コンピュータ将棋研究Blog

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第5回将棋電王トーナメント展望

はじめに

2017年11月11日(土)、12日(日)に第5回 将棋電王トーナメントが開催される。

↓公式サイト

第5回 将棋電王トーナメント | ニコニコ動画

出場ソフトは初出場の14ソフトを含む、本大会最多となる45ソフト。
大会の特徴として、統一ハードで戦う最強のコンピュータ将棋ソフトを決める大会という点が挙げられる。

優勝者には「電王」の称号と賞金300万円が贈られる。

出場ソフト一覧

計45ソフト

shogi686、mEssiah、きふわらべ、TMOQ、dlshogi、PONANZA、読み太、Labyrinthus+囲、にこあ将棋、カツ丼将棋、十六式いろは改、scherzo、Squirrel、海底、なのは、人造棋士18号、nozomi、やねうら王 with お多福ラボ、名人コブラ、Selene、芝浦将棋Softmax、HoneyWaffle、習甦、たこっと、SilverBullet、大将軍、きのあ将棋、Apery、elmo、ArgoCorse_IcSyo、Qhapaq_conflated、平成将棋合戦ぽんぽこ、W@ndre、こまあそび、shotgun、鵺、ツツカナ、ねね将棋、メカ女子将棋、Windfall、CGP、Novice、Yorkie、むっつり助兵衛、Girigiri

対戦形式
・予選リーグ
完全スイス式で8回戦まで実施し、決勝トーナメントに進む12ソフトを決定
・決勝トーナメント
予選リーグの順位に基づく組み合わせのトーナメント戦でベスト4を決定
準々決勝の敗者4ソフトで5位決定
(決勝は3番勝負、それ以外は1番勝負)

持ち時間
予選リーグは15分、秒読み10秒/決勝トーナメントは1時間切れ負け
賞金
1位:300万円/2位:100万円/3位:70万円/4位:50万円/5位:30万円

番組URL
・予選リーグ
放送日時:11月11日(土)10:30~
視聴URL :http://live.nicovideo.jp/watch/lv305451874
出演者 :立会人…遠山雄亮五段、解説…阿部光瑠六段、聞き手…中村真梨花女流三段

・決勝トーナメント
放送日時:11月12日(日)10:30~
視聴URL :http://live.nicovideo.jp/watch/lv305452013
出演者 :立会人…勝又清和六段、解説…西尾明六段、聞き手…貞升南女流初段

となっている。

今回の記事ではその出場ソフトの特徴を私の視点で様々な角度からみていきたいと思う。

 出場ソフトの特徴

shogi686

開発者Twitter 

merom686 (@merom686) | Twitter

コンピュータ将棋の大会には過去から参加している中堅ソフト。

評価関数の機械学習を取り入れて本大会に望む。

mEssiah

開発者Twitter

将棋ソフト「mEssiah」公式 (@messiah_ai) | Twitter

DeepLearningを取りいれたソフト。

さくらインターネットの協力で効果的に学習をしているとのこと。

きふわらべ

非常に熱のこもった自己PR文書が印象的。

過去の大会では反則負けをしたこともあるが、本大会ではどうなるか。

TMOQ

“TMOQ”と書いて「特大もっきゅ」と呼ぶ。

使用ライブラリはApery WCSC26 。

CUDA というコンピュータ言語で作られている珍しいソフト。

現在はfloodgateのRatingが1000 ほど低下してしまったようだが調整がうまくいき、上位に食い込めるか。

dlshogi

開発者ブログ 

TadaoYamaokaの日記

DeepLearningを使用したソフト。

使用ライブラリはelmo(学習データ生成、局面管理、合法手生成のために部分的に使用 )

floodgateにdlshogi_testという名前で参加している。(レートは2708)

