はじめに
いよいよ第2期電王戦が4/1から始まる。
denou.jp2番勝負の第1局はPONANZAの先手番である。
PONANZAは先手番においては初手▲6六歩や▲6八銀といった手を指すこともあるため戦型の予想が難しい。
それに対する佐藤天名人の出方次第ではあるが、相居飛車の力戦形になるかもしれない。
今回の記事では2番勝負の第2局にあたる、PONANZAの後手番での戦い方についてみていきたいと思う。
飛車先を切らすという戦い方
現代将棋において後手番は苦労が多いと言われている。
糸谷棋士が執筆した
の第一章に後手の戦法の比較検討が載っているが、居飛車で戦っても振り飛車で戦ってもどうしても後手番は辛くなりやすいという見解になっている。
そこでponanzaの後手番での戦い方についてみていくが、それは今まではあまり主流になっていない指し方である。
見出しにも書いた通り、飛車先を切らすという戦い方である。
アマチュア強豪の鈴木英春さんが考案した英春流に近い発想である。
鈴木英春さんはよく「飛先交換は3つの損あり。手損、位の放棄、楽観」と戒めておられました
— math26 (@math26) 2015年3月21日
ケース1
第3回将棋電王トーナメント 予選リーグ
大将軍ーponanza
(初手からの指し手)
▲7六歩 △6二銀 ▲2六歩 △3二金 ▲2五歩 △8四歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲2六飛 △8五歩(下図)
上図のように序盤早々に飛車先の歩を交換させている。
このような指し方は糸谷棋士の著書にも載っていない。
「一手遅れているのならその分、飛車先の歩を切らせてもいいから早く攻撃態勢を築こう」ということかもしれない。
(上図からの指し手)
▲7八金 △8六歩 ▲同 歩△同 飛 ▲8七歩 △8二飛 ▲4八銀 △3四歩 ▲6九玉 △9四歩 ▲3六歩 △7四歩 ▲3七銀 △7三銀 ▲4六銀 △1四歩 ▲4五銀 △3三金
▲5八金 △2四歩 ▲3七桂 △2三金(下図)
本譜は先手も飛車先の歩を切らす展開となった。仮に▲7七角と飛車先の歩の交換を防いだなら△7四歩~△7三銀と早繰り銀にする構想が有力である。
本局の先手は早々と銀を繰り出していったが、ponanzaの△3三金~△2四歩~△2三金が老獪な指し回しで先手は攻めあぐねた格好となった。
ケース2
第3回将棋電王トーナメント 予選リーグ
習甦ーponanza
(初手からの指し手)
▲2六歩 △3二金 ▲7六歩 △7二銀 ▲2五歩 △8四歩 ▲7八銀 △3四歩 ▲7七銀 △7四歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8五歩(下図)
この将棋は先手が飛車先の歩の交換を防いだ。
それに対してはponanzaも△8五歩と伸ばして急戦含みである。
(上図からの指し手)
▲7八金△7三銀 ▲1六歩 △4一玉 ▲3八銀 △6四銀 ▲6六歩 △5二金 ▲9六歩 △4二銀 ▲3四飛 △7五歩 ▲同 歩 △4四角(下図)
自陣はカニ囲いでコンパクトにまとめ、早繰り銀で攻撃態勢を見せる。
飛車先の歩を切らしているので持久戦よりも急戦のほうが適しているとみているのだろう。
(上図からの指し手)
▲9七角 △8四飛▲2四飛 △2三歩 ▲4四飛 △同 歩 ▲7四歩 △9四歩 ▲6一角 △9五歩 ▲7二角成 △9六歩 ▲6四角 △同 歩 ▲7五銀 △7一歩(下図)
先手も居玉のままなんとか手を作ろうとするが、上図最終手の△7一歩が好手となった。▲同馬なら△4五角が急所の一撃となる。
ケース3
saya-1c_0.1.11 vs. ponanza-990XEE (2015-11-19 13:00)
(初手からの指し手)
▲2六歩 △8四歩 ▲7六歩 △7二銀 ▲7八金 △7四歩 ▲2五歩 △3二金 ▲6六歩 △8五歩 ▲6八銀 △4一玉 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛△2三歩 ▲7四飛 △8六歩 ▲同 歩 △7三銀 ▲7五飛 △8六飛(下図)
△7四歩を取らせる指し方はponanzaが多用する。
参考記事
www.fgfan7.com本局は先手が飛車先の歩交換を受けなかったため、後手も切る展開となった。
(上図からの指し手)
▲7七桂 △3四歩 ▲4八玉 △4二銀 ▲3八銀 △3一玉 ▲8五飛 △同 飛
▲同 桂 △8二銀 ▲3九玉 △1四歩 ▲8三歩 △7一銀 ▲6七銀 △4四角 ▲9六歩 △8四歩 ▲7三桂成 △同 桂 ▲8一飛 △6五桂(下図)
本譜は先手が▲8五飛とぶつけて勝負したものの、上図最終手の△6五桂が見事な切り返しとなった。以下、▲同歩と取ると、△8八角成▲同金△2七桂▲同銀△4五角という攻めが決まる。
まとめ
今回はponanzaの後手番における飛車先の歩を切らす指し方の将棋を3局みてきた。
ponanzaのこの指し方以外での後手番戦術では横歩取りが多い。
現在のponanzaの後手番相居飛車戦略では①飛車先切らせ②横歩取り
を有力視しているとみて間違いないだろう。
後手番は苦労が絶えないが、新たな発想の指し方を取り入れていくと視界が開けるかもしれない。