はじめに
棒銀は将棋のルールを覚えてまもない将棋ファンが一番はじめに指してみる戦法としても最も人気が高い戦法である。
しかし、狙いはシンプルでありながら攻めが決まれば自分より実力が上の相手にも一発が入る可能性のある、魅力的な戦法だ。
以前にもこのブログでは角換わり棒銀について記事にしたことがあるが、
今回はまた違った角換わり棒銀の戦いをfloogateの棋譜を題材として検討していきたい。
角換わり棒銀の実戦例
動く将棋盤は以下のリンクから
棋戦:wdoor+floodgate-300-10F+Ravenos+Sora_Ginko+20181005123002
先手:Ravenos
後手:Sora_Ginko
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲7七角 △6二銀 ▲2六歩 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀(途中図)
▲2五歩 △3三銀▲3八銀 △3二金 ▲7八金 △8五歩 ▲2七銀 △7四歩 ▲2六銀
(下図)
3八の銀を2七→2六と使うのが棒銀戦法の骨子となる。
▲2七銀では▲4六歩から腰掛け銀にする指し方や、▲3六歩から早繰り銀を目指す指し方も有力となる。
参考記事
(上図からの指し手)
△7三銀 ▲6八玉 △6四銀 ▲1五銀 △4二角(下図)
△7三銀に対して先手はいったん▲6八玉と居玉を解消したが、ここでは単に▲1五銀と出る手も考えられる。
以下、△5四角▲3八角△2二銀(参考図)と進むのが一例。
本譜は▲6八玉△6四銀と進んでから▲1五銀と出たが、そこで後手の△4二角が狙いの受け方だった。
後手だけ一方的に角を手放すのではもったいないように見えるが、1五の銀が立ち往生しているのと次に△5四歩~△7五歩の攻めを狙っている。
この△4二角という受け方は古くからある指し方だったようだ。
参考ツイート(他サイトリンクあり)
https://t.co/Yg7uGeKRXqhttps://t.co/d4qKVXy7M1https://t.co/HWnjqO1Sof
— 電子れいず (@de_re_shogi) October 5, 2018
棒銀に対する42角打ちは木村名人創案のようです
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲1六歩 △5四歩 ▲7九玉 △5二玉 ▲5八金 △7五歩(下図)
△4二角の効果で先手もすぐには攻め切ることができない。
そこで▲1六歩、▲7九玉、▲5八金と自陣を整備する。
後手も△5四歩と角筋を通してから△5二玉とバランスを保ち、そして△7五歩と仕掛けていった。
(上図からの指し手)
▲6六歩 △7二金 ▲6八金右 △9四歩 ▲3六歩 △1四歩▲2六銀 △4四銀(下図)
先後互いにすぐには手を出さずに陣形整備に努める。
後手からの△1四歩~△4四銀は中央に戦力を集めた味のいい指し回しで、先手は2六の銀の働きがやや悪い。
まずは後手作戦勝ちの形勢となった。
(上図からの指し手)
▲3五歩 △5五銀左 ▲2四歩 △同 歩 ▲5六歩 △同 銀 ▲3四歩 △7六歩 ▲同 銀 △8六歩▲同 歩 △8八歩(下図)
先手の▲3五歩に対して△同歩と取ると以下▲3八飛△5三角▲4六歩(参考図)と進んで先手にも楽しみがでてくる。
よって▲3五歩には相手にせずに△5五銀左と中央に銀を活用する。
その後、△8六歩~△8八歩は急所の攻め筋。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲同 玉 △8六飛 ▲8七銀 △8四飛 ▲8六歩 △7五銀 ▲7六歩 △8六銀 ▲同 銀 △同 角 ▲8七歩 △5三角(下図)
後手の△8四飛の局面で先手は▲8六歩と打ったが、ここでは▲8五歩と飛車に叩いて受けるのも有力だった。
▲8五歩以下、△同飛▲8六歩△7五飛▲5七歩△4七銀不成▲4四歩(参考図)と進むと難解な形勢。
