はじめに
4月上旬に私の元に、ある一通のメールが届いた。
それは将棋アプリ「千里の棋譜」を制作している宮下さんからであった。
(前略)千里の棋譜の物語作成上で条件に合った棋譜を探しており、そこで特にコンピュータ将棋の棋譜に詳しいsuimonさんにアドバイスをいただけないかと思った次第です。(以下略)
その条件に見合った棋譜ならfloodgateの棋譜で、いくつか提示できると思います。
アプリの「完結編」で物語の名人VS最強AIの対局での棋譜に関してアドバイスが欲しいという趣旨で、私のブログを見てメールを送ってくださったのだった。
その時「おもしろい内容だな」と感じたので二つ返事で制作に協力したい旨を宮下さんに伝えた。
そこから「名人VS最強AIの対局」を巡るやりとりが始まっていった。
将棋ミステリー「千里の棋譜」とは?
↓公式サイトより
千里の棋譜 【将棋ミステリー/アドベンチャーゲーム】 Android/iOSアプリ
概要
将棋(将棋棋士・将棋界)を主題、舞台にしたミステリ要素のあるアドベンチャーゲームです。
将棋の普及を目的として、将棋を知らない層でも自然に遊んで、将棋に興味を持ってもらうものとする一方で、将棋の強い人ならばより楽しめる仕掛けを施します。
また、棋界をリアルに描写し、将棋関係者の方々がプレーしても面白いと思うものを目指します。
その他、物語のあらすじや登場人物については
http://www.child-dream.net/shogi/plan.htm
に詳しく記載されている。
プレイ画面はこんな感じ
名人VS最強AIの対局「神域の一局」の選別
宮下さんからメールをいただいたことで、制作への協力がはじまった。
※ここから先は若干の物語のネタバレがあります。
もし見たくないという方は実際にプレイしてからの閲覧をおすすめします。
↓以下からダウンロードして下さい。
http://www.fgfan7.com/entry/2017/05/27/105043#最後に
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宮下さんから提示された棋譜の条件は以下のものだった。
・後手が勝利する棋譜
・先手、後手ともに悪手がほぼ無いように見える
・乱戦ではなく、美しく斬りあった末に一手違いで後手が勝利する流れ。
手数はやや短めのイメージ。
・将棋初心者の方も見ることを念頭に置き、形が分かりやすい角換わりの棋譜がベター。
このように指定された条件から棋譜を選別するという作業は面白いと感じた。
よって休みの日に集中して選別作業に取り掛かることにした。
floodgateの棋譜を調べる
某日、まとまった時間ができたので早速、選別作業に取り掛かることにした。
私は最初に宮下さんからこのお話をいただいた時から、選別する際の対局者をすでに決めていた。
それは「ponanzaとNineDayFeverの将棋にしよう」ということであった。
この両者の対局は今までたくさん見てきたし、内容的にも優れたものが多かったので根気よく調べればきっと条件に合致する棋譜が見つかると思ったからだ。
また、今まで膨大な量の棋譜が生成されてきたfloodgateの棋譜から一局を選び出すのには、はじめから対局者は固定してしまったほうがいいと考えた。
まず、角換わりの部分的な局面図を作り、対局者をponanzaとNineDayFeverに条件を設定して検索してみた。
すると483局がヒットしたのでそこから選別していくことにした。
まず提示された条件にもとづいて棋譜を除外していった。
明らかに中盤で形勢が離れてしまったような将棋はストーリー性も考えて除外。
また、一手違いという条件もあったため、候補局はどんどん絞っていった。
そうして残ったのが次の2局だった。
候補局1
ponanza-990XEE vs. NineDayFever_XeonE5-2690_16c (2013-05-31 16:30)
候補局2
ponanza-990XEE vs. NineDayFever_XeonE5-2690_16c (2014-05-11 04:30)
そしてこの2局を比較した結果、最終的に候補局1で物語を制作することを決定した。
決め手となったのは、
・手数が短いこと
・ストーリー性がある将棋の内容にピッタリ
という点であった。
実はこの「名人VS最強AIの対局」に関しては最初は部分図のみ(4~6局面)のみ使用の予定だったが、宮下さんがこの将棋を大変気に入ってくださったことにより全棋譜を使うことに変更。
その後は、指し手の意味合いや序盤の構想などについて何度もやり取りして、物語の核となる部分を煮詰めていった。
私が伝えられることをすべて伝えた後は、宮下さんに演出を一任。
私自身、この将棋からどのようなストーリーになるのか本当に楽しみだった。
演出も含めて神域の一局!!
半月ほどして、宮下さんから確認版が私の元に送られてきた。
さっそく時間があるときにプレーしてみた。
プレーしてみて感じたことは、題材となったのはソフト同士の棋譜ながら演出の効果によって素晴らしいストーリー性が生まれることになったことだ。
自分が制作に協力したものがこうして作品となっているのを見ると、とても嬉しかったし、また今までこうしてTwitterやブログで活動を続けてきてよかったなと思えた。
最後に
現在はiOS版、Android版の両方が完結編までリリースされ、すでにレビューでもたくさんの好評価がなされている。
これは宮下さんをはじめとしたChild-Dream制作陣の今までの実績や信頼もあり、また将棋の魅力を幅広い層に伝えることができた結果なのだと思う。
将棋を指せない人から本格的に将棋を趣味にしている人にまで楽しめる本アプリ、是非多くの方にプレイしていただきたいと思う。
ダウンロードは以下から。
(I 序盤・II 中盤 iOS版)
(完結編 iOS版)
(I 序盤 Android版)
(II 中盤 Android版)
(完結編 Android版)