はじめに
elmo囲い急戦は角道を止める振り飛車を中心として居飛車側は幅広く対応できるため、対振り急戦党には福音となっている戦術である。
2019年にはプロ、アマ、コンピュータ将棋を問わず数多く指されていくのではないかと予想している。
今まで当ブログではいくつかelmo囲い急戦に関した記事を投稿してきた。
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今回の記事では先手三間飛車に対する後手elmo囲い急戦の将棋を見ていきたいと思う。
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先手三間飛車対elmo囲い急戦の実戦例
動く将棋盤は以下のリンクから
棋戦:wdoor+floodgate-300-10F+Sora_Ginko+PUSH+20180526133007
先手:Sora_Ginko
後手:PUSH
(初手からの指し手)
▲6六歩△3四歩▲7六歩△8四歩▲7八飛△8五歩▲7七角△4二玉▲6八銀△6二銀▲4八玉△3二玉(途中図)
▲3八銀△5四歩▲3九玉△1四歩▲1六歩△4二銀▲6七銀△5三銀右▲2八玉△3一金(下図)
△3一金と寄って後手はelmo囲いが完成した。
先手は▲6七銀型のノーマル三間飛車+美濃囲いでオーソドックスな構えである。
(上図からの指し手)
▲5八金左 △7四歩▲5六銀 △7二飛 ▲6七金(下図)
先手は▲5八金左に代えて▲7五歩と石田流に組みにいく指し方も考えられるが以下、△6四銀▲5九角△7二金(参考図)
と進んで次に△8三金~△8四金と押さえ込みを狙う指し方が有力となる。
本譜は▲5六銀~▲6七金と指して左金で角頭をカバーした。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
△7五歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲4六歩 △7四飛 ▲4五銀 △5五歩(下図)
後手の△7五歩▲同歩△同飛に対して先手は▲4六歩と指したが、ここでは▲6五歩という手も考えられる。
以下、△7七飛成▲同桂△8九角▲6八飛△6七角成▲同飛△7六歩(参考図)
と進んで後手やや指せる。
よって本譜は△7五同飛に対して▲4六歩と指した。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲5六歩 △8六歩▲同 歩 △4四銀 ▲5五歩 △4五銀 ▲同 歩 △7三桂(下図)
後手の△5五歩は次に△3五歩~△3三桂の銀挟みを狙っている。
よって先手は銀の退路を確保するために▲5六歩と指した。
後手は一回△8六歩と突き捨てて、△4四銀と銀をぶつける。
△4四銀に対して▲3四銀と指すのは以下、△5六歩▲同金△5五銀(参考図)
と進んで後手良しとなる。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲5四歩 △同 飛 ▲8八角 △7六歩 ▲7九角 △7四飛(下図)
▲5四歩~▲8八角は振り飛車らしさを感じる軽いさばき。
▲8八角に対して△7二歩は弱気で▲7九角と引かれると次の手が難しくなる。
▲8八角には本譜の△7六歩が好手で、以下▲同飛には△5八銀(参考図)
が痛打となる。
よって本譜は△7六歩に対して▲7九角と指したが、△7四飛と進んだ局面は後手の飛車と角が先手陣によく利いており後手に不満はない展開となった。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲4六角 △5六歩 ▲3六歩 △6二金 ▲5四歩 △5七銀(下図)
先手の▲4六角に対して△5六歩が好手となった。
▲同金ならばもちろん△6七銀の飛車金両取りがある。
先手は▲3七角の余地を残すために▲3六歩と指したが、後手は一旦桂馬にヒモをつけるために△6二金と指してからやはり△5七銀と打ち込んでいった。
(上図からの指し手)
▲3七角 △3五歩 ▲5三銀 △3六歩 ▲2六角 △5四飛▲6二銀不成△5五角 ▲1八玉 △4六銀成(下図)
先手の▲3七角に対して△3五歩が先手の玉のコビンを攻める急所の一手。
▲5三銀に対しては一回△3六歩と取りこんでから△5四飛と中央に飛車を持っていくのがうまい指し方。
他の指し手として▲5三銀に対して△同銀と取ると以下▲同歩成△同金▲5四歩(参考図)
と進んで後手が少しいいが、先手にも楽しみが出てくる展開となる。
本譜は△5五角~△4六銀成が先手陣のコビンを狙う急所となり、先手陣にも次第に火がついてきた。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲5三金 △2四飛 ▲4四歩 △2二玉 ▲4二金 △同 金 ▲3五銀 △4五成銀(下図)
▲5三金には△2四飛がのちに角を取る手を見越した最善の行き場所。
▲4四歩には△2六飛~△3七歩成と攻め込む手順も考えられるが後手玉にも危険が伴う。
よってここは一旦△2二玉と一路寄っておき、戦場から遠ざかる。
▲3五銀には△4五成銀が5五の角筋を通しつつ、受けにも効いてくる味の良い一手だ。
(上図からの指し手)
▲3七歩 △2五飛 ▲5一銀不成△4一金 ▲3四銀 △2六飛 ▲同 歩 △3七歩成 ▲同 銀 △4四成銀(下図)
先手の▲3七歩は油断のならない一手で△3五成銀と指すと以下▲同角△2五飛▲2六銀(参考図)
と進むと先手優勢となって一気に形勢は逆転する。
よって▲3七歩には3五の銀を取らずに△2五飛と浮いておく。
その後▲3四銀と指させてから△2六飛と角を取り、△4四成銀と成銀を自陣に引き付けた。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲7二飛 △3二歩▲4二銀不成△同 金 ▲同飛成 △3四成銀 ▲3一金 △1三玉
(下図)
▲7二飛には△3二金打もあるが、持ち駒を温存して△3二歩と受けた。
その後、▲3一金に対して△1三玉と早逃げしたのが好手で(▲3二龍△1三玉▲3四龍の防ぎ)次第に先手の攻めが息切れしてきた。
(上図からの指し手)
▲2一金 △3七角成 ▲同 桂 △3六銀 ▲3九桂 △3七銀不成▲3八金 △2六銀成 ▲2九玉 △6四角(下図)
局面は終盤に突入し、いよいよ後手が寄せの段階に入る。
▲2一金にはバサッと△3七角成と角を切り、△3六銀が攻防に利く手堅い一手。
そして数手後、上図最終手の△6四角が龍取りと△1七桂▲同香△1九金の詰みをみた好防の決め手となり大勢は決した。
この将棋の総棋譜は以下から
まとめ
本局は先手ノーマル三間飛車に対して後手が流行の兆しのあるelmo囲い急戦を採用した。
中盤で先手は▲4五銀と中央に銀を繰り出したが、それをみて後手はその銀を狙いつつ攻撃態勢を築いていった。
elmo囲いはその他の急戦策と同様に自陣は決して固くないので、中盤以降攻めと受けのタイミングをよく考える必要がある。
また、本局のように美濃囲いのコビンを狙っていく指し方も時には有力となる。
まだまだ決して全体の割合からするとelmo囲いの実戦例は多くはないが本局を通じて戦い方のエッセンスを吸収してほしい。
参考棋譜
棋戦:wdoor+floodgate-300-10F+18gou_113+Camembert+20180116173005
先手:18gou_113
後手:Camembert
参考書籍