はじめに~ダイレクト▲6五角について~
初手から▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角▲7六歩(下図)
と進んだ時に、後手は△2二飛と向かい飛車にすることができる。そこで▲4八銀と指せば穏やかな進行となり一局だが、代えて▲3三角成△同桂と角交換をする権利が先手にはある。
△同桂の局面では▲9六歩(下図)
と一回端歩を突くのが長らく指されていた指し手。
その意味としては、仮に▲9六歩に対して△9四歩と突くと▲6五角△4五桂▲4八銀△5五角と進んだ時に▲9七香(下図)
と香が逃げるスペースがあるのだ。以下、△9九角成と成られても▲7八銀と受けておけば問題ない。よって後手も▲9六歩に対して△9四歩とは指しにくい。
後手は端歩を受けない
後手は先手の▲9六歩に対して△9四歩に代えて▲6五角の筋に備えて△4二銀
(下図)
と銀を上がっておくのがよい。
以下、▲9五歩△3二金▲5八金右△4四歩▲4八銀△4三銀▲5六歩(下図)
と進んだのが、YaneBlend―DirectMotemitsu戦(2017年10月18日、フラッドゲート)。
↓参考棋譜
https://shogi.io/kifus/227444
こう進めば、後手としてもすぐに激しい展開にはならないので一局ながら不満はない進行。よって先手としても他の手段を模索したいところではある。
そこで、▲3三角成△同桂の局面で▲9六歩と突かずに▲6五角(下図)
と打つのが本記事で鍵となる一手だ。従来はそこで△4五桂▲4八銀△5五角と進むと香取りが受けにくく先手不利とされていたが、その後研究が進み先手も戦えることがわかってきた。
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ダイレクト▲6五角の攻防
◇激しい展開
(初手からの指し手)
▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角 ▲7六歩△2二飛▲3三角成△同 桂 ▲6五角(途中図)
△4五桂▲4八銀 △5五角▲9八香△9九角成▲7八銀△4二飛▲8三角成△9八馬▲5六馬 △8五香(下図)
▲9六歩を保留して▲6五角と打ち、以下後手は馬を作って香が確実に取れる形となった。
しかし、先手も▲8三角成と馬を作ることができる。この馬を▲5六馬と引き上げて4五の桂を狙って駒損を無くそうという意図だ。
後手の△8五香は8筋突破を目指した期待の筋。
◇▲3九銀で飛車の横利きを通す
(上図からの指し手)
▲4五馬△8七香成▲同 銀△同 馬▲3九銀(下図)
△8五香と打たれた局面は次に△8七香成が受からない。
よって先手も一旦は▲4五馬と桂を取っておく。
次の△8七香成は当然の一手で 以下▲同銀△同馬まで進む。そこで▲2四歩と2筋突破を目指すと、後手はすかさず△8二飛(参考図)
と8筋に飛車を回り、次の△6九馬からの攻めを狙って後手有利となる。
そこで先手は▲2四歩に代えて▲3九銀と、一度上がった銀を下げて飛車の横利きを通す。
それでも△8二飛ならば▲8八香(下図)で
以下①△同馬には▲同飛△同飛成に▲3三角(下図)
の王手龍取りがあり、先手優勢。
また、②△6九馬には以下▲同玉△8七歩に▲7五桂(下図)
としておけば、△8八歩成には▲8三歩、△5四銀には▲同馬△同歩▲8三歩でいずれも先手有利の形勢となる。
まとめ
この9筋の端歩を省略して▲6五角と打つ手法が発見されてから、後手も初手から▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角▲7六歩と進んだ局面で△2二飛と回るのは、この変化に自信がないと指しにくい状況となっている。
先手としても9筋の香車はほぼ確実に後手に取られてしまうが、それ以上に馬の位置が後手よりも良いことや、4五の桂馬を取りきれれば面白い戦いができる。
floodgateでも実戦例は多く、また一部のアマチュア間でも深いところまで研究が進んでいる分野である。
今後の進展に期待したい。
参考棋譜
https://shogi.io/kifus/227458
https://shogi.io/kifus/227459