はじめに
現代角換わり腰掛け銀の新型同型(▲4八金・△6二金)は数多くの実戦が指され、現在進行形で体系化が進んでいる。
多くのテーマ局面があるが、現在最重要局面と言えるのが下図の局面だろう。
上図の▲4五桂に代えて▲8八玉と入城すると後手から△6五歩と仕掛ける実戦が多く、その変化も難解で結論は出ていない。
今回の記事ではfloodgateで指された将棋を中心としてまとめる形で▲4五桂以降の展開を見ていきたい。
△5二玉~△4二玉の待機策に対する▲7九玉型での▲4五桂
(局面図再掲)
2019年にfloodgateで上図が指された将棋は50局ある。
そのうち、46局が△2二銀、4局が△4四銀と上がっている。
▲4五桂に対して△4四銀
▲4五桂に対しては△2二銀の実戦例が多いが、△4四銀も自然な一手で考えれる一手。(下図)
△4四銀に対して▲8八玉とした実戦例もあるが△6五歩以下後手の勝ち。
参考棋譜
よって先手は▲2四歩から飛車先の歩を交換する。
▲2四歩△同歩▲同飛まで進んで、そこで①△2三歩と②△1三角があり、
①△2三歩は▲2九飛△6三銀▲2五角△2二金▲3四角△3二玉▲3五歩△同 銀▲3三歩△同 桂▲同桂成△同 玉▲4五銀(下図)と進んだ実戦例があり、これは先手ペース。
参考棋譜
手順中の▲2五角は角換わりの将棋で応用の効く打開手段だ。
②△1三角のほうが私も経験が多いが以下、▲2九飛△4六角▲4七金△2八歩▲4九飛△2四角▲2五歩△1三角▲1五歩(下図)と進んで先手の攻めは続く形。
参考棋譜
ただ、上図から△4五銀直▲同銀△同銀▲6三銀△5一玉▲1四歩△2二角と進んだ時に▲4二歩(参考図)
のような好手を知っているかどうかが重要となり、このあたりは実戦を迎えるにあたっていかに事前に研究しておけるかが大事になると思う。
※▲4二歩以下、△同金には▲7二角△同金▲同銀不成△8四飛▲8三金から飛車を取った時に▲4二歩△同金の効果で後手玉は飛車打ちからの寄せが厳しくなっている。
以上のような変化で、テーマ図の▲4五桂に対する△4四銀は少数派となっている。
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▲4五桂に対して△2二銀
次に▲4五桂に対して△2二銀の変化を見ていく。(下図)
次に△4四歩から4五の桂を取り切れば後手が有利となる。
先手は①▲3五歩と②▲7五歩の実戦例があるが、①は少数派。
参考棋譜
後手が序盤で△7二金~△6二金と一手パスする将棋で似たような局面があるが、(先手玉が7九→8八)その展開と比較すると、先手玉が7九にいることの方がデメリットが多いようだ。
よって、先手は②▲7五歩を選択することが圧倒的に多い。
▲7五歩以下、△同 歩 ▲5三桂成 △同 玉 ▲7四歩(下図)と進む。
この手順は変化の余地が少ない。桂を先に捨てるが、その後▲7四歩で桂を取り返せる。
▲7四歩の局面ではfloodgateの実戦でも△4四歩一択となっているが、△3三桂(参考図)という手も考えられる。
ただ、①▲7三歩成△同金▲2四歩△同歩▲同飛や②▲6九飛といった手で先手としても手が続く。どこかで桂を取った後に▲4五桂のような手もあり、後手としては選びにくい一手かもしれない。
よって、▲7四歩には△4四歩(下図)と指す。
ここでは①▲4五歩と指す将棋もあるが、floodgateでは②▲7三歩成の実戦例が多い。
①▲4五歩以下は△5五歩▲7三歩成△同 金▲4六桂△5六歩▲5四桂△同 玉▲5六歩△6三玉▲4四歩△6二桂(下図)と進んでどうか。
先手としては桂損なので忙しい局面ではある。