本譜は▲8六歩としたが、後手は手順に右銀を先手の守りの銀と交換することに成功した。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲2二歩 △同 金 ▲3七銀 △3二金 ▲2四飛 △2三歩 ▲2八飛 △8六歩 ▲同 歩 △3八歩 ▲1七角 △同角成 ▲同 桂 △6四角(下図)
▲2二歩~▲3七銀は好手順で後手としてもいったんは△3二金と戻らざるを得なかった。
△8六歩▲同歩の局面で後手は△3八歩としたが、ここは△8七歩▲同金△6七銀打(参考図)とするのも有力で、これも先手としては実戦的には嫌な変化だろう。
本譜は▲8六同歩の局面で△3八歩。
これには▲同飛もあったが、先手は▲1七角と打った。△同角成に対して▲同桂と取ったが、ここは▲同香のほうがまさった。
以下、△3七歩成には▲5三歩(参考図)が痛打となる。
本譜は▲1七同桂と取ったが、△6四角が好位置の角となった。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲2六角 △8六角 ▲8七歩 △6八角成 ▲同 金 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛▲8七歩 △7六飛(下図)
△6四角の銀取りに対して先手は▲2六角と受けたが、△8六角~△6八角成の角金交換で後手好調。
その後も後手は攻めの手を緩めない。
(上図からの指し手)
▲7七銀 △7四飛 ▲7六歩 △6七銀打 ▲3八飛 △8六歩 ▲同 歩 △2七金(下図)
先手は▲7七銀~▲7六歩で局面を収めようとするが、やはり△6七銀打が露骨ながら受けにくい攻め筋。
△6七銀打に対して▲同金は△同銀不成(参考図)でこれは△7六銀不成の筋もあり先手が相当受けにくい。
本譜は△6七銀打に対して▲3八飛と飛車を横利きを通したが、△8六歩と一本利かせてから△2七金が厳しかった。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲6七金 △同銀不成▲5三銀 △6一玉 ▲4五角 △2六金 ▲6七角 △2七金(下図)
先手の▲4五角は次に▲2七角と金を取れれば▲6二金からの即詰みを見て面白いが、▲4五角のタイミングで△2六金と角を取ってしまうのがわかりやすい。
先手は仕方なく▲6七角としたが、△2七金がまた幸便な駒の活用となった。
(上図からの指し手)
▲3九飛 △3五角 ▲8五銀 △7三飛 ▲4六銀 △5三角▲8四銀 △7四飛 ▲7五銀 △同 角 ▲同 歩 △8四飛(下図)
先手の▲3九飛に対して△3五角と打ったのが好手で、先手は5三の銀を助けることができない。
その後、▲8四銀~▲7五銀で先手は千日手模様で粘ろうとするが、形勢のよい後手は千日手にはせずに△7五同角~△8四飛とした。
(上図からの指し手)
▲5三歩 △3八銀 ▲5九飛 △4七銀成 ▲8五歩 △8二飛▲3三歩成 △同 桂 ▲3四歩 △8六歩(途中図)
▲3三歩成 △8五飛 ▲5二歩成 △同 玉 ▲6四桂 △6二玉 ▲5一角 △6一玉▲7二桂成 △同 玉 ▲8六銀 △同 飛 ▲8七歩 △6六飛(下図)
途中図以降の手順で▲6四桂はハっとする手だが(△同歩は▲8五角で一気に逆転する)、△6二玉が最善で後手勝勢である。
また、▲5一角も油断のならない一手で仮に△同玉と取ってしまうと▲5四飛でトン死してしまうので注意が必要だ。
▲5一角に対して△6一玉が勝因となった一手で後手が正確に先手の攻めを受け切ることに成功した。
この将棋の総棋譜は以下から
角換わり棒銀対策△4二角のまとめ
・先手が角換わり棒銀から▲1五銀と出て次に▲2四歩からの攻めを狙ってきたタイミングで△4二角と受けるのが昔からひそかにあった有力手。
・後手は先手の棒銀を空に切らせる展開に持ち込みたい。
△4四銀~△5五銀左と中央に銀を活用する。
・終盤、先手の攻めはトン死筋もあり油断がならない。
正確に読み切ることを心掛ける。
角換わり棒銀対策△4二角の参考棋譜
棋戦:wdoor+floodgate-600-10+TLC+nanoTwig_FX9590_4.7GHz+20160202230003
先手:TLC
後手:nanoTwig_FX9590_4.7GHz