はじめに
現代における相居飛車の将棋では角換わりが矢倉を凌いで最も出現率の高い戦型となっている。
大きな戦型分類として角換わりから派生して角換わり腰掛け銀、角換わり早繰り銀、角換わり棒銀の3大作戦に分かれる。
この中では角換わり腰掛け銀が一番人気となっているが、早繰り銀や棒銀にも根強い人気があり、アマチュア間では愛用者も多い。
今回の記事ではfloodgateの棋譜を題材として角換わり早繰り銀の最新形の将棋を検討していきたい。
角換わり早繰り銀の実戦例
動く将棋盤は以下のリンクから
棋戦:wdoor+floodgate-300-10F+Hinatsuru_Ai+utatane+20181229103001
先手:Hinatsuru_Ai
後手:utatane
(初手からの指し手)
▲7六歩 △8四歩 ▲2六歩 △3二金 ▲2五歩 △8五歩 ▲7七角 △3四歩 ▲6八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀▲3八銀 △3三銀 ▲3六歩 △6二銀 ▲3七銀 (下図)
角換わり早繰り銀は右銀を3七に持っていくのがまず第一歩。
腰掛け銀の場合は4七、棒銀の場合は2七に銀を持っていくことになる。
(上図からの指し手)
△7四歩 ▲7八金 △7三銀 ▲4六銀 △6四銀(下図)
本局の後手は△7四歩~△7三銀、そして△6四銀として早繰り銀に。
対する先手も▲4六銀として早繰り銀にした。
これはいわゆる「相早繰り銀」といわれる形で現在注目されている指し方である。
(上図からの指し手)
▲6九玉 △9四歩▲9六歩 △4二玉(下図)
△6四銀の局面で先手は▲3五歩と先攻したくなるがそれは後手の狙いにはまる。
▲3五歩以下、△同歩▲同銀△3四歩▲2四歩△同歩▲同銀△同銀▲同飛△1五角(参考図)と進むと王手飛車取りが掛かって後手勝勢となる。
よって先手はこの王手飛車の筋を防ぐために、本譜の▲6九玉や▲6八玉、▲5八玉といった玉を動かす一手か、▲1六歩と指して△1五角の筋を防いでおく必要がある。
本譜は先手が▲6九玉型、後手が△4二玉型に構えた。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲3五歩 △同 歩 ▲同 銀 △8六歩 ▲同 歩 △8五歩(下図)
先手は6九に玉を寄っているので▲3五歩△同歩▲同銀と仕掛けていく。
▲同銀の局面で△3四歩と打つのはやや弱気で以下、▲2四歩△同歩▲同銀△同銀▲同飛△2三歩▲2八飛(参考図)と進めて先手やや良し。
よって▲3五同銀の局面では△8六歩▲同歩△8五歩の継ぎ歩攻めが後手の狙い筋である。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲6六角 △7三角 ▲3四歩 △2二銀(下図)
後手の△8六歩~△8五歩は早繰り銀に対する常とう手段で▲同歩には△同飛が3五の銀取りと△8九飛成を見た厳しい攻めとなる。
先手は△8五歩に対して▲6六角と打った。
▲6六角では▲2四歩と銀を交換しにいく指し方も考えられる。
以下、△同歩▲同銀△同銀▲同飛△2三歩▲2八飛 △3六角(参考図)と進んで難解な形勢となる。
このような展開も考えられたが、本譜は▲6六角。
▲6六角に対しては△8六歩も考えられる。
以下、▲8三歩△同飛▲8四歩△8二飛に▲8六銀と手を戻してこれも互角の形勢となる。
本譜は▲6六角に対して△7三角と打った。
これは次に△6五銀と出るのが角取りと飛車を狙った厳しい狙いとなる。
本譜は▲3四歩△2二銀と進み、そこで先手がどう指すか。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲同角成 △同 金 ▲2四歩 △6五銀 ▲2六飛 △4一角 ▲2三歩成 △同 角 ▲4六銀打(下図)
先手は次に△6五銀と出られてしまってはしびれてしまうので、▲2二同角成と角を切って勝負する。
以下▲2四歩と指したが、そこで△6五銀が幸便な駒の活用。
先手は飛車を取らせるわけにはいかないので▲2六飛は仕方がない。
後手の△4一角が粘り強い指し回しだが、先手の▲4六銀打も容易に土俵を割らないしぶとい一手だ。
(上図からの指し手)
△8六歩 ▲8八歩 △5一玉▲5八玉 △6二玉(下図)
△8六歩▲8八歩の交換は後手がポイントを上げた手順。
そこで指し手が難しい局面だが、△5一玉~△6二玉と玉を戦場から避難させた。
対する先手も▲5八玉と玉を中央に配置させてバランスをとった。
(上図からの指し手)
▲1六歩 △8四飛 ▲3七桂 △7二玉 ▲3八金 △6二金(下図)
互いに手が出しにくい展開となっている。
先手は金を左右に配置させてバランス重視の構え。
対する後手は7二まで玉を移動させて玉形を安定させた。
(上図からの指し手)
▲4五銀 △6四角 ▲6六歩 △5四銀▲5六銀 △7三角 ▲6五歩 △2五歩 ▲3六飛 △3三歩(下図)
手を作るのが難しい局面が続く。
△5四銀に対して▲同銀と取るのは味消しで以下△同歩の局面は先手から攻めの手段が難しい。よって▲5六銀と引いておく。
膠着状態が続いたが後手の△3三歩は期待の反撃筋だ。
(上図からの指し手)
▲7五歩 △同 歩 ▲6六銀 △3四歩 ▲2四銀 △1二角▲7五銀 △8五飛(途中図)
▲7四銀 △7五飛 ▲7三銀不成△同 桂 ▲7七歩 △7四飛 ▲6七銀 △5五銀
(下図)
先手は▲7四銀の飛車角両取りで上手くいったかのように見えたが、そこで△7五飛が7八の金取りをみた鋭い切り返しとなった。
△5五銀まで進んだ上図の局面はまだまだ難しい局面だが、機を見て△3五歩と突く一手が1二の角の利きを通す味の良い一手となりそうで後手としては不満のない展開となった。
(以下進んだ図。やはり△3五歩が決め手となった)
この将棋の総棋譜は以下から
角換わり早繰り銀のまとめ
・早繰り銀の形から▲3五歩△同歩▲同銀と攻める際にはその後△1五角の王手飛車のラインに注意する。
・▲3五同銀のタイミングで後手が△8六歩▲同歩△8五歩と継ぎ歩攻めをするのが急所。以下十字飛車の筋を含みにして戦う。
・中盤の戦いの最中に流れが穏やかになったら玉を安全地帯まで避難させる筋を参考にしたい。