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本間博六段著「妙手に俗手、駒余りもあり!実戦詰め筋事典」レビュー

はじめに

将棋の終盤では最終盤において「相手玉を詰ませれば勝ち、詰ませられなければ負け」という局面をむかえる時がある。

そういった局面で詰ますために私たちは日頃、詰め将棋を解いているわけだが、実戦では詰め将棋の本で出てくるように、必ず持ち駒を使い切ることや駒余り、そして余詰に関しては考慮する必要性はない。

要は、詰ませれば勝ち、そうでなければ負けなのである。

本間六段著「妙手に俗手、駒余りもあり!実戦詰め筋事典」では従来の詰め将棋本とは違い、駒取りや駒余りでの詰み、そして余詰を許容した詰みの問題集となっている。

今回の記事では本書の利点を紹介し、皆様の終盤力の上達の役に立てればと思っている。

本書の内容

本書はマイナビ将棋文庫シリーズの中の一冊で、判型は文庫判となっており、持ち運んで外で問題を解くにもかさばらないサイズとなっている。

また、ページ数は400pとボリュームが有り、掲載された問題数は186問となっている。

章建てに関しては、

本書の問題について

第1章 一段玉
第2章 二段玉
第3章 美濃・銀冠系
第4章 穴熊系
第5章 矢倉系
第5章 舟囲い系
第7章 二枚金系
第8章 端玉
第9章 三段玉・中段玉

となっており、相手玉のパターン別に詰み手筋が学べる構成となっている。

↓出版社のツイート

実際に解いてみての感想

まず、実際に解いてみて感じたのは、「ああ、これは実戦でも出てきそうな筋だな」という点であった。

俗手で詰みあげることは実戦では非常に重要で基本的な詰み筋はたとえ駒が余ったとしてもそれはマスターしておくことで上達に繋がっていくものである。

また、本書はそのような俗手で詰ます問題だけでなく、上級者にとっても歯ごたえのある問題もあった。

手数に関しても10数手で詰ます問題も多く、級位者には少々骨が折れるだろうが、頑張って問題を解いていけば実戦での終盤力アップは間違いない。

そして高段者にとっても本書は有用である。

その理由として、本書を時間をかけずに素速く解いていく訓練は、高段者の基礎トレーニングとして有用だと感じたからだ。

特に、「いまちょっと調子を落としているな」と感じている人にとっては、本書の問題を時間を意識して解いていくことで復調していけると思う。

↓出版社のツイート

 

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私の実戦より

手数=105 ▲8四歩 まで
後手:後手
後手の持駒:角 金 桂 歩三 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v桂 ・ ・ ・ ・ ・v香|一
|v玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・ と 全 ・ ・v桂v歩v歩|三
|v歩 歩 金 ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 歩 歩 歩|七
| ・v龍 ・ ・ 金 銀 ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・v角 銀 玉 銀v金 香|九
+---------------------------+
先手:先手
先手の持駒:歩 
手数=105  ▲8四歩  まで
後手番

終盤戦の上図。

先手が▲8四歩とした局面で、後手玉に受けはなく、先手玉を詰ますしかない局面である。

ここから、①△5八角成 ▲同 銀 △5七桂 ▲3八玉 △3九金 ▲同 銀 △4九角 ▲2九玉 △3八金 ▲同 銀 △同角成 ▲同 玉 △5八龍 ▲4八金 △2八金 ▲同 玉 △4八龍 ▲3八金 △3九銀 ▲2九玉 △3八龍 ▲同 玉 △2八金

という詰み筋がひとつ。

また、②△5八角成 ▲同 銀 △5七桂 ▲3八玉 △3九金 ▲同 玉 △4九金 ▲2八玉 △3八金 ▲同 玉 △4八金 ▲同 玉△4九桂成 ▲同 玉 △4七飛成 ▲3九玉 △3八銀 ▲2八玉 △3九角 ▲1八玉 △2九銀打

という詰み筋もある。

実戦は、△5八角成 ▲同 銀 △5七桂▲3八玉 △3九金 ▲同 玉△4九金 ▲2九玉 △3八金 ▲同 玉 △4八金 ▲同 玉△5九銀 ▲同 玉(下図)と進んだ。

手数=119 ▲5九同玉 まで
後手:後手
後手の持駒:角 銀 歩三 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v桂 ・ ・ ・ ・ ・v香|一
|v玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・ と 全 ・ ・v桂v歩v歩|三
|v歩 歩 金 ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・ ・ ・|五
| 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| ・ ・ ・ 歩v桂 歩 歩 歩 歩|七
| ・v龍 ・ ・ 銀 ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ 玉 ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:先手
先手の持駒:角 金三 銀 歩 
手数=119  ▲5九同玉  まで

後手番

最短手数での詰み筋は逃しているものの、まだ上図は詰みがある局面だった。

上図以下、△4九桂成▲同 玉 △4七飛成 ▲同 銀 △3八角 ▲3九玉 △2八銀 ▲同 玉 △4七角成 ▲3九玉 △4八龍(下図)と進んで詰みとなる。

手数=130 △4八龍 まで
後手:後手
後手の持駒:銀 歩四 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v桂 ・ ・ ・ ・ ・v香|一
|v玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・ と 全 ・ ・v桂v歩v歩|三
|v歩 歩 金 ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| ・ ・ ・ 歩 ・v馬 歩 歩 歩|七
| ・ ・ ・ ・ ・v龍 ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ 玉 ・ 香|九
+---------------------------+
先手:先手
先手の持駒:飛 角 金三 銀二 桂 歩 
手数=130  △4八龍  まで

銀と歩の駒余りながら、きれいな収束の手順である。

実戦では惜しくも後手の方がこの詰み筋を逃してしまい、私の勝利となったが、相手の方はとても若く、前途有望な少女である。

このように実戦では、駒余りの詰みもあるし、複数の詰み筋がある展開も多い。

本間六段の本で勉強することの有用性を示す一例として本局を紹介した。

まとめ

本間博六段著「妙手に俗手、駒余りもあり!実戦詰め筋事典」は、終盤力アップ、実戦特有の詰み筋のトレーニングに最適の一冊である。

級位者の方は、時間がかかってもいいので実戦特有の詰み形を覚えること

有段者の方はできる限り素速く問題を解くことを意識することでネット将棋や大会での応用力をつけること

を心掛けるとよいと思う。

本書のような趣旨の本は類書もあまりなく、本間六段の傑作だと思う。