この度、県大会で優勝し第31回全国アマチュア将棋竜王戦の全国大会に三重県代表として出場することが決まった。
アマチュア竜王戦は第19回以来、12年ぶり2回目の出場となる。
今回はなぜ私が12年という歳月を経て再び県代表になることができたのかを記事にしていきたい。
初出場は19歳の大学2年生の時。
和歌山県で代表になることができた。
全国大会は1勝2敗で予選落ち。
その時は全国の強豪の強さを目の当たりにした。
また出場したいと思ったが、そこから20代で壁にぶち当たることになる。
県大会の決勝で2年連続敗退し、代表を逃すこともあったし、そもそも県大会にすら参加しなかった年もある。
20代中頃の頃は将棋に対する情熱を失いかけていた時期もあった。
そんな中、2014年10月ごろに転機が訪れた。
ほとんどTwitterは活用していなかったが、アカウント自体は作っていた。
そして、mizumonというアカウント名でコンピュータ将棋の変わった指し手を紹介するアカウントが話題となっていたので実際に確認してみたところ、斬新な指し手が多く感心した。
そこで再び将棋を頑張ってみようと思った。
数ヶ月後にsuimonというアカウントをTwitterで開設し、少しずつコンピュータ将棋についてツイートをしていった。
そうしたら、今まで作ってきたどのTwitterのアカウントよりも周りの反応が良かった。
その時私は「ああ、やはり私には将棋が一番あっているのだな」と感じた。
どうしてもインターネットという世界では自分の得意分野について発信しないと周りの人は関心を持ってくれないものだ。
その後、ほぼ毎日ツイートを続けフォロワーは増えていった。
そして、将棋の大会にも出場を再開した。
ブランクもあり、当然ながらすぐには県代表にはなれなかったが、少しずつ手応えは感じていた。
その後、ブログを開設し休日を利用し記事を更新をしていった。
中には反響があった記事も多く、やりがいを感じていた。
しかし、県代表にはなかなかなれなかった。
大会では常に上位には食い込むものの、もうあと一歩が足りなかった。
そんな中、一通のメールが転機となる。
マイナビ出版の書籍担当の方から「本を出版しませんか」というメールが届いたのだ。
自分を変えるきっかけになるのならと思い、その日の晩に「是非やりたいです」と返信をした。
その後、編集担当の方と実際にお会いし、企画を練っていった。
紙の本になるということは自分の作品を残すということである。
私は10代の頃から音楽を聴くのが好きで、いろいろなアーティストの作品を聴いてきた。
そして、アーティストが雑誌のインタビューでその作品に込めた思いをいろいろ語っているのをみて、「いつか自分の作品を残したい」と思った。
しかし、一般人にはなかなかそのようなチャンスは通常は巡ってこない。
今回のお話しはせっかくいただいた機会なので全力で取り組みたいと思った。
第5回将棋電王トーナメントが終わってから執筆を本格的にスタートした。
棋譜のデータベースを見ながら執筆をしていったので基本は休日を利用して行っていった。
書いていくうちにわかってきたが、どんなに調子のいい日でも最大で10ページを書くことができれば上出来という感じだった。
難しい変化の場合は1ページしか進まなかった時もある。
執筆の大変を身にしみて感じた。
それでも少しずつの歩みながら着実に原稿は進んでいった。
幸いなことに大会がオフシーズンの時期で執筆に没頭するにはちょうどよかった。
年末年始の長期休暇もほぼ原稿執筆にあてた。
もともと、テレビはあまり見ない方だし興味もそれほどなかった。
それくらい原稿執筆は好奇心のわく作業だった。
そうして原稿を書き上げていくうちに、自身の指す将棋にも変化を感じるようになった。
まず序盤で時間をあまり使わなくなった。
実戦であらかじめ想定していた局面に誘導できることが多くなったからだ。
また、ネット将棋でも将棋クエストの2分切れ負けで八段に昇段することができた。
一つの壁を乗り越えることができた気がした。
5月のゴールデンウィークに行われた全国レーティング選手権でも予選は抜けることはできなかったが全国レベルの相手とも納得のいく将棋を指すことができた。
そして、翌週のアマチュア竜王戦三重県大会で優勝を成し遂げた。
その予選のなかでは本で執筆した変化に誘導することができて消費時間7分で勝利した将棋もあった。
そして、今は6月の下旬に迎えた全国大会に向けて調整・研究を続けている。
いい将棋が指せるように頑張りたい。
「私はなぜ再び県代表になることができたのか」
という問いには自信を持って
「この書籍を執筆したからです」
と答えることができる。
執筆、書籍の製作期間はとても充実していた。
かけがえのない経験をさせていただいたマイナビ出版、その他関係者にはとても感謝をしている。
これからも気力が続く限り将棋を頑張っていきたい。
suimon