自己PR文書を含めて、全体的にとてもキッチリされているという印象。

予選突破に期待がかかる。

PONANZA

開発者Twitterと関連記事

山本一成@Ponanza (@issei_y) | Twitter

最強の将棋AIソフト開発者がプログラミングをやめて未来を考えた | MILESTONE | 現代ビジネス [講談社]

言わずと知れた長きに渡ってコンピュータ将棋界の王者として君臨してきたモンスターソフト。

WCSC27ではelmoに敗退したものの、その強さは安定しており優勝に期待がかかる。

WCSC27ponanza-読み太戦でみせた角換わり拒否雁木はその後、人間界で大流行を巻き起こした。

新たな流行を作ることにも注目が集まる。

読み太

開発者の塚本氏が元奨励会員という、棋力の高さを活かした定跡整備に定評のあるソフト。

「今回は評価関数を1から作っており,現時点ではとても弱いので頑張らないといけません」

とのことだが、過去の実績から言っても上位進出の有力ソフトである。

Labyrinthus+囲

開発者Twitter

香上 智@Labyrinthus+囲参戦 (@kagami_tomo) | Twitter

過去の将棋電王トーナメントにすべて参加しているソフト。

筋違い角戦法やとてもかわいらしいキャラクターのイラストが印象的。

個性的なソフトで大会を賑やかにするソフトである。

にこあ将棋

開発者Twitter

A.M (@dr_neeton) | Twitter

ライブラリ等の類は使用せず、完全独自開発。

世界コンピュータ将棋選手権

◦ 第26回(初出場) 一次予選36チーム中2勝5敗で32位。

◦ 第27回 一次予選36チーム中2勝5敗で31位。

カツ丼将棋

開発者Twitter

カツ丼将棋@五段(24基準) (@katsudonshogi) | Twitter

独学で将棋ソフトを開発した、情熱のある開発者。

自己PR文書では新聞紙に掲載された記事を読むことができる。

予選通過なるか。

十六式いろは改

開発者Twitterとブログ

すえよし@十六式いろは改公式 (@16shiki168) | Twitter

十六式いろは改のあれこれ

ライブラリ不使用で初心者にも優しい強さのソフト。

1勝を目標として頑張る。

scherzo

ニューラルネットワークを用いて評価関数の学習を行っている。

「間に合えば、終局の局面から逆算する Retrograde Analysis に挑戦したいと思っています」とのことだ。

Squirrel

開発者Twitter

だるま (@daruma3940) | Twitter

リスのマスコットキャラクターが可愛らしいソフト。

コンピュータ将棋界では中堅的な実力で今大会でも安定した戦いが期待される。

海底

開発者Twitter

sako@海底 (@kaitei_shogi) | Twitter

今年の1月から開発を始めた新鋭の将棋ソフト。

しかしその実力は日に日に向上しているようだ。

(現状では選手権バージョンに対して勝率9 割を達成している)

