はじめに
昨日、Ponanza開発者、山本一成さんのひとつのツイートが大きな反響を呼んだ。
今年の世界コンピュータ将棋選手権のPonanzaはたぶんめちゃめちゃ強いことになる。過去現在、そして下手したら今後数年の未来までも含めて史上最強の将棋プログラムになるかもしれない。
— 山本一成@Ponanza電王 (@issei_y) 2017年3月29日
コンピュータ将棋はこれまでにも様々な技術的なブレイクスルーがあり進歩し続けてきた。
yaneuraou.yaneu.comポイド 2016年7月22日 10:09 より:
本記事は今年のコンピュータ将棋のトレンドみたいな感じがするんですが、ここ数年の伸びの理由とかも含まれているんですか?
返信 ↓やねうらお
2016年7月22日 10:35 より:
Ponanzaチームだけ本記事の内容を1,2年早くやってますね。それ以外の上位チームは、ほとんどがNDF・AWAKEの次元下げをやって(いま振り返って考えるに)無駄足でした…。
この記事、コメント欄の書き込みからもわかるように、その中でもPonanzaは新しい技術を取り入れるのがいつも早かったのである。
今回はそんなPonanzaの現状の強さを改めて分析し、なぜ最強ソフトなのかを考えていきたいと思う。
ひと足先に取り入れた新戦術
ponanza-990XEE vs. Gekisashi_X5590_1c (2013-03-26 07:30)
現在、プロ棋戦で猛威を振るう角換わり腰掛け銀▲4八金・2九飛型。
その形は古来から指されていたものの主流には至らなかった。
そんな中、floodgateでは2013年頃からPonanzaを中心にこの▲4八金・2九飛型
が指され始めていたのである。
↑ 2013年3月26日にfloodgateで指された将棋。
その他の戦型では、対振り飛車の銀冠穴熊もPonanzaがいち早く取り入れていた。
Ponanza開発者の山本さんは2014年8月頃から、Ponanza自身が作り出した定跡を生成しはじめていた。その影響はすぐに序盤戦術に現れることになる。
そろそろPonanza自身が自分の探索結果だけから定跡を作成してもいい時期になっている気がする。
— 山本一成@Ponanza電王 (@issei_y) 2014年8月5日
ここ数日、Ponanzaで定跡をがんばって作ろうとしてわかったってきたこと
— 山本一成@Ponanza電王 (@issei_y) 2014年8月12日
Ponanzaとしては先後双方がそれなにり最善を尽くすと以下のような定跡になるのが正しいそうだ・・
1. 角換わり
2. 矢倉力戦
ponanza-990XEE vs. ZAKO (2014-10-09 19:00)
↑ 対振り飛車の銀冠穴熊。のちに人間界でもプロ公式戦で指されるようになる。
Test vs. ponanza-990XEE (2014-10-09 03:00)
↑ 当時は異彩に写った2手目△3二金。飛車先を切らしても戦えることを証明した。
Ponanza定跡作成
— 山本一成@Ponanza電王 (@issei_y) 2014年8月12日
▲26歩に対しては△84歩か△32金とのこと。
△32金ってなんだよと思ったが相掛かり志向なら別に悪手じゃないか・・
ponanza-990XEE vs. AWAKE_i7_2620M_2c (2014-10-09 21:00)
↑ 角換わりにおいて下火になっていた早繰り銀。
この▲5六角とのセットでコンピュータ将棋界で指されるようになる。
優れた局面評価
ケース1
2016年10月8日(土)~10日(月・祝)
第4回将棋電王トーナメント 決勝三番勝負③
ponanza3-ukamuse3
上図の局面はまだまだ優劣がつく局面とは考えにくいが、この局面でのponanzaの評価値は先手+302ですでに自身がやや有利と見ていた。
対する浮かむ瀬は1手前、△5五角の時での評価値は先手+77と互角だと判断していた。
結果的には、この将棋の互いの形勢判断の折れ線グラフは以下のようであった。
黒がponanzaで白が浮かむ瀬の評価値グラフ。
黒のponanzaの評価値が早々と先手有利を示し、その後白の浮かむ瀬もその判断が正しかったことを認める結果となった。
ケース2
2016年10月8日(土)~10日(月・祝)
第4回将棋電王トーナメント 予選round8
真やねうら王‐ponanza
上図は真やねうら王が▲4二飛と打ち、詰めろをかけた局面。
この局面で真やねうら王は評価値を先手+776と優勢だとみていた。
対するponanzaは次に△5二角と受けて先手+141と互角と判断していた。
結果的には、この将棋の互いの形勢判断の折れ線グラフは以下のようであった。
黒が真やねうら王で白がponanzaの評価値グラフ。
先手有利と判断していた真やねうら王も次第に評価値を下げていった。
本局の場合でもponanzaの形勢判断が終始正しかったという結果になった。
この2つのケースを見てもわかるようにponanzaは他の上位ソフトと比べても形勢判断が正確なのである。
まとめ
今回は昨日の山本さんのツイートを契機としてPonanzaがなぜ最強ソフトなのかというテーマで記事を書いてきた。
私なりの分析では、
・他のソフトよりも新しい開発技術を取り入れるのが早い
・新戦術をPonanza自身が作り出していった
・形勢判断に優れている
という3つの点だと感じた。
次の世界コンピュータ将棋選手権ではPonanzaはどのような将棋を見せてくれるのだろうか。
今から非常に楽しみである。