後手はどこかで△1三角が期待の反撃策だ。
参考棋譜
(局面図再掲)
②▲7三歩成は△同 金(下図)で次がまた分岐点となる。
①▲4五歩は△5五歩で以下▲4六桂で、▲7三歩成△同金を入れずに▲4五歩と突いた将棋に合流する。
②▲2四歩はfloodgateの実戦例では2局と少ないが考えられる一手で、以下 △同歩▲同飛に1、△2三銀▲2九飛△2四歩や2、△5五歩、3、△7四桂などが考えられる。
参考棋譜
③▲6五歩(下図)が本命といえる一手。
ここで△5五歩はやはり▲6六桂で以下、△5六歩 ▲5四桂 △同 玉 ▲7四銀
△7二金 ▲6四歩 △同 玉 ▲7三歩(参考図)といった進行が一例で先手優勢。
こうなるとどこかで▲6九飛のような手もあり後手陣は持たない。
(局面図再掲)
よって後手は△同歩(下図)と取る。
この局面は相当重要なところで、先手としては①▲6九飛と②▲4五歩の2通りが有力手だ。
なおfloodgateでは上図の局面が31局指されており、
────────────────────────────
1.▲4五歩 18 ( 58%) 0.500 9勝 9敗
2.▲6九飛 13 ( 41%) 0.364 4勝 7敗
────────────────────────────
計 31 0.448 13勝 16敗
となっている。
①▲6九飛は6筋に援軍を送る一手。
次に▲6五銀△同銀▲同飛△6四銀▲6九飛のような展開になれば先手としてもかなり攻めやすくなる。
よって後手は▲6九飛には△7四角(下図)と受ける。
ここで▲3八角と6五の地点に足し算をするのは△6四金で後手が手厚い。
先手が手段に窮したようだが、そこで▲4五歩とする。
▲4五歩に△同歩は▲2八角(参考図)
が好手で以下、①△6四金には▲同角△同玉▲6五銀△同銀▲5六桂のような攻め筋で先手が攻めきれる。
②△7二金も▲5五銀で先手の攻めがつながる形だ。
よって後手は▲4五歩には△5五歩として、以下はおなじみの▲4六桂から△5六歩
▲5四桂△同 玉▲5六歩(下図)と進んでどうかという将棋だ。
駒割りとしては後手の桂得ながら危険極まりない格好であり、以降は先手の攻めを正確に受けきる技術が求められる。
参考棋譜
(局面図再掲)
次に②▲4五歩。floodgateではこちらの実戦例の方が多い。
▲4五歩に対しては△同歩も局数は少ないながら考えられる。
以下▲6九飛△8三角(△7四角ならば▲2八角)▲6七桂△6四金▲7五桂△同金▲9七角(参考図)と進むのが一例。
ここでfloodgateの実戦では△8六歩としたが、△6三桂が優ったようだ。
参考棋譜
このような変化が一例で△同歩も有力。
(局面図再掲)
次に△6四桂(下図)。
ここで▲4六桂も今まで何度も出てきた手で有力ではあるが、△5六桂と後手も強く戦う。
そこから勢い▲5四桂とすると△4八桂成▲6二銀(参考図)という恐ろしい変化となる。
以下△6四玉、△6三玉、△5四玉いずれも考えられ評価値としては-400ほどで後手有利を示すが、一手でも後手が受け間違えると敗勢に陥りそうな展開だ。
先手しても△5六桂には▲同歩とするほうが実戦例は多く以下、△4五銀(下図)と進み難しい形勢。
ただ、先手としては取れそうだった銀をスルっと逃げられるのでややしゃくな展開だろうか。
参考棋譜
(局面図再掲)
次に▲6九飛(下図)。
いよいよ本記事の終わりが見えてきた。
floodgateの実戦例は9局までしぼられている。
以下△5六桂▲同歩までは進む。
そこで△6四金も有力で、以下▲4四歩△2六角(下図)と進んで難解な勝負。
