はじめに
以前に執筆したponanza流銀冠穴熊の記事は大きな反響があった。
www.fgfan7.comたくさんの方に興味を持っていただけたようで、プロ棋士の増田康宏四段にも興味を持っていただけたのを知ったときは嬉しかった。
@wakate_shogi
— suimon (@floodgate_fan) 2016年10月31日
増田先生、はじめまして。
先生の将棋を中継で見ていると序盤の指し方がソフトからの影響を受けているのでは?と感じる事がよくあります。(角換わり腰掛け銀△6二金、対振り飛車の銀冠穴熊、対矢倉の左美濃急戦など)普段どのくらいソフトを研究に使っていますか?
@floodgate_fan 実をいうと、対振り銀冠穴熊はsuimonさんのツイッターやブログで知りました。いつも拝見させて頂いております。
— 東竜門〜関東若手棋士〜 (@wakate_shogi) 2016年10月31日
ソフト研究はあまりしないですね。自分はソフトの棋譜並べを多くしています。
@wakate_shogi
— suimon (@floodgate_fan) 2016年10月31日
ありがとうございます。
ビックリしました。
そうなのですね。
私もソフトの棋譜並べは好きでよくやっています。
また増田先生の参考になるような記事が執筆できるように頑張ります!
記事を投稿したのが7月30日。そして増田四段が公式戦で衝撃の指し回しを見せたのが、9月12日の第58期王位戦予選、及川六段戦だった。
衝撃の一局
ここではその部分図を紹介する。(連盟モバイル中継に加盟したら、コメント付きで全棋譜を閲覧できます。)
一枚だけスクショ許して下さい
— suimon (@floodgate_fan) 2016年9月12日
フォロワーさんが研究していた局面と全くの同一となりましたね!
増田四段のソフトによる研究かもしれません。 pic.twitter.com/3YMpAtkaZf
図は▲8八の角を▲6六角と上がった局面。▲7七角と上がると△6五桂が角銀両取りになるのでそれを避ける工夫の一着。
この一手はこの対局以前にTwitterで私のフォロワーの方が研究発表をしていた。
もしかしたら増田四段もこのツイートを見て、この戦法が有力だと感じ取ったのかもしれない。
pona流銀冠穴熊の57銀型において73桂への対処が不安材料だった。
— .exe (@huro5951) 2016年8月15日
しかし、今回魔女+新aperyはこの局面で66角を示した。
柔軟だなぁ〜 pic.twitter.com/qahEleKldP
ここでの▲9八香は一見奇異に見えるが、理論に基づいた一手。
ここでもフォロワーさんのツイートが参考になる。
この香上がりの意味付けが難しかった。
— .exe (@huro5951) 2016年7月24日
個人の見解だが、主に88玉〜98香と比較して2つの効果があると考えられる。
⑴ 角のラインに玉が入る時間が短い(リスク軽減)
⑵ 99角成で香を取られない(87銀との連携) pic.twitter.com/HYwLi1hXfD
⑴ について
— .exe (@huro5951) 2016年7月24日
【88玉〜98香の場合】
88玉〜98香〜99玉〜88金でようやくハッチが閉まる。
角のラインに玉がいるのは居飛車が3手指す間。
【98香〜88玉の場合】
98香〜88玉〜99玉〜88金でハッチが閉まる。
角のラインに玉がいるのは居飛車が2手指す間。
⑵ について
— .exe (@huro5951) 2016年7月24日
1枚目のように88玉の時点で85歩と仕掛けられた場合に効果を発揮する。
85歩以下は、同歩 同桂 68角 45歩 79玉
ここで99角成には86歩がある。 pic.twitter.com/RYpUPmhYXT
万全を期して▲8八玉と入場する。この後、後手は△8五歩と仕掛けていったがこの将棋は先手の快勝だった。
この対局をキッカケにして後手の序盤の駒組みも工夫が求められるようになった。
(局面図再掲)
私はこの局面、後手がすでに△4三銀としてしまっているのが作戦負けの原因だと思っている。銀は3二に置いておいて、▲6六角~▲9九玉のタイミングで△4五歩とするのが自分の中での課題。それを乗り越えればノーマル振り飛車はなくなるかも。 https://t.co/fK8gJboE7J
