はじめに
長年、対振り飛車において居飛車側が用いる作戦として有力視されていたのは居飛車穴熊だった。
しかし、近年振り飛車側の対抗策が改良され、いつでも居飛車穴熊に組めるわけではないことが判明してきたことや、elmo囲い急戦に代表されるように新たな居飛車側の作戦も登場してきた。
その中、2000年に藤井システム対策として編み出された「ミレニアム」が現在、再び有力視されはじめている。
ミレニアムには振り飛車側の角筋を避けながら、自陣を堅陣に囲えること。
また、玉側の桂馬を攻めに使いやすいという利点がある。
今回の記事では、floodgateの実戦例を題材としてミレニアムの理想的な戦い方を見ていきたいと思う。
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対振り飛車ミレニアムの実戦例
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/230549
開始日時:2017/10/04 06:30:01
棋戦:wdoor+floodgate-300-10F+WRC+YssCNN_F128L12_a48+20171004063001
先手:WRC
後手:YssCNN_F128L12_a48
(初手からの指し手)
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲6八玉 △4二飛(途中図)
▲9六歩 △9四歩 ▲4八銀 △7二銀▲7八玉 △3二銀 ▲5六歩 △6二玉 ▲5八金右 △5二金左 ▲3六歩 △7一玉 ▲6六角(下図)
21手目、▲6六角がミレニアムを目指す第一歩となる一手。
▲6六角以外には、持久戦にするなら▲7七角や▲5七銀、急戦にするなら▲6八銀~▲5七銀左などが有力である。
(上図からの指し手)
△4三銀 ▲7七桂 △8二玉▲8八銀 △6四歩 ▲7九金 △6三金 ▲6八金寄(途中図)
△7四歩 ▲8九玉 △7三桂 ▲7八金寄 △5四銀 ▲3七桂 △6五歩▲5七角(途中図)
△4五歩 ▲5九銀 △2二飛 ▲6八銀(下図)
ミレニアムに組むまでの手順は本譜の進行がオーソドックスなものである。
41手目▲6八銀で囲いは完成した。
ここから展開によっては▲8六歩と突く場合もあるが、本譜はここから戦いが始まった。
(上図からの指し手)
△4四角 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △同 飛 ▲同 角 △2九飛▲5七角 △1九飛成 ▲4一飛(下図)
本譜は後手が△4四角と上がったため、▲2四歩から戦いがはじまった。
△4四角に代えて、△1四歩と突いてきた場合は、▲1六歩、または▲8六歩と指しておけばよい。
後手は△8四歩と指すと▲同角と取られてしまうため、銀冠にしずらくなっている。
これも5七に角を配置するミレニアムならではの利点といえる。
本譜は、飛車交換後、互いに飛車を敵陣に打ち込み中盤戦に入った。
(上図からの指し手)
△1七角成 ▲2一飛成 △4四馬 ▲4一龍 △4三馬 ▲同 龍 △同 銀 ▲5五桂(下図)
後手は△1七角成で馬を作ったが、先手も▲2一飛成で桂馬を取り返した。
次に▲1一龍があるため、後手は△4四馬を馬を引き付けたが、▲4一龍が厳しい追撃となった。
▲4一龍に対して△4三香と受けてきた場合は、▲9五歩△同歩▲9四歩(参考図)の端攻めが絶好となる。
よって後手は△4三馬(▲1一龍ならば△2九龍から粘る)としたが、あっさりと▲同龍と取ったのが好手で、以下△同銀▲5五桂で金銀両取りが掛かった。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
△5四銀▲6三桂成 △同銀引 ▲4五桂(途中図)
△6四桂 ▲5三桂成 △7六桂 ▲4六角(途中図)
△2九龍 ▲6三成桂 △同 銀 ▲7三角成 △同 玉▲6五桂 △6二玉 ▲5三角 △5一玉 ▲4二金(投了図)
まで77手で先手の勝ち
71手目▲7三角成からは鮮やかな即詰みとなり先手の快勝となった。
ミレニアムはこのように左桂が攻めの決め手になる展開も多く、また、5七角が四方によく効く好位置となりやすい。
本局の総棋譜
まとめ
対振りミレニアムは自陣を堅陣に組めるかつ、左桂を攻めに使えることで攻守にバランスのとれた戦法である。
5七の角が好防によく効いており、序盤では後手に△8四歩を突きにくくしていること、中盤戦以降は、▲9五歩△同歩▲9四歩といった端攻めが有効になりやすい。
2018年にプロ棋戦でも流行の兆しが見られたミレニアムだが、2019年以降もその動向に注目していきたい。
参考棋譜
https://shogi.io/kifus/230560