矢倉の対する左美濃急戦が流行り出したのは今年に入ってからだが、プロ間でもそこそこの対局数を数えることになり、先手側の対策もある程度確立されてきているのを感じる。
その対策はわかりやすく言うと、居玉+▲4六角型である。
後手の形にもよるがほとんどの形でこれは応用が利く。
まず居玉であることのメリットは
・6~7筋に玉がいかないことで戦場(6~8筋)から遠のく。
・玉を寄る手を省略して早めにけん制する形を作れる。
といったことが挙げられる。
さらに▲4六角型であるメリットは
・2筋の歩を交換し、1歩を持ちながらスムーズに▲4六に配置できる。
・間接的に相手の飛車に狙いをつけ、駒組みをけん制できる。
といったことが挙げられる。
この対策は非常に優秀で現在、プロ間でも猛威を振るっている。
参考棋譜①
2016/10/7 第58期王位戦予選
石井-石田
(初手からの指し手)
▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △8四歩 ▲6八銀 △6二銀 ▲5六歩 △8五歩 ▲7七銀 △6四歩 ▲7八金 △4二玉 ▲2六歩 △3二銀 ▲2五歩
△6三銀 ▲5八金 △3一玉 ▲6七金右 △5二金右 ▲4八銀 △7四歩 ▲7九角 △7三桂 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 角 △2三歩 ▲4六角(下図)
参考棋譜②
2016/11/7 第66期王将戦挑戦者決定リーグ戦
近藤誠-豊島
(初手からの指し手)
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲5六歩 △8五歩 ▲7七銀 △6四歩 ▲7八金 △6三銀 ▲5八金 △3二銀 ▲2六歩 △4二玉 ▲2五歩 △3一玉 ▲6七金右 △7四歩 ▲7九角 △7三桂 ▲4八銀 △6五歩 ▲同 歩 △同 桂 ▲6六銀 △6四銀 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 角 △2三歩 ▲4六角(下図)
参考棋譜③
2016/11/11 第65期王座戦一次予選
金井-梶浦
(初手からの指し手)
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲5六歩 △8五歩 ▲7七銀 △6四歩 ▲7八金 △6三銀 ▲5八金 △3二銀 ▲2六歩 △4二玉 ▲2五歩 △3一玉 ▲6七金右 △7四歩 ▲7九角 △7三桂 ▲4八銀 △6二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 角 △2三歩 ▲4六角(下図)
ここでは直近の連盟モバイル中継で指された対矢倉左美濃急戦の将棋を3つ紹介した。
後手の形は微妙にそれぞれ違っているが先手の指し方は居玉+▲4六角型で一貫している。応用性が高いのもこの対策が人気の理由だろう。
現状ではプロ間での左美濃急戦側の勝率は5分5分ではあるものの、中盤までの分かれでは先手が有利になった将棋が多く、全体的に苦戦をしている感は否めない。
最近では5手目▲6六歩と指す将棋も復活傾向にあり、先手が左美濃急戦を誘っている感すらある。なんとかして左美濃側も今の現状を打破する手段を編み出したいところだ。
次回からは左美濃急戦側の工夫を紹介していきたい。