はじめに
以前に先手中飛車の攻略法をテーマとして記事を書いた。
ponanzaに学ぶ、最大の難敵先手中飛車攻略① - コンピュータ将棋研究Blog
ponanzaに学ぶ、最大の難敵先手中飛車攻略② - コンピュータ将棋研究Blog
ponanzaに学ぶ、最大の難敵先手中飛車攻略③ - コンピュータ将棋研究Blog
この中のその3で
先手の5筋位取り保留型の中飛車はかなり有力で現段階では後手に工夫が求められているという結論にさせていただきたい。
と記した。
その後、この記事を書いてから約10ヶ月ほどが経過し、いろいろ体系化も進んできたのでこの機会に再度先手中飛車に関しての記事を書くことにした。
↓記事を書く際に参考にさせていただいたブログ
魔女と歩三兵
実戦例
実戦例その1
棋戦:将棋ウォーズ
戦型:先手中飛車
先手:先手
後手:2016Pona
動く将棋盤は↓のリンクから
先手中飛車攻略の急所 実戦例その1 | Shogi.io(将棋アイオー)
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲7六歩 △8四歩 ▲5六歩 △8五歩 ▲7七角 △4二玉 ▲5八飛 △1四歩(下図)
6手目に△4二玉と上がるのはponanzaが愛用する指し方。
その他には△6二銀と上がる実戦例も多い。
最近ではめっきり減った感があるが、以前は△5四歩が多く見られた指し方だった。
しかし、先手からの▲5五歩△同歩▲同飛等のさばきに対して苦戦することが多かったので現在ではほとんど指されていない。
(上図からの指し手)
▲5五歩 △6二銀 ▲4八玉 △1五歩 ▲3八玉 △5二金右 ▲2八玉△7四歩 ▲6八銀 △7三桂(下図)
後手が角道をなかなか開けない指し方も初めは奇異に映ったが、現在ではすっかり定着した。
▲5四歩から先手が飛車角をさばくのを封じている。
そして1筋の端歩に関してだが、これは先手が▲1六歩と受けてこなかった場合は△1五歩と突いておきたいところだ。
将来の端攻めが急所になりやすい。
(上図からの指し手)
▲6六歩 △3二銀 ▲1八香 △3一玉 ▲1九玉 △1三角(下図)
△3二銀から左美濃に囲うのも先手中飛車には有力な構え。
そして上図最終手の△1三角の端角が狙いの1手となる。
先手は穴熊にしたが、この後バランスをとるのが次第に難しくなっていく。
(上図からの指し手)
▲2八銀 △2二玉 ▲3九金 △6四歩 ▲5七銀 △6五歩(下図)
後手は△1三角のにらみを活かし6筋の攻めを絡めて手にしていった。
△6五歩と突いた局面は-350ほどで後手有利となっている。
(上図からの指し手)
▲7八金 △8六歩 ▲同 歩 △8四飛 ▲9六歩 △6三銀 ▲6七金 △7五歩(下図)
先手は▲7八金と攻めに備えたものの、後手は自然に指して優位を拡大。
以下は順調に攻めきった。
実戦例 その2
棋戦:将棋ウォーズ
戦型:先手中飛車
先手:先手
後手:2016Pona
動く将棋盤は↓のリンクから
先手中飛車攻略の急所 実戦例その2 | Shogi.io(将棋アイオー)
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲5六歩 △1四歩 ▲7六歩 △8四歩 ▲5八飛 △1五歩 ▲4八玉 △6二銀(下図)
次の実戦例を見ていく。
2手目△1四歩は面白い趣向。
先手の▲5八飛を見届けてから、△1五歩と突き越す。
最近のソフトは先手中飛車に対して端歩を突き越すのを高く評価する傾向にある。
(上図からの指し手)
▲3八玉 △4二玉 ▲2八玉 △7四歩 ▲6八銀 △8五歩 ▲7七角△5二金右 ▲6六歩 △3二銀(下図)
この将棋でもponanzaは△3二銀を採用した。
左美濃は手数が掛からない割に堅いので、強い戦いも可能である。
(上図からの指し手)
▲1八香 △3一玉 ▲1九玉 △7二飛 ▲6七銀 △7五歩(下図)
先手は▲5五歩を保留する指し方。
それに対して後手は△7二飛~△7五歩と7筋から動いていった。
(上図からの指し手)
▲同 歩 △同 飛 ▲7八飛 △1三角(下図)
先手も後手の攻めに呼応して▲7八飛と飛車を向かい合わせにしたが、またしても△1三角が飛んできた。
狙いは言うまでもなく△5七角成。
この後も巧みに攻めを繋いでいく。
(上図からの指し手)
▲5八金左 △8六歩▲同 歩 △8五歩 ▲7六歩 △8六歩(下図)
先手は▲5八金左と角成を受けたが、後手は追撃の手を緩めず△8六歩~△8五歩と攻める。
そして先手は▲7六歩と打ったが、△8六歩がピッタリの1手となった。
▲7六歩に代えて▲8五同歩は有力だったが、以下△7三桂 ▲7六歩 △8五飛 ▲8六歩 △8四飛 ▲7五歩 △8八歩 ▲同 飛 △7九角成 ▲8七飛 △6九馬 ▲8八飛 △6四歩(参考図)
と進んで後手有利。
その後は△6三銀~△5四銀~△6五歩といった自然な攻めがある。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲7五歩 △8七歩成 ▲8八角 △7八と ▲同 銀 △8七歩 ▲同 銀 △6九飛(下図)
先手は▲7五歩と指したが、ここでは▲同角もある。以下、△8五飛▲8八飛と進むが、そこで△2二玉(参考図)
が冷静な1手。
ここで△2二玉に代えて△7九角成と指してしまうと▲5三角成が絶好の1手となってしまうので注意。あらかじめ王手のラインを消しておくのが手堅い。
本譜は42手目△6九飛までで見事に先手中飛車を攻略することに成功した。
まとめ
今回は先手中飛車に対する△5四歩保留、角道保留型左美濃の将棋を2局みてきた。
両局とも△1三角のにらみが強烈で先手中飛車をうまく攻略することができた。
ポイントとしては、やはり1筋の歩突きだろう。
▲1六歩と受けてこなかった場合は△1五歩とできれば突いておきたい。
そして先手の穴熊には恐れることはなく、角のニラミを活かして積極的に攻めていく姿勢が大事となる。
先手は自陣をまとめきるのに苦労する展開と言えそうだ。
なお、私がプロ棋士の中で先手中飛車に対しての作戦がうまいと感じるのは藤井聡太四段である。
参考図
藤井四段がプロデビュー後、7局ほど先手中飛車と戦っているが、どの対局も序盤からうまいと感じている。
将棋連盟ライブ中継の過去棋譜検索から閲覧していただきたい。
参考書籍
中村 徹,松本 博文 文藝春秋 2017-09-29