はじめに
第29回世界コンピュータ将棋選手権は最終局を千日手に誘導したやねうら王が優勝した。
公式サイト
http://www2.computer-shogi.org/wcsc29/
今回の記事から大会で指された棋譜を題材としてコンピュータ将棋の最先端の将棋を検討していきたい。
※今大会の棋譜集は以下からダウンロードさせていただきました。
http://www2.computer-shogi.org/kifu/kifu.html
スポンサーリンク
決勝 1回戦 名人コブラ - Kristallweizen
動く将棋盤は以下のリンクから
先手:名人コブラ
後手:Kristallweizen
序盤戦
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲7七銀 △4二銀 ▲2六歩 △3二金 ▲2五歩 △3三銀 ▲4八銀 △6二銀▲5六歩 △5四歩 ▲7八金(下図)
先手が5手目▲7七銀から矢倉を志向。
そして▲2五歩を早めに決めるのが現代矢倉では主流になっている。
対する後手も△3三銀として2筋を受けた。
(上図からの指し手)
△4四歩 ▲6九玉 △4一玉 ▲5八金 △5二金 ▲7九角 △7四歩 ▲3六歩 △3一角
▲6六歩 △4三金左(下図)
上図最終手の△4三金左が近年の矢倉戦において注目されている指し方。
ここは△4三金右も考えられるところで、すると先手が▲6七金左(参考図)と駒組みをするかもしれない。
この△4三金左・▲6七金左の構えはバランスがよく、コンピュータが好んで指している。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲3七銀 △3二玉 ▲3五歩 △同 歩 ▲同 角 △8五歩 ▲4六角(下図)
先手の▲3七銀から▲3五歩は自然な攻めの流れ。
後手は△3二玉型にして囲いは完成した。
(上図からの指し手)
△7三桂 ▲3六銀 △6四角▲同 角 △同 歩 ▲3五銀 △4二金寄(下図)
後手は先手の▲3六銀に対して△6四角として角をぶつけた。
以下▲同角△同歩▲3五銀と進み、そこで△4二金寄としたのが受けの好手。
ここで△3四歩は▲2四歩(参考図)から銀交換をして先手有利となる。
スポンサーリンク
中盤戦
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲3四歩 △2二銀 ▲4六歩 △6五歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩
▲2六飛 △3三歩(下図)
先手の▲3四歩に対して△同銀と取ると以下、▲2四歩△同歩▲3四銀△同金▲8三銀△同飛▲6一角(参考図)と進んで飛車金両取りで先手有利となる。
よって後手は△2二銀と引く。
その後、▲2六飛まで進み先手は次に▲4五歩を狙っている。
よって後手はこのタイミングで△3三歩として陣形の立て直しを図った。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲4五歩 △8六歩 ▲4四歩 △5三金寄 ▲3三歩成 △同 桂 ▲8六歩 △3四歩 ▲同 銀 △4四金(下図)
△3三歩に対して▲同歩成は以下△同銀▲3四歩△同金▲同銀△同銀▲8三金△同飛▲6一角に△3五銀(参考図)と飛車と当てつつ銀を逃げることができるので後手優勢。
よって本譜は▲4五歩。
以下△8六歩▲4四歩と進み、そこで△8七歩成はやり過ぎで、以下▲4三歩成△同金▲8三歩△同飛▲4四歩(参考図)と進み先手勝ち筋。
後手は△5三金寄と辛抱した。形勢的には互角で推移している。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲4三歩 △5二金 ▲3五歩 △同 金 ▲2三銀不成△同 銀 ▲4一角 △同 玉 ▲2三飛成 △3二銀 ▲2二龍 △1四角(下図)
先手は手順に攻め込んでいくが形勢は難しい。
後手の△3二銀~△1四角が粘り強い受けで△1四角は先手玉にも効いてくる攻防の角だ。
(上図からの指し手)
▲1一龍 △2一歩 ▲2二歩 △4三銀 ▲2一歩成 △4二玉 ▲3六歩 △同 角 ▲3九香(下図)
先手は攻め込んではいるが自陣も薄いので反撃を警戒しつつの攻めとなる。
▲2一歩成△4二玉の局面では▲1三龍(参考図)も有力。
ただ、△5八角成から攻められるのも相当な迫力なので難解な形勢である。
本譜は▲3六歩△同角▲3九香として角金を田楽刺しにした。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
△3七歩 ▲同 香 △5八角成▲同 玉 △3六歩 ▲3一角 △5一玉 ▲1三角成 △4五金 ▲6九玉 △6六歩(下図)
後手は△3七歩▲同香としてから角を切る。
その後、△3六歩の局面は先手にとっても岐路となる局面で、ここは▲3四歩(参考図)が有力だった。
参考図以下、①△同金には▲3六香、②△同銀には▲2二龍でともに先手がややリードしていたかもしれない。
本譜は▲3一角~▲1三角成としたが△4五金が好手で、後手は容易に土俵を割らない。
スポンサーリンク
終盤戦
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲3一と △6一玉 ▲3二と △7二玉▲9一龍 △8一金 ▲9三龍 △5六金 ▲6八歩 △3二銀(下図)
▲3一とは次に▲3二とからの詰めろとなっている。
よって後手は△6一玉から早逃げをした。
△7二玉まで逃げて後手陣もある程度は耐久性のある形。
△3二銀としてと金を払って形勢は依然として難しい。
(上図からの指し手)
▲3六香 △9二金 ▲9六龍 △8八歩 ▲5八歩 △8九歩成▲3三香成 △同 銀 ▲8四桂 △同 飛 ▲9二龍 △8二歩(下図)
▲3六香 △9二金 ▲9六龍 △8八歩と進んだ局面で▲5八歩が弱気な一手で疑問手となった。
▲5八歩では▲同金(参考図)として勝負するべきだった。
本譜は▲5八歩だったので△8九歩成で先手陣にも火が付き始めた。
先手は▲3三香成から▲8四桂で攻めるが、△8二歩と受けられてみると形勢は後手優勢である。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲5七香 △4七金 ▲4八歩 △同 金 ▲4九歩 △同 金▲2三馬 △7一香(下図)
先手の▲5七香には△4七金が好手で、以下は先手陣は挟撃形で受けが難しくなっている。
▲2三馬に△7一香は先受けの一手で、以下▲3三馬には△4七桂(参考図)で後手一手勝ちとなる。
以下は後手が勝ち切った。
この将棋の総棋譜は以下から
スポンサーリンク
本局の総括
矢倉の将棋で序盤は先手もうまく攻めていたが、中盤以降は後手も容易に崩れないしぶとい受けを連発した。
△8八歩に対する▲5八歩が疑問手で、以下は後手が挟撃形を築いて優勢となった。