歩成(上図)で見事に挟撃形を作り上げた。
上図は先手陣に受けはなく後手玉も詰まないので後手の勝ちである。
このように△8六香という寄せのテクニックは人間には盲点になりやすが、そのスピード、破壊力は凄まじく、この機会に是非ともマスターしておこう。
参考棋譜その1
棋戦:wdoor+floodgate-600-10+UDGP+Apery_twig_i7_6700K+20160116173004
先手:UDGP
後手:Apery_twig_i7_6700K
参考棋譜その2
棋戦:wdoor+floodgate-600-10+nanopery_FX9590_4.7GHz_test+jsus+20160213073003
先手:nanopery_FX9590_4.7GHz_test
後手:jsus
参考棋譜その3
棋戦:wdoor+floodgate-600-10+TAKUYA--HIRAOKA+jsus+20160221210008
先手:TAKUYA--HIRAOKA
後手:jsus
参考書籍