はじめに
7/15日、将棋センター「歩(あゆみ)」にて小林宏七段の指導対局が行われた。
今回の記事ではその対局(平手戦、私の先手)を初手から振り返っていきたいと思う。
実戦譜
動く再生盤は↓のリンクから
https://shogi.io/kifus/171062
(初期局面)
(上図からの指し手)
▲7六歩 △8四歩 ▲2六歩 △3二金 ▲2五歩 △8五歩 ▲7七角 △3四歩 ▲6八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀▲7八金 △3三銀(下図)
前回の指導対局では初手▲2六歩と指したが、今回は初手▲7六歩と指した。
そして5手目▲2五歩が趣向で後手の雁木を封じる指し方である。
ここでは5手目▲7八金と指し、以下△8五歩 ▲7七角 △3四歩 ▲6八銀(参考図)
と進める指し方も一局。
参考図からは、△7七角成と角換わりにする指し方と△4四歩と角道を止めて雁木模様にする指し方が有力となる。
本譜は角換わりの進行となった。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲4八銀 △6二銀 ▲4六歩 △6四歩 ▲4七銀 △6三銀 ▲6八玉 △4二玉 ▲3六歩 △7四歩▲3七桂 △7三桂 ▲2九飛 △5二金(下図)
先手は▲2九飛と指し、▲4八金型を目指す。それに対して後手は△5二金と上がった。
(上図からの指し手)
▲4八金 △1四歩 ▲1六歩 △9四歩 ▲9六歩 △5四銀 ▲5六銀 △3一玉
▲7九玉 △4四歩 ▲6六歩 △4二金右(下図)
小林七段は△4二金右と指し、守りを固めた。
局後の感想戦で小林七段は7/6に指された、棋王戦の屋敷-佐藤康戦での佐藤九段の構想を参考にしたと仰っていた。(参考図)
参考図から屋敷九段は▲4五歩と仕掛けていった。(結果は後手の勝ち)
私もその将棋は知っていたが、違う指し方を選んだ。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲8八玉 △2二玉 ▲4五歩 △6五歩 ▲4六角 △8三飛(下図)
一旦、▲8八玉と入城してから▲4五歩と仕掛けた。
そして△6五歩に対して▲4六角が狙いの構想。
後手の金銀は守りに固まっているので、飛車の小ビンを狙いつつ、好所に角を据えた。
(上図からの指し手)
▲1五歩 △同 歩▲4四歩 △9五歩 ▲同 歩 △6六歩 ▲1三歩 △同 香 ▲4五桂(下図)
△8三飛を利かせたことによって後手の飛車が2段目に利きがなくなった。
よってここから▲1五歩と仕掛けていく。
▲4五桂では▲2四歩も考えられたところで、以下△同 銀 ▲同 角 △同 歩 ▲1四歩 △同 香 ▲2四飛(参考図)
と進めるのも有力だった。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
△同 銀 ▲同 銀 △9八歩 ▲同 香 △9七歩▲同 香 △9六歩 ▲同 香 △8四桂(下図)
▲同銀の局面は後手からの反撃手段が多く、先手にとっても難しい展開。
△9八歩では△8六歩も有力で以下、▲同銀△6七角(参考図)
と進んで難解な将棋。
本譜は端で香車をつり上げて、△8四桂と香取りに桂を打った。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲2四歩 △9六桂 ▲7九玉 △2四歩 ▲2五歩 △8六歩 ▲同 歩 △8七歩
▲6八歩(下図)
ここからはお互いの囲いが崩れていく展開となり、読みが難しくなっていく。
△8七歩に対しては▲2四歩から攻め合う展開も考えたが、以下△8八歩成 ▲同 銀 △同桂成 ▲同 玉 △6七角(参考図)
と進んだ局面が自信が持てなかった。
よって本譜は▲6八歩と受けたが、ここでは後手が少し有利になっているようだ。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
△8八歩成 ▲同 銀 △同桂成 ▲同 金 △2五歩(下図)
▲同金の局面は後手にとって攻めるか受けるかの判断が極めて難しい局面。
小林七段は△2五歩と自陣に手を戻したが、ここでは△6七歩成も有力だった。
以下、▲同 歩 △8六飛 ▲7七銀 △8五飛(参考図)
と進み、△4五飛を見せられると先手難局であった。
本譜はここから先手が積極的に攻めていく。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲2四歩 △2六香 ▲2三銀 △同 金 ▲同歩成 △同 玉▲2四歩 △同 銀 ▲同 角 △同 玉 ▲2七歩(下図)
▲2四歩では▲2四桂もあったが、歩で攻めた。
対して後手は△2六香と打ち、飛車を責める。
ここから▲2三銀~▲2四角~▲2七歩が狙っていた一連の攻め筋。
▲2七歩の局面は一見ぬるいように見えるが、後手は先手に持ち駒を渡すと、トン死筋が生じるため、駒を渡しにくい恰好となっている。
(上図からの指し手)
△6七歩成 ▲3五桂(下図)
非常に難しい局面となっている。
△6七歩成はこの瞬間に入れば利かしとなるが、ここで▲3五桂が狙っていた攻め筋だった。この手は▲2三金△1四玉▲1五香△同玉▲1九飛△1六歩▲2四銀以下の詰めろとなっている。
ここで形勢は先手に傾いたようだ。
△6七歩成では△6五角が有力で、以下▲5六歩から難解な将棋だった。
(上図からの指し手)
△3三金 ▲2六歩 △3五歩 ▲2五歩 △2三玉▲2四銀 △1二玉 ▲6七歩 △6六歩 ▲4三歩成(下図)
まで101手で先手の勝ち
▲2四銀では▲2四歩以下、△3二玉 ▲2三歩成 △4一玉 ▲4二金(参考図)
と進み後手玉に以下詰みがあった。
しかし、本譜でも勝ちになっていたのは幸運だった。投了図以下、先手玉に詰みはなく、後手玉にも適切な受けはないので投了もやむを得ない。
まとめ
角換わり腰掛け銀▲4八金型から激しい攻め合いの一局となった。
仕掛け前後の指し手は研究課題で、攻め方にも工夫が必要となりそうだ。
中盤以降は後手が有利となったが、△2五歩から攻守が逆転し、最後は先手に勝ちが残っていた。
一局を通しても内容の濃い将棋で指していて充実感を感じた。
参考書籍
私の著書です。
第2章に角換わり▲4八金の指し方が載っています。
本局とは違う展開ですが、ご一読していただくと戦法に対する理解が深まります。