要注目のソフトである。

なのは

開発者Twitter

かず (@kazu_nanoha) | Twitter

Yasuhiro Ike (@YasuhiroIke) | Twitter

昔から大会に参加している古豪ソフト。

「なのは詰め」と呼ばれる、詰みの発見の正確性に定評がある。

今回はうさぴょんの開発者とタッグを組み上位進出を目指す。

人造棋士18号

開発者Twitter

中の人はたま (@mm_Tamachan_mm) | Twitter

今回、出場ソフトの中でも要注目ソフトのひとつ。

やねうら王チルドレンでやねうら王ベースで開発されているが独自に改良している手法も多く、大会本番での戦い方には個人的にも注目している。

nozomi

開発者Twitter

saihyou (@saihyou) | Twitter

第3回将棋電王トーナメントでPONANZAを土俵際まで追い詰めた強豪ソフト。

本人はトップからだいぶ離されてしまったというが、大会での戦いぶりには注目が集まる。

やねうら王 with お多福ラボ

開発者Twitterとサイト

やねうら王 (@yaneuraou) | Twitter

やねうら王 公式サイト | コンピューター将棋 やねうら王 公式サイト

言わずと知れた、伝説のプログラマー磯崎氏が開発している超強豪ソフト。

そのプログラムはオープンソースとして公開されており、今回の出場ソフトの中でもたくさんのソフトがそのコードを利用している。

今までも意欲的な試みを続けてきてまた大会でも安定した戦績を収めているが、そろそろ無冠の帝王を返上したいところだ。

名人コブラ

開発者Twitter

名人コブラ (@meijincobra) | Twitter

やねうら王、Apery、elmoといった強豪ソフトを取り入れつつ、独自の改良を施している。

今年は予選突破に期待がかかる。

Selene

開発者ブログ

Aestetica

大会毎に、1からソフトを作り直すというコンセプトが印象に残るソフト。

時間の確保が難しく、今大会では去年のグレードアップ版での参加とのことだが、その戦いぶりには注目が集まるはずである。 

芝浦将棋Softmax

 芝浦工業大学情報工学科の学生によって開発されたソフト。

大会参加歴も長く、その安定した戦いぶりには定評がある。

HoneyWaffle

開発者Twitter

みつひこ@HoneyWaffle (@shiroi_gohanP) | Twitter

WCSC27で振り飛車党のソフトとして決勝リーグに残ったことは大きな反響となった。

今回も振り飛車を主軸として戦うとのことでその戦いぶりは要注目だ。

習甦

駒の働きに関して2駒の相対位置関係を採用するやや少数派となったソフト。

大会参加歴は長く、今回も予選突破の有力候補である。

たこっと

AVX2 命令を適用しやすいデータ構造 (非ビットボード) という手法が評判になった強豪ソフト。

WCSC27ではトラブルが発生し不本意な結果となったが、今大会では上位進出の有力ソフトとなるだろう。

SilverBullet

開発者Twitter

SilverBullet (@silverbullet_0) | Twitter

今大会ではディープラーニングを使用する。

目標達成に向けて頑張って欲しい。

大将軍

大会に参加するごとに徐々に結果を出してきている強豪ソフト。

その実力は誰もが認める存在であり、トップソフトとも互角の戦いを繰り広げることだろう。

きのあ将棋

開発のコンセプトとして「楽しんでもらう研究、ためになるアドバイスを出す研究」といった利用者目線で考えている開発者。

級位者にとってはこれほどありがたいことはないだろう。

Apery

開発者Twitter

平岡 拓也‹‹\(´・_・` )/›› (@HiraokaTakuya) | Twitter

昨年は電王トーナメントで準優勝するなど大活躍をしたが、WCSC27では苦戦を強いられた。

今回は、従来の3駒関係の手法から脱却し、新手法で優勝を目指す位置にいけるかがカギとなる。

elmo

開発者Twitter

瀧澤 誠@elmo (@mktakizawa) | Twitter

言わずとしれたWCSC27優勝ソフト。

二次予選、決勝リーグでponanzaに2連勝したその活躍は多くのメディアで賞賛された。

また、最終局がはじまってすぐにelmoをオープンソースとして公開した点も大きな反響を呼んだ。

今大会でも優勝候補筆頭として戦術面でも大きな注目が集まることは必死だ。

ArgoCorse_IcSyo

「あるごこるせいっしょ」と読む。

コンピュータ囲碁も開発しており、そこで有力な手法とされている、「モンテカルロ法」をコンピュータ将棋に取り入れているのが大きな特徴だ。

実力は未知数ながら注目したいソフトのひとつである。

Qhapaq_conflated

 開発者Twitterとブログ

Qhapaq (@Qhapaq_49) | Twitter

qhapaq’s diary

「かぱっく こんふれいてっど」と読む。

物理のプレゼン大会で入賞した経験があるという経歴の澤田氏が中心となって開発している。

矢倉は終わってないようです(河童パーク定跡)

