前回の続き
http://fgfan7.hatenablog.com/entry/2016/10/28/121845
③では
「ソフト時代」3つの課題に将棋界はどう立ち向かうのか
の記事について見ていきたいと思う。
執筆者は「不屈の棋士」の著者、大川慎太郎氏。
はじめに議題として3つのものが上がっている。
①対局規定と棋士のモラル。ソフトの「カンニング」防止について。
②ソフト評価値の活用法。
③プロ棋士の存在価値。
まず、①対局規定と棋士のモラル。ソフトの「カンニング」防止について。
ソフトの「カンニング問題」はすでにチェスの世界では実際に起きている。
CNN.co.jp : グルジアのチェス名人、スマホでカンニング
将棋界でも同じような問題が起こり得る可能性があるため、8月8日付で、全棋士宛に対局中の電子機器の扱いなどに関するルールが記された手紙が発送された。
将棋のアプリではAndroid用のShogiDroidがすでにフリーソフトの上位ソフトである、
技巧、浮かむ瀬、真やねうら王を動かせるようになっている。これらのソフトはPCで動かすよりも読みの深さは劣るものの、その強さは脅威的なものである。
また、リモートデスクトップと言われる手法でパソコンを遠隔操作すれば、その強さはShogiDroidを動かすよりもさらに上がる。
勿論、悪用は言語道断であり、これらのアプリは有効活用すれば将棋研究ツールとしては最高のものである。今の時代はスマホがあれば環境さえ整えることによりどんな場所でも手軽に検討できるようになったのだ。
次に、②ソフト評価値の活用法について。
形勢の良しあしを数値で表すことのできるソフトの評価値。
その歴史は東大将棋のようなソフトにも搭載されていたもので古くから存在していたが、導入された当初はその値はそこまで信頼のおけるものではなかったと思う。
少なくともプロレベルでは参考にすると悪影響が出かねないものだった。
しかし、近年ではソフトの急成長により評価値の出し方が正確に近づきつつある。
またフリーソフトは上位のものでもたくさん公開されているので、もしあるソフトが出した評価値に疑問を持ったとして複数のソフトで確認してみるということもできる。
特定の戦型や先手番で評価値が高くなりやすいといったソフトもあるが、こういう場合も他の上位ソフトで確認すれば判断ミスを予防できる。また詰め探索に特化したエンジンもフリーで公開されている。なんと恵まれた環境であろうか。
ソフト開発者の方には公開して下さることに関して改めて感謝したい。
最後に、③プロ棋士の存在価値について。
今まで見てきたようにソフトは急速に強くなり、またツールも充実してきた。
しかし、それでもソフトにはできないことはたくさんある。
戦法の解説もそうだし、どのような戦法が流行して廃れていったのかを説明できるのは人間、しかも棋力の高いプロ棋士だ。
例えば、対矢倉の左美濃急戦はソフト間でも流行している(いた)が、人間が指しこなせるかという観点からするとまだ別の話。結局、人間が指しこなせないなら人間間では流行らないのだ。最近のfloodgateではまるで訳のわからない序盤戦の将棋が以前に比べて格段に増えた。これらをかみ砕いてアマチュアでもわかりやすく解説するのもプロ棋士ならできると信じている。
ソフトが踏み込める順でも人間が真似できない手順もある。
私はたとえ最善でなくても、リスクの少ない指し手を選んで安全勝ちを目指すのも立派な戦略だと思っている。
また、「あ、最近〇〇棋士の棋風が変わったぞ」といった変化を棋譜から推測するのも楽しい。最近ではプロ棋士がTwitterなどのSNSをやっていることも多いので、質問をする機会も以前と比べて増えた。
プロ将棋の魅せ方もより多様になってきたのを感じている。
私はこれからも人間の将棋、コンピュータの将棋両方とも変化を追いつつ将棋を楽しんでいきたいと思う。(終)