はじめに
「―の戦いの絶対感覚」シリーズは河出書房新社から1999年~2003年の間に発刊され好評を博した。
ラインナップは、発刊順に
佐藤康光の戦いの絶対感覚 (最強将棋塾)
森内俊之の戦いの絶対感覚 (最強将棋塾)
羽生善治の戦いの絶対感覚 (最強将棋塾)
谷川浩司の戦いの絶対感覚 (最強将棋塾)
となっている。
著者は佐藤康、森内、羽生、谷川というトップ棋士4人によって書かれており、その内容はプロの思考が細かく記されている名著として名高い。
しかし、このシリーズは2003年を最後に続編が発刊されていない。
そこで約14年の歳月を経て、私がコンピュータ将棋を題材としてこのシリーズの形式で執筆してみようと思い立った。
私にとってもこれは新たな挑戦である。
第一弾はNineDayFever。それでははじめていきたい。
テーマ1 安全圏への脱出
横歩取りの中盤戦。現局面は先手玉に詰めろがかかっている。
まずはその詰めろを振りほどく手段を考えなければならない。
うまく後手の攻めをいなして反撃に移りたいところだ。
参考棋譜
NineDayFever_XeonE5-2690_16c vs. GPSFish-WCSC24 (2014-05-12 01:30)
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まずは何はともあれ、△3八飛▲5九玉△5八金の詰めろを防がなくてはならない。
しかし、▲3九同玉と取るのは△5八飛▲4八角△2八金▲4九玉△7八飛成(下図)
となり、いっぺんに先手が負けになる。
また▲2二飛と打ち、合駒を使わせようとしても△4二金(下図)
と引き、後手は駒を使ってくれないので依然として先手玉の詰めろは解消されないままだ。
テーマ図では▲5八玉△4九と ▲6八玉(下図)と左辺に逃げ込むのが得策である。
この3手により、先手の働いていなかった左辺の金銀が守り駒として機能し始めたのが感じられると思う。
これで先手玉の詰めろも解消することができた。
上図で△8三金と▲7三角成を防いできたならば、そこで▲2二飛と攻めに転じる。
以下、△4二飛▲7三角成△同金▲2一飛成(下図)
としておけば、玉の安全度は先手のほうが高いので先手優勢となる。
本譜は△2八飛 ▲7九玉 △5五桂 ▲5六銀 △5九と ▲7七銀(下図)と進んだ。
GPSfishの△5五桂、△5九とはともに詰めろだが、NineDayFeverはそれぞれ▲5六銀、▲7七銀と丁寧に受ける。
上図で後手の攻めは息切れしはじめてきたのが明らかになった。
仕方なく、上図で△8三金と受けたが、以下、 ▲2二飛 △4二金 ▲2三歩成 △8四金 ▲3三と(下図)
と進み、NineDayFeverの勝勢となった。
あとは自然に攻めていけば勝ちとなる。
NineDayFever流分析
テーマ図は先手の左辺の金銀が働いていないが、ここに逃げ込めば勝ちが見込める。
攻めを焦らず、相手の攻めが息切れしたのを見計らってから反撃をすればいいのである。この将棋から、攻守の切り替えのタイミングを吸収してほしい。