floodgateの実戦は以下▲4七金とし、△4六歩▲2九飛△8六歩▲同 歩△7六歩▲同 銀△8八歩▲同 金△4四角と進んでいる。
参考棋譜
▲4七金では▲4九飛や▲3七桂も考えられ難解。
△6四金に代えて△4五歩(下図)がfloodgateでは多い。
ここで▲1七角と打った実戦もあるが、以下△4四銀▲5五歩 △同銀直 ▲6五飛 △6四金 ▲同 飛 △同 銀 ▲4四角 △同 玉 ▲5六桂 △5三玉の進行は先手の攻めがやや息切れか。
参考棋譜
▲1七角では▲5五歩の方が多く、以下△同銀▲5七桂(下図)と進む。
ここで△4二玉とした実戦があり、以下▲6五桂 △6四金 ▲6六銀 △同 銀 ▲5三角 △3三玉 ▲6四角成(下図)と進んだ。
先手の攻めが好調のようだが、後手もここで△6七歩、△6八歩という有力手段があり難しい勝負。
参考棋譜
(局面図再掲)
▲5七桂には△6四金もあり、以下▲6五桂 △4二玉 ▲6六銀(下図)と進むと△6四金で△4二玉とした局面と同一となる。
実はここで△4六角とした実戦もfloodgateではあるが、以下▲5七金△同角成▲同銀(下図)
と進み、先手有利。
以下、△5八金には▲5三角で①△3三玉には▲4四角打△同銀▲同角成△同玉▲5六桂②△4三玉も▲4七桂で後手玉は寄り筋。
△5八金では△5二歩とするよりなさそうだが、それでも▲4七桂で先手の攻めが続きそうだ。
参考棋譜
(局面図再掲)
よって後手としても上図では△同銀を選択することとなり、以下▲5三角△3三玉▲6四角成(下図)と進み、やはり前述の図へと合流する。
結局のところ、表題の△5二玉~△4二玉の待機策に対する▲7九玉型での▲4五桂の変化は突き詰めていくとこの局面に至ることとなる。
この局面をどのように捉えるかということになる。
ソフトの評価値的には先手が+150ほど。ただ、人間同士の勝負となると+150だとほぼ互角と見ていいだろう。
△6七歩、△6八歩は有力。△5五銀打も考えられる。
後手玉は壁形なのが辛いが、先手玉も薄い。
形勢判断は見解の分かれるところだろう。
1/30 23:16追記
上図はかなり難解な局面のようで、ソフトで長時間読ませるとほぼ互角。
以下、読み筋。
*検討 候補1 時間 122:13.9 深さ 31/52 ノード数 128069346167 評価値 8 読み筋 △6八歩 ▲5九飛 △3一銀 ▲5二飛成 △6九角 ▲7七金打 △4三銀 ▲7二龍 △7七銀不成 ▲同 金 △7六歩 ▲4四歩 △同 銀 ▲4三銀 △4一金 ▲3二銀成 △同 銀 ▲7六龍 △5五銀打 ▲6三馬 △7五歩 ▲同 龍 △6一飛 ▲6二歩 △5一飛 ▲8八玉 △3六角成 ▲7三龍 △2二玉 ▲7二龍 △7六歩 ▲同 金 △6七銀 ▲6一歩成 △7六銀成 ▲5一と
参考棋譜
まとめ
今回の記事では実戦例がかなり増えてきている△5二玉~△4二玉の待機策に対する▲7九玉型での▲4五桂の仕掛けの変化をfloodgateの実戦を中心として振り返ってきた。
後手としてもこの変化がつぶれとなると他の指し方を選択しないといけなくなるので、死活問題と言える。
先手の攻め、後手の受けと局面の方針は分かれているので事前研究はしやすい展開といえるだろう。
また、実戦では現れていなくても分岐の変化を知っている者の方が勝負としては有利かもしれない。
参考書籍
池永天志四段による角換わりの戦術書。
書名とおり、現在の角換わりの将棋でテーマとなっている展開はほぼ網羅されている力作。
この本の変化を土台として、結果図以降や分岐の研究が進んでいくのは確実で現在進行形でそれが進んでいる。