とPR文章にあるように人間界での流行も検証するという意欲的な試みが印象に残る。

毎回大会では上位に食い込むものの、今大会ではさらなる飛躍に期待がかかる。

平成将棋合戦ぽんぽこ

開発者Twitter

nodchip@tanuki- (@nodchip) | Twitter

競技プログラミングからコンピュータ将棋に参戦した野田氏を中心として開発されているソフト。

参戦当初から上位に食い込むのはさすがであった。

今回は開発プロセスの自動化・効率化によりレート上昇が期待され、大会でも活躍が見込まれる。

W@ndre

チャンスがあれば角頭歩を指す。

とPR文章にあるように、独特な序盤戦術に注目したい。

こまあそび

基本アルゴリズムはαβ法ということで従来からあるコンピュータ将棋の手法に沿った開発方針のようだ。

shotgun

様々な検討をした結果,ライブラリ依存率がどんどん高くなるジレンマを抱えており,オリジナリティと強さの狭間で悩んでいる。

と開発者の葛藤がわかるPR文章だが、そんな中でもいろいろ工夫されているようだ。

得意の早指しが決まるかどうか。

(ぬえ)と読む。

「タヌキ」から開発者が派生したソフト。

3駒関係よりも高い表現能力をもつ評価関数の作成に意欲を燃やす。

ツツカナ

あの電王戦をわかせたソフトが久しぶりに大会に参戦。

PR文章からはあまり特徴はわからなかったが、開発歴は長くいろいろ構想はあるはずなので期待したい。

ねね将棋

Deep Learningを取り入れたソフト。

• 素人にも明らかな悪手を指さない

• 大会で1勝する

という目標達成に向けて頑張って欲しい。

メカ女子将棋

開発者Twitter

メカジョ (@mechajyo) | Twitter

女流棋士の竹部女流がチームに参加している。

非常に丁寧なPR文書が印象的である。

面白い将棋に期待したい。

Windfall

評価値を確率分布に拡張

状態数5(敗勢、劣勢、互角、優勢、勝勢)の多項分布で表現

という珍しい手法が取られている。

実力は未知数ながら意欲的な開発手法が多く、戦い方に注目したい。

CGP

開発者Twitter

wain@CGP作者 (@wain_CGP) | Twitter

高NPSの実現を目指している。

毎回大会では安定した戦績を残しており中堅的な存在である。

Novice

開発者Twitter

kuma@Novice (@naonza0) | Twitter

慶応大学の学生である熊谷氏が開発している。

毎回大会に参加しており、ソースコードも公開されている。

今大会にも注目している。

Yorkie

「ヨーキー」と読む。

KKPPT形式の手番ありの4駒関係というのが大きなポイント。

やねうら王やelmoをベースに改良しており、その強さには注目が集まる。

なお、ソースコードは大会前後に公開予定とのこと。

むっつり助兵衛

史上最弱の将棋プログラム。エンジョイ勢。

とのことで今はルール通りに指せるくらいだそうだ。

本番ではどのようになっているかに注目したい。

Girigiri

大会初参加。

目標 - 反則をしない - 1勝する

とのことで無事に一局が通せるように願っている。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

以上が全出場ソフトの紹介である。

DeepLearningの導入やオープンソースの改良など、どのソフトも意欲的な試みがなされている。

大会がとても楽しみだ。

入賞予想

1位:やねうら王 with お多福ラボ

2位:PONANZA

3位:elmo

4位:Qhapaq_conflated

5位:平成将棋合戦ぽんぽこ

その他上位入賞の有力ソフト

読み太、人造棋士18号、nozomi、Selene、HoneyWaffle、たこっと、大将軍、Apery、鵺、Yorkie

今回15ソフトを挙げさせてもらったが正直、どのソフトが優勝してもおかしくないほどの激戦が予想される。

また、大会を通して人間界でも大流行するような作戦がみられるのではないかと期待している。(WCSC27での雁木など)

今から、11月11日(土)、12日(日)の二日間を楽しみにしている。