— 9九に棲む熊 (@ibishainochi) 2016年9月12日
新人王戦での対振り銀冠
さらに増田四段は新人王戦決勝三番勝負という大舞台でこの戦法を採用する。
2016年10月11日 決勝三番勝負 第2局 石田直裕四段 対 増田康宏四段|第47期新人王戦
(初手からの指し手)
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲4八銀 △4二飛 ▲5六歩 △9四歩 ▲9六歩 △7二銀 ▲7八銀 △5二金左 ▲6八玉 △6二玉 ▲7九玉 △7一玉 ▲5八金右 △6四歩 ▲8六歩 △3二銀 ▲8七銀 △7四歩 ▲7八金 △3三角 ▲2五歩 △8二玉 ▲6六角 △6三金 ▲8八玉 △5四歩 ▲3六歩 △7三桂 ▲5七銀 △8四歩 ▲3八飛 △4五歩(下図)
上述の9九に棲む熊さん (@ibishainochi)のツイートにもあったように後手は△3二銀のまま△4五歩と角交換を目指すのが一つの有力策。
この展開は互いに打開が難しい将棋になる。
(上図からの指し手)
▲7七桂 △6六角 ▲同 歩 △3三銀 ▲2八飛 △8三銀 ▲1六歩 △1四歩 ▲3七桂
△7二金 ▲4八金 △3五歩 ▲同 歩 △1五歩 ▲同 歩 △同 香 ▲同 香 △3六歩 ▲4五桂 △同 飛 ▲4六銀 △4二飛 ▲1一香成(下図)
本譜は後手から△3五歩と仕掛けていく展開。先手は後手の手に乗って指し手を進め、▲1一香成の局面は先手やや指せる展開。本譜は以降激戦となり、最後は増田四段が鮮やかな長手数の即詰めに打ち取り、第47期新人王に輝いている。
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この戦法は序盤の駒組みが居飛車、振り飛車ともに難しい。
居飛車側の工夫としては序盤で後手に△4三銀型に強要させるのも有力か。
対ノーマル四間だと、早めの77角で68角を見せて43銀を強要できたりする。
— 三郎 (@326saburo) 2016年9月12日
77角で43銀とさせて、73桂が来たら66角という一手損作戦もありかもしれない。
あとこの指し方対システムで超優秀ですよね。 https://t.co/YTy3cS5XnY
(参考図)
また、右金の動かし方にも工夫が求められる。
やっぱり
— fiss-vinbows (@fissvinbows) 2016年9月12日
右金の移動はギリギリまで保留したい。5八から移動させると角が6八に引けない時間帯がある。 pic.twitter.com/8A8FdY6noJ
△3二銀型での△4五歩からの角交換型は千日手模様が気になるが、細かい駒の配置によって成否が分かれそうだ。
pona流銀冠穴熊で32銀のまま45歩から角交換を狙われる(勝手に45歩kksと呼んでいる)と千日手になることが懸念されているが、
— .exe (@huro5951) 2016年11月2日
1枚目の形からの45歩kks(+65歩)には37角が急所になるよう。
2枚目の形での45歩kksは千日手模様かもしれない。 pic.twitter.com/18D9sSrI1E
65歩が突いてある形では、居飛車側は37角が。
— .exe (@huro5951) 2016年11月2日
振り飛車側は64角が急所となる。
玉のコビンが互いに大切。
その他にも、後手から早めの△8五歩の揺さぶりも先手にとっては懸念材料になっている。
【最重要変化〜pona流銀冠穴熊vs▲2五歩〜】
— こいなぎ@24 (@naginyan135) 2016年12月13日
▲2五歩からの端攻めは常套手段だが、受けのポイントがある。
1、▲1三歩には△同桂と取る。
2、▲同桂成には△同角と取る。
3、▲6五歩には△2二角とぶつける。
これでpona評価は後手持ちだ。
銀冠穴熊を指す上で必須の知識だ。 pic.twitter.com/58dlgd0H3G
まだまだ未知数なこの戦法、来年にはある程度体系化されるのではないかと思っている。
※その他参考棋譜
11/10第42期棋王戦挑戦者決定トーナメント、千田-森内戦
(連盟モバイル中継局)
※本記事を執筆するにあたり、多くの研究熱心な方のツイートを参考にさせていただきました。ここに感謝します。
※この戦法に対して新たな動きがあればまた記事にします。