はじめに
近年、コンピュータ将棋は従来には考えられなかった序盤戦術を開拓している。
特にponanzaは「ponanza流」と呼ばれる素晴らしい発想の序盤戦術を多く生み出している。
↓ponanza開発者、山本一成さんによる参考記事
ascii.jp
今回、私が取り上げる△7四歩取らせ戦法はまさに「ponanza流」といったものである。
今までの常識ではありえないといっていいこの作戦。
じっくり調べていこうと思う。
△7四歩取らせ△8五歩型
(初手からの指し手)
▲7六歩 △8四歩 ▲2六歩 △7二銀 ▲2五歩 △3二金 ▲7八金 △8五歩 ▲7七角 △7四歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲7四飛(下図)
15手目にして後手1歩損&先手のみ2筋の歩を切るというこの作戦。
後手にとっていいところが何一つないようだが、対策を知らない相手にはいきなり有利に持ち込める変化もある。
(上図からの指し手)
△7三銀 ▲7五飛 △6四銀 ▲2五飛 △3四歩 ▲6八銀 △7七角成 ▲同 桂 △1四角
(下図)
角交換をしてこの△1四角が狙いの筋である。
ここで▲4五飛なら△3三桂▲4六飛△5五銀でやはり△4七角成が受からない。
私はネット将棋でこの戦法を何度も指しているが、この筋にハマルことは案外多い。
序盤早々で馬を作ることが出来れば後手大成功だろう。
参考棋譜その1(↑の将棋)
https://shogi.io/kifus/234935
参考棋譜その2
https://shogi.io/kifus/234936
参考棋譜その3
https://shogi.io/kifus/234937
△7四歩取らせ△8四歩型
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/234938
(初手からの指し手)
▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △3二金 ▲7八金 △7二銀 ▲7六歩 △7四歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲7四飛(下図)
ponanzaはこの△7四歩取らせ戦法をもちいる際に、少しづつ指し方を変えている。
具体的には後手の飛車先の歩が8三か8四か8五の3通りの場合があるのだ。
今回は△8四歩型だが、これがどう出るか。
(上図からの指し手)
△7三銀 ▲7五飛 △6四銀 ▲2五飛 △8五歩 ▲6六歩 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △8二飛 (途中図)
▲6八銀 △4一玉 ▲4八玉 △3四歩 ▲3八玉 △5二金▲2八玉 △4四角(下図)
タイミング遅れての△8五歩に先手は8筋の歩を切らすのを受けなかった。
これを見て後手も8筋の歩を切る。上図は一局ながら、後手の6四の銀が好位置なため、満足な序盤の分かれとなった。
この将棋の総棋譜は以下から
参考棋譜
https://shogi.io/kifus/234939
△7四歩取らせ△8三歩型
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/234940
(初手からの指し手)
▲2六歩 △3二金 ▲7六歩 △7二銀 ▲2五歩 △7四歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲7四飛(下図)
後手が飛車先の歩をひとつも伸ばさずに7四の歩を取らすパターン。
(上図からの指し手)
△7三銀 ▲7五飛 △6四銀 ▲2五飛△8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲7七銀 △8五歩 ▲7八金 △4二玉 ▲4八銀 △4四角(途中図)
▲5八金 △2二銀 ▲6六歩 △3一玉 ▲5六歩 △5四歩▲5七銀 △5五歩(途中図)
▲6七金右 △5六歩 ▲同 銀 △5五歩 ▲6五銀 △同 銀 ▲同 歩 △5六銀(下図)
この場合、先手は矢倉を選択することができるが、それは後手の望むところ。
後手は囲いもそこそこに5筋から速攻を仕掛ける。
矢倉は手数が掛かる割には堅くないので、このような速攻が効果的になる。
参考棋譜
https://shogi.io/kifus/234941
先手番▲3六歩取らせ
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/234942
(初手からの指し手)
▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲3八銀 △8四歩 ▲9六歩 △8五歩 ▲7八金 △3二金 ▲3六歩 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △3六飛(下図)
この戦法は主に後手番で使われるが、先手番でも応用が可能だ。
先手番の場合、▲9六歩と端歩が入っている場合が多い(もしくは▲1六歩。)
ちなみに、本譜の▲8七歩で▲3七銀と指しておけば3筋の歩は取られることはない。
(▲9六歩が突いてあるため。後手番だと端歩が突いていないので角頭に歩を打たれて、角が詰む。)
しかし、ponanzaはあえて、3筋の歩を取らせることが多い。
おそらく歩を取らせても十分戦えると考えているからだろう。
(上図からの指し手)
▲3七銀 △3五飛 ▲6九玉 △8五飛 ▲4六銀 △4一玉 ▲6八銀 △6二銀 ▲7六歩 △4二銀 ▲7九玉 △5一金 (途中図)
▲3七桂 △4四歩▲5八金 △4三銀 ▲6六歩 △4二金上 ▲6七銀 △3一玉 ▲7七角 △9四歩 ▲5六歩 △6四歩 ▲6八角 △6三銀 ▲5五歩
(下図)
本譜はじっくりした戦いになった。このように、このponanza流△7四歩取らせ戦法は激しい変化もあれば、おだやかな変化もある。
まさに変幻自在、相手の指し方を見て作戦を柔軟に切り替える姿勢が必要になってくる。
この将棋の総棋譜は以下から
参考棋譜その1
https://shogi.io/kifus/234943
参考棋譜その2
https://shogi.io/kifus/234944
参考棋譜その3
https://shogi.io/kifus/234945
△7四歩取らせ戦法のまとめ
ponanza流△7四歩取らせ戦法はこんな人におススメ!
・まだ未開拓の戦法を指してみたい人
(既存の定跡はつまらないという人)
・後手番の戦法に悩んでいる人
・ponanza流を極めたい人