はじめに
今、雁木戦法が注目されている。
ここ1~2年の間にコンピュータ将棋間でponanzaを中心に指されはじめ、今年に入ってからはプロの公式戦においても雁木が採用されることが目立ち始めた。
プロ公式戦での実戦例
2017-03-02 第75期順位戦C級2組11回戦 西尾‐脇戦
2017-05-23 第30期竜王戦5組ランキング戦 増田康‐伊藤真戦
増田康宏四段は、現在得意としている戦法は?という問いに対して
「最近だと、雁木です」と答えている。
参考記事
www.fgfan7.com
この雁木戦法だが、最近注目され始めてきたこともあり、その戦術の解説文献はまだまだ少ないのが現状だ。
今回から相居飛車における雁木戦法の戦い方についてponanzaの棋譜を中心に調べていきたいと思う。
スポンサーリンク
雁木戦法の実戦例
↓動く再生盤はこちらから
雁木戦法実戦例その1 | Shogi.io(将棋アイオー)
棋戦:将棋ウォーズ
戦型:雁木
先手:先手
後手:2016Pona
(初手からの指し手)
▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △8四歩 ▲7八金 △3三角 ▲7六歩 △4四歩 ▲4八銀 △3二金 ▲6八銀 △4二銀 ▲5六歩 △4三銀(下図)
早々と角道を止めるのが雁木の第一歩。序盤早々に角道を止めるのは現代将棋では消極的ととらえる向きもあるが雁木はそんなことは気にしない。
そして飛車先歩交換を△3三角として受けてしまうのがponanza流。
これも最近では矢倉左美濃急戦をはじめとして飛車先を切らす指し回しが流行しているが、雁木はそんなことは気にせず△3三角と上がっておくのだ。
(上図からの指し手)
▲7七銀 △5二金 ▲7九角 △6二銀 ▲6九玉 △7四歩 ▲5八金 △7三桂 ▲6六歩 △6四歩 ▲6七金右 △4一玉 ▲2四歩 △同 角 ▲同 角 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲2八飛 △3一玉(下図)
本譜は先手が引き角から2筋で角と歩を交換する指し方。もちろんここでは他の指し方も考えられる。
これには雁木側は角交換に応じておく。
角交換型は自陣に角打ちの隙が無い雁木にとってのぞむところである。
(上図からの指し手)
▲7九玉 △2二玉 ▲8八玉 △6三銀 ▲5七銀 △8一飛 ▲1六歩 △1四歩 ▲3六歩 △8五歩 ▲4六銀 △6五歩 ▲同 歩 △6九角(下図)
後手は△6三銀と上がり「ツノ銀雁木」と呼ばれる形に組み上げた。
この形はponanzaが好んで指しており、角打ちの隙が無くまた攻撃性にも富むのでかなり有力である。
間合いをはかりつつも、戦機が熟したところで△6五歩~△6九角と攻撃を開始した。
(上図からの指し手)
▲4八飛 △6五桂 ▲6六銀 △8六歩 ▲同 歩 △6四銀 ▲7二角 △8六飛 ▲8七歩 △8二飛 ▲6一角成 △7五歩(下図)
角成を受ける▲4八飛に対して△6五桂~△8六歩~△6四銀と着実に攻撃態勢を築く。
先手に馬は作らせたものの、△7五歩と攻めを継続し、後手好調。
(上図からの指し手)
▲6八金引 △7八角成 ▲同 玉 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △7六飛(下図)
本譜は▲6八金引と指したが、当然ながら△7八角成で金を差し違えて以下後手よし。
仮に▲6八金引で▲7五同歩だと以下、△7七歩▲同桂△同桂成▲同金上△6五桂といった要領で攻めていけば後手が勝つ。
本譜は△8六歩~△8六同飛~△7六飛で見事に攻めが決まった。
(上図からの指し手)
▲7七銀 △同桂成 ▲同 金 △6六歩 ▲6八歩 △7七飛成 ▲同 玉 △6九銀 ▲8六玉 △8四歩 ▲9六歩 △7六金 ▲9七玉 △7八銀不成(下図) まで82手で後手の勝ち
大駒2枚を豪快に切り飛ばす攻めで後手が快勝した。
このような思い切った攻めができるのも、自陣の雁木が堅陣だからである。
本局のような展開は新型雁木の理想と言えよう。
雁木戦法のまとめ
実を言うと△6三銀型の新型雁木にとって角交換をしてくれるのはありがたい展開なのだ。
先手の矢倉囲いは△6九角の隙や、△6五桂が銀に当たってくるという欠点があったが、雁木にはそれらの隙が無い。
先手としては序盤で違う指し方を選んだほうが良さそうだ。
△6三銀型の新型雁木のポイント
・序盤で角道を止める
・飛車先は角を上がって受ける
・角交換はのぞむところ。雁木は隙が無い。
・△6九角、△6五桂を軸に攻めを組み立てる。展開によっては大駒も切っていく。
参考棋譜
西尾 明 六段 vs. 脇 謙二 八段 第75期順位戦C級2組11回戦 - 無料の棋譜サービス 将棋DB2
(次回に続く)
参考書籍