はじめに
ノーマル三間飛車はアマチュア間では愛好家の多い戦法だが、プロ間では居飛車側に居飛車穴熊を目指されると、やや分が悪いという定説があり対居飛車穴熊の対策が課題となり続けていた。
その中、玉頭銀と端桂からの強力な攻め筋を見せる「トマホーク」という戦法が水面下で研究されており、アマチュアのタップダイス氏をはじめとしたアマチュア間や振り飛車党のプロ間で指されてきた。
最近ではプロ公式戦やコンピュータ同士の対局でトマホークを見ることも増え、徐々に市民権を得てきているように感じている。
今回の記事ではその「トマホーク」の破壊力のある攻め筋を見ていきたいと思う。
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トマホークの実戦例
動く将棋盤は以下のリンクから
棋戦:wdoor+floodgate-900-0+Titanda_L+ponanza-990XEE+20140425173013
先手:Titanda_L 後手:ponanza-990XEE
序盤戦
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲4八銀 △3二飛 ▲2五歩 △3三角 ▲6八玉 △4二銀 (途中図)
▲7八玉 △6二玉▲7七角 △4三銀 ▲8八玉 △5四銀 ▲9八香 △6五銀(下図)
トマホークは先手が5筋の歩を突かずに一直線に居飛車穴熊を目指してきたときに有効な作戦である。
先手が5筋を突いた場合は、△3五歩を突く指し方や△2二飛から向かい飛車にして2筋から攻めていく指し方、そして三間飛車藤井システムのような戦略が有力となる。
本手順は銀が6五まで出ていき、次の△7六銀を狙っている。
(上図からの指し手)
▲2六飛 △9四歩 ▲9九玉 △9五歩 ▲8八銀 △9三桂▲8六歩 △8四歩 ▲7八金 △8五歩(下図)
先手は△7六銀を防いで、▲2六飛と飛車を浮く。
後手は次の攻め筋を作るために△9四歩~△9五歩と端歩を突き越し、△9三桂と端桂で先手玉を狙いにいく。
△9三桂に対して▲9五角と出る手も考えられるが、以下△8五桂▲8六角△4五歩▲7八金△4四角(参考図)
と進んで後手からいつでも△9七桂成の殺到があるため、後手不満のない進行となる。
本譜は▲8六歩と突いて△8五桂を阻止したが、それでも後手は△8四歩~△8五歩として桂馬を使いにいった。
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中盤戦
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲7五歩 △5一玉 ▲5五角 △8二銀(下図)
△8五歩に対して▲同歩と取るのはやはり△同桂▲8六角△4五歩(参考図)
と進んで△9七桂成が残って後手が指しやすい形勢。
本譜は△8五歩に対して先手は▲7五歩として飛車の横利きを通した。
ここで▲7五歩に代えて▲5九金とした類次局があり、以下△5一玉▲4六飛△8二飛(参考図)
と進んだ。
この展開は8筋から殺到できそうなので後手有利である。
※以下リンクから棋譜参照
▲7五歩△5一玉に本譜は▲5五角と揺さぶり、後手も△8二銀と受けに回った。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲5九金 △7二飛 ▲3六歩 △5四銀▲3七角 △4五歩(下図)
先手は▲5九金と指し金銀の連結をよくする。
対する後手は△7二飛と回った。これは8二の銀を自由に使おうとする準備の一手である。
▲3六歩で角の逃げ場所を作ったが、後手も△5四銀~△4五歩で角筋を通すことができた。
(上図からの指し手)
▲3五歩 △同 歩 ▲8五歩 △同 桂 ▲8六飛 △8四歩(下図)
先手は▲3五歩と飛車の横利きを通してから▲8五歩~▲8六飛と飛車を転戦させたが、後手に冷静に△8四歩と受けられてみるとかえって自陣に傷を作ってしまった。
▲3五歩では▲6八金右(参考図)
と上がっておき、そこで△8六歩なら▲3五歩、△8三銀には▲7七金右のような手で一局の将棋だった。
本譜は後手の作戦が成功した格好となった。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲6九金 △9七桂成 ▲同 香 △9六歩▲同 香 △9五歩(下図)
先手は▲6九金と囲いを強化したが、「ここらで攻め時」と後手は△9七桂成を決行した。
このトマホークという作戦を指しこなすうえで大切なことは「相手に金銀で固めさせるのを怖れない」という点である。
相手を固めさせることによって逃げ道をなくす、駒の配置に偏りを持たせると考えることがトマホークを指すうえでのポイントである。
(上図からの指し手)
▲3四歩 △4四角 ▲5六桂 △2二角 ▲9四歩 △9六歩 ▲1五角 △4二金(下図)
▲1五角の王手には△4二金と受けておいて大丈夫である。
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終盤戦
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲3三歩成 △同 金▲6六歩 △9七香 ▲同 桂 △9四香 ▲9八香 △1四歩 ▲3七角 △8三銀(下図)
▲3三歩成にはと金の取り方が3通りありどう応じても後手が優勢だが、ここは△同金と取るのがわかりやすい。
以下の進行は先手が歩切れなこともあり、先手がかなりつらい展開。
後手のゴールはもうすぐだ。
(上図からの指し手)
▲7四歩 △同 歩 ▲9一角成 △7五歩▲3七銀 △7六歩 ▲8五桂 △同 歩 ▲同 飛 △9七歩成 ▲同 香 △同香不成 ▲同 銀 △8四香(下図)
先手は馬を作ったがその代償に後手に△7五歩~△7六歩と7筋の急所に歩を伸ばされてしまった。しかし、すでに形勢には差が開いており、代わりの指し方も難しいところだった。
本譜は△8四香までで次に△7七歩成の狙いもあり後手勝勢となった。
(以下後手のponanzaの勝ち)
以下の進行は↓より
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ノーマル三間飛車「トマホーク」のまとめ
ノーマル三間飛車から派生した「トマホーク」は5筋保留型の居飛車穴熊に対してかなり有力な作戦である。
その独特な指し口に慣れるまでは実戦経験が必要だが、コツをつかめばきっと勝率が上がることは間違いない。
指しこなすポイントとしては
・居玉をいとわない
・端桂をさばく
・飛車を8筋や7筋に持っていき、相手の玉頭を狙う
・△4五歩で角筋を通し△9七桂成からの殺到を狙う
などである。
参考棋譜
その1
その2
参考書籍
アマチュアのタップダイス氏、信玄氏によるトマホークの専門書。
仕掛け周辺がかなり細かく検討されています。
先日、見事プロ四段に昇段した、山本博志四段とその師匠である小倉久史七段による共著です。先手番でのトマホークの指し方が解説されています。