序章
本大会、戦前予想では圧倒的にponanzaの優勝を予想する声が多かった。
ここ数年での戦績はもちろんの事、ディープラーニングの導入、CPU1092core(Xeon) GPU128基(Maxwell Titan X ) というモンスターマシンスペック。
もはや隙が無いとさえ思われていた。
そこに思わぬ刺客が入った。
それがelmoである。
初日前日に、大会前floodgateに参戦し最高レートを叩き出していたmonkeymagicの正体がelmoだと判明した時にはネット界隈がざわついた。
「これはもしやelmoは本大会のダークホースとなるのではないか…。」
私もそう思った。しかしそれでもponanzaには…。
そうponanzaには圧倒的信頼がある。
ponanzaが負けるイメージが浮かばないほどであった。
しかし、elmoは大会初日から非常に洗練された将棋で他を圧倒し続けた。
思わず私も以下のようなツイートをしていた。
選手権後にelmo公開とか凄い事になりそうだ。
— suimon (@floodgate_fan) 2017年5月3日
そう、elmoはフリーソフトとして公開されることが開発者の瀧澤さんから公言されていたのだ。
このことは多くの将棋ファンが喜んでいた。
そして大会2日目もelmoは快進撃を続ける。
なんと全勝優勝を確実視されていたponanzaにも横歩取りで勝利。
ネット上では歓喜の声が溢れた。
うおーーー
— suimon (@floodgate_fan) 2017年5月4日
elmoの勝ち!#wcsc27 #csalive pic.twitter.com/T9GDO10EAX
そして大会最終日。
決勝リーグでもelmoとponanzaはお互い順調に勝ち進み、ついに決勝ラウンド最終局で優勝を争うことになった。
角換わりへ
第27回世界コンピュータ将棋選手権決勝リーグ最終ラウンド
2017年5月5日
於・川崎市産業振興会館
(対戦開始当初の持ち時間は10分とし、自らの手番となるごとに10秒加算)
▲elmo△ponanza
動く将棋盤は以下のリンクから
第27回世界コンピュータ将棋選手権決勝リーグ「elmo-ponanza」 | Shogi.io(将棋アイオー)
(初手からの指し手)
▲7六歩 △3二金 ▲2六歩 △8四歩 ▲7七角 △3四歩 ▲7八銀 △4二銀 ▲2二角成 △同 金 ▲7七銀 △3三銀 ▲3六歩 △6二銀 ▲3七桂 △6四歩 ▲3八銀(下図)
ponanzaは2手目に△3二金。
ここ最近のponanzaはこの手を指すことも多く、また本大会中も他の対局で指していたので予想された手の一つであった。
elmoは飛車を振らずに将棋は角換わりになった。
上図は後手が△8四歩型であるのと先手が▲4五桂速攻を含みにした駒組みなのが特徴的な局面になった。
新型同型
(上図からの指し手)
△1四歩 ▲4六歩 △3二金 ▲6八玉 △4二玉 ▲2五歩 △6三銀 ▲9六歩 △7四歩 ▲9五歩 △7三桂 ▲4七銀 △6二金 ▲4八金 △1五歩 ▲5六銀 △8一飛 ▲2九飛 △5四銀(下図)
ここ最近の角換わり腰掛け銀はコンピュータ将棋、プロ公式戦、アマチュア大会、どれにおいても▲4八金・△6二金型がスタンダードになったといえよう。
それだけ情報が伝わるのが早いし、なによりこの構えは角打ちの隙が無く、角換わりの将棋に適している。
そして下段に引いた▲2九飛・△8一飛の構えが守備にも効いてくるのである。
この形の同型がお互い打開が難しい将棋になる。
新定跡誕生の機運が高まる中、elmoの次の一手が斬新だった。
バランス重視
(上図からの指し手)
▲7八玉 △6五歩 ▲5八金上 △6四角 ▲4七金直 △4四歩 ▲1八香 △3一玉 ▲1九飛(下図)
elmoの▲7八玉が新構想の一手。
従来は▲7八金と指すことが圧倒的に多く、そこから両者似たような駒の配置となり、打開を模索する将棋となる。
本譜elmoの構えは玉の守りは薄いものの、バランス重視で玄人好みである。
ponanzaはこの将棋のセオリー通りの指し方で△6五歩~△6四角と設置。
この角はこの戦型において左右に効いてくる好形としてよく知られている。
elmoは▲1八香~▲1九飛と1筋からの端攻めをみせる。
そして次の一手からponanzaの猛攻がはじまったのであった。
(その2に続く)
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