はじめに
以前にponanza流の対振り銀冠穴熊を紹介した時には大きな反響があった。
www.fgfan7.com
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銀冠穴熊以外にも将棋ウォーズのponanzaは対振り飛車に独特な指し口をする。
今回は「とっておきの振り飛車対策その2~ponanza流雁木穴熊~」
と題して向飛車、三間飛車、四間飛車、中飛車すべての振り飛車に「雁木穴熊」で戦う戦術を紹介していきたい。
雁木穴熊に組むまでの大まかな手順
まず雁木穴熊に組むまでの大まかな手順の一例を紹介する。
①まずこのように「雁木囲い」に組み上げる。
通常、雁木は相居飛車でもちいるが、ここでは対振り飛車を想定している。
②そして金と玉を寄せていく。
③最後に香車を上げて穴熊に潜り、さらに金を寄せて雁木穴熊の完成である。
ponanza流対振り銀冠穴熊と同様、ここまで組み上げる手順は対局によって微妙に違っており、組み方も一つのポイントとなる。
大まかな組み上げ方をみたところで実戦編に移ろうと思う。
対ノーマル四間飛車(美濃)
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/232842
(初手からの指し手)
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲6八銀 △4二銀 ▲7八金 △4三銀 ▲6六歩 △4二飛 ▲9六歩(途中図)
△9四歩 ▲5八金 △6二玉 ▲4八銀 △7二玉 ▲6九玉 △8二玉 ▲7七角 △7二銀 ▲5六歩 △5二金左 ▲5七銀右△6四歩 ▲7九玉 △7四歩▲6七銀 (途中図)
△6三金 ▲8八玉 △7三桂▲2五歩 △3三角 ▲9八香 △8四歩 ▲9九玉 △4五歩 ▲6八金右 △4四銀 ▲8八金△3五銀 ▲4八飛 △5四歩 ▲7八金右(下図)
この戦法は基本的に相手が飛車を振る前に▲6八銀や▲7八金として振り飛車を誘う。
そして、相手が飛車を振ってきた時に採用するのが有効である。
本譜、後手は至って普通のノーマル四間飛車。
それに対するponanzaは冒頭で紹介した組み方のように悠々と雁木穴熊にする。
駒組みがわかりやすいのもこの作戦の特徴だ。
(上図からの指し手)
△8三銀 ▲6八角 △7二金 ▲8六歩 △4一飛 ▲1六歩 △1四歩 ▲3八飛 △4四銀 ▲3六歩(途中図)
△5五歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲5六歩 △4四銀 ▲8七金右 △5一飛▲5八飛 △5三銀 ▲5九角 △6二銀 ▲2六角 △5四歩 ▲2八飛(途中図)
△4一飛 ▲3七角 △7一銀 ▲7八銀 △4三飛 ▲2六角 △6五歩 ▲6八飛△6六歩 ▲3七桂(途中図)
△6二銀 ▲6九飛 △5三銀 ▲6六銀 △2二角 ▲5五歩 △同 歩 ▲5三角成(下図)
本譜は長い駒組みを経て、先手が強襲を仕掛けた。
上図以降も難しい戦いが続いたが、最後は先手が勝利している。
この将棋の総棋譜は以下から
対ノーマル四間飛車(穴熊)
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/232849
(初手からの指し手)
▲2六歩 △3四歩 ▲7八金 △4四歩 ▲6六歩 △4二飛 ▲6八銀 △6二玉 ▲5六歩 △7二玉 ▲6七銀 △3三角 ▲4八銀 △3二銀 ▲5八金(途中図)
△4三銀 ▲9六歩 △4五歩 ▲9五歩 △8二玉 ▲7六歩 △5二金左 ▲7七角 △9二香 ▲6九玉 △9一玉 ▲7九玉 △8二銀 ▲8八玉(途中図)
△7一金▲9八香 △5四歩 ▲9九玉 △4四銀 ▲2五歩 △6四歩 ▲8六角 △6三金 ▲5七銀 △7四歩 ▲8八金 △4一飛 ▲6八金 △7三金 ▲7八金右(下図)
前局と細かい手順の違いこそあれ、最終的に雁木穴熊に組み上げた。
さてここからどう戦うか。
(上図からの指し手)
△8四歩 ▲7七角 △5五歩 ▲5八飛 △5六歩 ▲同銀左 △5一飛 ▲6七銀 △1二香 ▲1六歩(途中図)
