はじめに
3/9に行われた、第49期新人王戦トーナメント戦、青嶋五段ー西田四段戦にて青嶋五段が見せた対四間飛車での銀桂交換を許す指し方はネット上で大きな反響があった。
この指し方は中川大輔八段が得意としていたという。
以下、将棋世界2005年2月号に掲載された「盤上のトリビア」山岸浩史 記 での説明を引用する。
先手が藤井システムから▲3七桂とはねた局面。放っておけば▲4五桂で両取りだが、ここで受けずにあえて△1一玉が中川新手。以下、▲4五桂△5一角▲5三桂成△同金▲3九玉△7三角と進めば、守りの桂と攻めの銀の交換で先手の美濃が薄くなり、意外に後手指せるのだ。(中略)難しい定跡を覚えなくていいのでアマの方におすすめ、と中川七段はいう。
この指し方はコンピュータ将棋も指すことがあり、今回の件をきっかけとしてあらためて調べてみることにした。
以下、実戦例を見ていく。
実戦例
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/126460
開始日時:2017/10/02 05:00:01
棋戦:wdoor+floodgate-300-10F+ukamuse_sdt4+AENEMY+20171002050003
先手:ukamuse_sdt4
後手:AENEMY
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲4八銀 △4二飛 ▲6八玉 △7二銀 ▲7八玉 △9四歩
(途中図)
▲5六歩 △9五歩 ▲5八金右 △6二玉 ▲5七銀 △3二銀 ▲3六歩 △7一玉 ▲7七角 △5二金左 ▲8八玉 △7四歩▲9八香 △7三桂 ▲9九玉
(下図)
後手の△7三桂に対して▲9九玉と潜るのが大胆な指し方。
△7三桂に対しては▲6六歩が普通で以下、△6四歩 ▲9九玉 △8四歩 ▲8八銀 △6三金▲6七金 △8二玉 ▲7九金(参考図)
と進むのが一例で互角。
本譜は銀桂交換の順を誘った。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
△6五桂 ▲6八角 △5七桂成 ▲同 金 △4五歩 ▲8八銀 △4三銀 ▲6六金 △5四銀▲7五歩 △同 歩 ▲7九金(下図)
△5七桂成に対して▲同金と取るのが先手の主張となる。
その後、▲6六金と上がって金を前線に繰り出していく。
▲6六金では▲6六歩も考えられるが、以下△5四銀 ▲6七金 △2二飛(参考図)
と進んで先手としては銀桂交換の駒損が残り、やや面白くない展開となる。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
△6六角 ▲同 歩 △6七金 ▲8六角 △7六歩 ▲3一角 △4三飛 ▲5九桂 △6六金
▲2二角成 △3三桂 ▲2四歩 △同 歩 ▲3五歩 △同 歩 ▲2四飛(下図)
後手としては駒得ながら、7筋の薄さが気になる展開。
△6六角では△8四銀と受けておく手も考えられるが、以下▲2四歩 △同歩 ▲3五歩 △同歩 ▲同角△3四歩 ▲2四角 △2二飛▲2五歩 △6四歩 ▲3三角成 △同桂 ▲2四歩(参考図)
と進んで先手指せる。
本譜は△6六角から後手が強襲に出た。
△6七金には先手は▲8六角と逃げておく。
△4三飛に対する▲5九桂は好手。ここで▲2二角成は△7七銀が先手にとっては嫌な形となる。
本譜は▲5九桂△6六金を利かすことによって▲2二角成が金取りとなって先手好調である。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
△7七銀 ▲7三歩 △同 銀 ▲7七桂 △同 金▲同 銀 △同歩成 ▲同 角 △8五桂 ▲7四歩 △同 銀 ▲3三馬(下図)
△7七銀に対する▲7三歩が急所。その後、さらに▲7四歩を入れてから▲3三馬で自陣に利かして対応した。
(上図からの指し手)
△7七桂成 ▲同 馬 △6四角 ▲2一飛成 △7二銀▲1一馬 △1九角成 ▲7八香(下図)
▲2一飛成に対して後手は△7二銀と補強したが、▲1一馬~▲7八香が自陣にも敵陣にも効いた好手となり、先手優勢となった。(以下先手の勝ち)
以下の進行は↓より
まとめ
対四間飛車での角銀両取りを掛けさせる指し方は今後要注目の指し方である。
ただし、この作戦はいつも成立するわけではなく振り飛車側の駒の配置が大事になってくると思う。
例えば、振り飛車側は居玉の場合のほうがその後の駒組みの自由度が高い。
また、居飛車側としても△5七桂成に対して▲同金と取れるように、▲5八金が入っているほうが望ましい。
今後の進展に期待したい。
参考棋譜
https://shogi.io/kifus/126504