はじめに
11月4日、5日に「人間将棋 姫路の陣」が開催された。
そのイベントの中で将棋ソフト「PONANZA」体験コーナーがあり、事前におこなわれることを知ったのでせっかくの機会だと思い、遠征してPONANZAと対戦することにした。
今回の記事では、そのPONANZAとの対局を振り返ってみたいと思う。
実戦譜
動く将棋盤は以下のリンクから
PONANZAとの対局(飛車落ち) | Shogi.io(将棋アイオー)
日時:2017/11/04
棋戦:将棋ソフト「PONANZA」体験コーナー
手合割:飛車落ち
持ち時間:挑戦者が10分30秒 PONANZAが1手1秒
下手:挑戦者 (私)
上手:PONANZA
(初期局面)※飛車落ち
(初手からの指し手)
△3四歩 ▲7六歩 △3三角(下図)
前回の記事と同様、PONANZAは3手目に△3三角と指してきた。
ここでは△4四歩と指す手が一般的であり、すでに定跡形から離れる展開となった。
(上図からの指し手)
▲同角成 △同 桂 ▲8八銀 △3二金(下図)
前回の記事の将棋ではPONANZAが△6五角と筋違い角を放つ展開となったが、本局では△3二金と指してきた。
こちらの指し方のほうが自然ではある。
(上図からの指し手)
▲4八銀 △9四歩 ▲9六歩 △6二玉 ▲6八玉 △7二玉 ▲5八金右 △4四歩
▲2六歩 △2四歩(下図)
上手は下手の▲2六歩に対して△2四歩と対応した。
これは▲2五歩~▲2四歩を防いだ意味合いがあり、参考になる指し方である。
(上図からの指し手)
▲7八玉 △4二銀 ▲4六歩 △4三銀 ▲4七銀 △6二銀 ▲7七桂 △6四歩(下図)
私は序盤の作戦の方針に迷ったが、▲7七桂から銀冠を目指すことにした。
ここでは▲7七銀から矢倉に組む指し方も勿論有力であり、そちらの展開も一局の将棋だったと思う。
(上図からの指し手)
▲8六歩 △7四歩 ▲8七銀 △6三銀 ▲8八玉△7三桂 ▲7八金 △6五歩 (下図)
前図からの方針に沿って下手は銀冠に組み上げた。
対する上手は△6五歩と位を取り駒組みを進めていく。
(上図からの指し手)
▲1六歩 △5四銀左 ▲1五歩 △8四歩 ▲5六銀 △7一金 ▲4七金 △6二金(下図)
PONANZAは△7一金と寄ってから△6二金と上がる不思議な指し方をしてきた。
下手の有効な手が少ないことを見越しての指し方だったのかもしれない。
私は慎重に駒組みを進めていく方針。
飛車落ちなので上手から仕掛ける展開にはしにくいと考えていたが…
(上図からの指し手)
▲3六歩 △4五歩 ▲同 歩 △同 銀▲同 銀 △同 桂(下図)
上手からの仕掛けはないと考えていたが、△4五歩という手が飛んできた。
下手から仕掛けるならば、▲3六歩では▲2五歩という手が成立していた。
以下△同歩なら▲1七桂から2筋の突破を目指し、△同桂なら▲5一角 △4二角 ▲同角成 △同 金 ▲2二角(参考図)
という展開が予想された。
本譜は上手からの仕掛けを封じる駒組みの予定が意表の仕掛けにより、先に攻められる展開となった。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲4六銀 △4四歩 ▲2五歩 △6九角 ▲4八歩 △6六歩(下図)
47手目△4五同桂に対して▲4六銀と手堅く指したつもりだったが、ここでは▲5六金と指したほうが含みがあったようだ。
▲2五歩に対して△6九角と打たれた時の対応がまた悩ましい。
▲4八歩は打ちにくかったが結果的にはいい辛抱だったようだ。
上手は△6六歩とさらに攻めを継続してきた。
