はじめに
振り飛車に対する居飛車の急戦策は先攻できる魅力があり、アマチュア間ではいまだなお人気がある。
しかし、振り飛車側の対策も進化し、美濃囲いの堅さも相まって終盤戦で玉形の差が響く展開も多くなかなか居飛車側も勝つのが大変である。
今回は対振り飛車の急戦策の中でも根強い人気のある▲4五歩早仕掛け戦法に新工夫を加えた指し方で振り飛車に対抗する指し方を紹介していきたい。
実戦例
動く将棋盤は以下のリンクから。
対振り飛車の新・▲4五歩早仕掛け戦法 その1 | Shogi.io(将棋アイオー)
第27回世界コンピュータ将棋選手権 決勝リーグ1回戦
開始日時:2017/05/05 09:39:55
先手:Ponanza Chainer
後手:NineDayFever
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲7八金 △3四歩 ▲7六歩 △4四歩 ▲6九玉 △3三角 ▲4八銀 △4二飛(下図)
初手▲7八金はponanzaがときおり選択する初手。
これに対してNDFは四間飛車にした。
(上図からの指し手)
▲9六歩 △3二銀 ▲9五歩 △7二銀 ▲5六歩 △4三銀 ▲3六歩△6二玉 ▲6八金 △7一玉 ▲5七銀 △5二金左 ▲7八玉(下図)
一度▲7八金と指したのを▲6八金と寄せて▲7八玉と囲う手法はponanzaがよく用いている。
一手損してもったいないようだが、後手番になったとも考えることができる。
あくまで手数にこだわるのなら一手損せずにこの形を目指すのがよいだろう。
(上図からの指し手)
△8二玉 ▲2六歩 △5四歩 ▲2五歩 △8四歩 ▲5八金上 △7四歩 ▲4六歩 △8三銀▲4五歩(下図)
飛車先を伸ばしてから▲5八金上と指し、金無双のような形にした。
この指し方は「ponanza流金無双急戦」とも呼ばれ、アマチュアが挑戦する「PONANZAチャレンジ」企画でもponanzaが指していた。
ここから先手は持久戦にする指し方や▲4六銀から仕掛けていく指し方もあるが今回はそれらの変化は割愛する。
本譜は、▲4六歩~▲4五歩とシンプルな仕掛け。
果たしてこれで上手くいくのだろうか。
(上図からの指し手)
△7二金 ▲3七桂 △6二金左 ▲2四歩 △同 歩 ▲4四歩 △同 銀 ▲4五歩(下図)
ここまでの攻めの指し方は従来の▲4五歩早仕掛けと同じ。
違いは自陣の囲いだけである。
この違いがどのように影響を与えていくのかが焦点となった。
(上図からの指し手)
△5三銀 ▲3三角成 △同 桂 ▲2四飛(下図)
39手目▲4五歩に対して後手の応手は1、△4五同銀と2、△5三銀の2択である。
1、△4五同銀に対しては▲4五同桂(参考図)
と跳ねる。
この局面で新・▲4五歩早仕掛け戦法の長所が現れる。
▲4五同桂に対して△8八角成と指すと▲同銀(参考図)
と形よく取ることができるのだ。
以下、△4五飛 ▲2四飛 △3三桂 ▲1六角 △6四桂 ▲4六歩 △4一飛 ▲7七銀
(参考図)
と進むのが一例で先手よし。
▲4五歩早仕掛けはこの△7六桂を狙う指し方が急所になりやすいが、このように▲7七銀と形よく受けることができるのが強みである。
よって本譜は2、△5三銀を選択し、以下▲3三角成 △同 桂 ▲2四飛と進んだ。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
△7三角 ▲4八銀△4五桂 ▲同 桂 △同 飛 ▲5七桂 △4三飛 ▲6五桂(下図)
43手目▲2四飛に対して△1五角と打つのは▲4六角の王手がピッタリとなる。
その変化は後手玉の小ビンが空いているのが欠点となっている。
よって本譜は△7三角と指した。
▲4八銀といったん桂馬を守ってから▲5七桂~▲6五桂が面白い動き。
巧妙な手順で角銀両取りをかけることに成功した。
(上図からの指し手)
△1九角成 ▲5三桂成 △同 金 ▲2一飛成 △7三馬 ▲5一角 △同 馬 ▲同 龍 △3三角▲4二歩△同 角 ▲2一龍(下図)
先手は自然な攻めを続けていく。
△3三角に対しては▲4二歩が好手となった。
以下、△9九角成には▲6一角(参考図)
が厳しく、先手勝ちの変化となる。
▲4二歩に対して本譜は△同角と仕方なく取ったが、▲2一龍で先手有利となった。
(実戦は以下先手勝ち)
※これ以降の手順は↓から確認していただきたい。
新・▲4五歩早仕掛け戦法の参考棋譜
↓は棋譜リンク
対振り飛車の新・▲4五歩早仕掛け戦法 その2 | Shogi.io(将棋アイオー)
棋戦:将棋ウォーズ(10秒将棋)
先手:2016Pona 後手:後手
まとめ
振り飛車に対する急戦策はどうしても自陣の玉形の薄さに泣く展開になりやすかったが、今回紹介したような形にすることでまた違う戦い方が生まれてくる。
攻め方は今までと同じなので、このような指し方を取り入れるのもそこまで苦労はしないはずだ。
この金無双急戦にはまだまだ可能性があると考えている。
▲4五歩早仕掛け以外にも▲4六銀からの急戦も有力となる。
今後、研究が進んでいくことに期待したい。