△6五歩 ▲同 歩 △5五銀 ▲5六歩 △6六歩 ▲5五歩 △6七歩成 ▲同 金 △5五角 ▲6六銀(途中図)
△同 角 ▲5一飛成 △7七角成 ▲同金寄 △7九銀 ▲7八金寄 △6八銀打 ▲2二角 △3三角 ▲同角成 △同 桂 ▲4四角(下図)
この雁木穴熊は通常の居飛車穴熊や銀冠穴熊に比べて、堅さという面では劣るが、中央の手厚さなら最高峰の形である。
よって通常の居飛車穴熊では成立しないような中央での戦い方ができる。
上図も穴熊の遠さが活きる展開になり、▲4四角と好所に配置して先手優勢となった。
この将棋の総棋譜は以下から
対ノーマル四間飛車参考棋譜
①https://shogi.io/kifus/232854
②https://shogi.io/kifus/232857
③https://shogi.io/kifus/232861
④https://shogi.io/kifus/232866
⑤https://shogi.io/kifus/232871
⑥https://shogi.io/kifus/232892
対ノーマル三間飛車
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/232897
(初手からの指し手)
▲7六歩 △3四歩 ▲7八金 △4四歩 ▲2六歩 △3二銀 ▲6八銀 △4三銀 ▲6六歩 △3二飛 ▲9六歩 (途中図)
△9四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲6七銀 △6二玉 ▲4八銀 △7二玉 ▲5六歩 △8二玉 ▲5七銀 △7二銀 ▲6九玉 △5二金左 ▲7七角(途中図)
△6四歩 ▲7九玉 △6三金 ▲8八玉 △7四歩 ▲9八香 △7三桂 ▲9九玉 △8四歩 ▲5八金 △8三銀 ▲6八金右 △7二金 ▲8八金△3五歩 ▲7八金右(下図)
ノーマル三間飛車に対しても雁木穴熊は基本的な駒組みの仕方は変わらない。
ここから後手は石田流に組もうとしてきそうだがそこでどう対応するかだ。
(上図からの指し手)
△4二角 ▲6八角 △4五歩 ▲4六歩△4四銀 ▲4五歩 △同 銀 ▲4四歩 △3四銀 ▲4六銀 △3三角 ▲3五銀 △同 銀 ▲4三歩成(下図)
後手の△4二角に対して、先手は▲6八角と間接的に石田流をけん制する。
△4五歩に代えて△3六歩なら以下、▲同歩△同飛▲3七歩△3四飛▲4六銀としておけばやはり石田流に組むのは難しい。すでに先手ペースとなっているのだ。
本譜も上手く切り返して、角銀交換の戦果をあげた。
この将棋の総棋譜は以下から
対ノーマル三間飛車参考棋譜
https://shogi.io/kifus/232912
おまけ 対ゴキゲン中飛車と対ノーマル向飛車
対ゴキゲン中飛車
https://shogi.io/kifus/232916
対ノーマル向飛車
https://shogi.io/kifus/232919
まとめ
この雁木穴熊は以前からponanzaの棋譜をみて知っており、興味はあったが今回記事として取り上げようと思ったのは
将棋センター歩
http://www6.plala.or.jp/ayumi-syogi/
に置いてあったこの書籍の影響である。
この本を読んで雁木について本格的に調べようと思い、その最中に雁木穴熊の執筆を思い立った。
雁木という戦法はそもそもプロ、アマ問わず主流にはなっていない。
しかし、近年のコンピュータ将棋ソフトは雁木を好みはじめているのを感じている。
対振り銀冠穴熊もそうだったが、この雁木穴熊も金銀の連結は美しい。
金や銀が横に2枚並んでいる雁木穴熊は隙が無く、中央にも厚い陣形だ。
通常の居飛車穴熊と違い、藤井システムのような序盤から激しい変化になりにくいのも利点である。
この雁木穴熊をponanza流銀冠穴熊やクルクル角のように対振りのレパートリーに取り入れると戦術の幅が広がり、総合的な勝率も上がると思う。
また、雁木は従来のように相居飛車でも有力である。
今後、相居飛車での雁木戦法についても記事にしていきたい。