(上図からの指し手)
▲同 歩 △8五歩 ▲同 歩 △5八角成 ▲2四歩 △6七銀(下図)
上手は6筋の歩を突き捨てた後、8筋の歩も突き捨ててから△5八角成と馬を作った。
攻める箇所を増やす指し方でこのあたりの指し方は参考になる。
下手は▲2四歩と2筋の突破を目指す。
△6七銀は嫌な筋だが仕方がない。
(上図からの指し手)
▲同 金△同 馬 ▲7八銀打 △6八馬 ▲8六角(下図)
63手目に△6八馬と指した局面で、私は△8五桂を気にして▲8六角と打ったがこれはあまりよくなかった。
ここでは方針に沿って▲2三歩成と指すべきで、以下△8五桂には強く▲3二とと勝負して攻め合い勝ちが見込める形勢だった。
本譜は安全に指そうとしたつもりが角を打ってしまったため、かえって角が標的になってしまった。
(上図からの指し手)
△7九金 ▲8四歩 △7五歩 ▲同 角 △7四銀 ▲8六角 △3一金(下図)
上手は△7五歩~△7四銀と攻めに厚みを加えてきた。
△3一金は不思議な1手だが、ここでは下手は▲2三歩成と指すしかなかったと思う。
以下、△9五歩から攻められるものの正確に受け切れば下手有望であった。
本譜はこの後方針を誤った。
(上図からの指し手)
▲1七桂 △9五歩 ▲同 歩 △6一玉▲2九飛 △7八金 ▲同 銀 △5八馬 ▲6七金 △8五桂(下図)
下手はこのあたりから持ち時間を使い切り、1手30秒の秒読みとなった。
▲1七桂は▲2九飛から金を取ろうという指し方だが、0手で△7八金と差し違えることができるのであまりいい指し方ではなかった。
△8五桂と桂馬も攻めに参加してきて、形勢は依然として下手がいいものの持ち時間もなく、間違えやすい局面になってきた。
(上図からの指し手)
▲2三歩成 △7七桂成 ▲同 角 △8五銀(下図)
下手はようやく▲2三歩成と指したが遅すぎた感は否めない。
そして△7七桂成に対して▲同角と取ったのが敗着となってしまった。
次の△8五銀で上手の攻めが途切れる心配がなくなり、かなり勝ちにくい形勢となっている。
▲同角では▲同金の1手だった。
以下、△8五銀打 ▲6九銀 △3七桂打 ▲5八銀 △2九桂成 ▲4三角 △7一玉 ▲7八玉 △5九飛 ▲6九銀 △8六銀 ▲同 金 △5八角 ▲同 銀 △同飛成 ▲7七玉
(参考図)
で下手が余しているというのがソフトの読み筋だが、人間的に指しこなせる手順とは言い難く、ここでは飛車落ちの手合としてはすでに下手難局になっていると言えそうだ。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲3二と △8六桂 ▲3一と △7八桂成 ▲同 玉△8七銀 ▲同 玉 △6七馬(下図)
▲3二とでは▲7九桂のほうが粘れたようだが、すでに下手に勝ち目はない。
以下はPONANZAの正確な寄せを見るばかりとなった。
(上図からの指し手)
▲7八金 △7六銀 ▲8八玉 △7八馬 ▲同 玉 △6七金 ▲6九玉 △5八金打 ▲7九玉 △7八銀 ▲8八玉 △8七銀上成(下図)
まで105手で上手 PONANZAの勝ち
まとめ
飛車落ちの上手の戦術として3手目に△3三角と上がる指し方はやはり有力であると考えられる。
これから次第に定跡が作られていくだろう。
下手が勝つイメージとしては初期局面からのリードを保ち続けて勝つしかない。
一度でも評価値がソフト側に振れるとほぼ勝ち目はなくなる。
中盤までなんとかリードを保ち、終盤で時間がなくなってもいかにミスなく指し続けることができるかが下手勝利のカギとなると感じた。
本局の形勢の推移
イベントの写真集