はじめに
第1期電王戦二番勝負第2局はponanzaが勝利し、ponanzaの2連勝で終了した。
本局の全体を振り返ってみる。
5手目の▲6八銀がまず意表を突かれた。感想戦では「変則的な相掛かりにしたかった。」と山﨑叡王は述べられていた。
以下
△3二金 ▲7七銀 △3四歩 ▲4八銀 △4一玉 ▲5六歩(下図)
と進んだ。
この▲5六歩が作戦負けの要因になった可能性があるという。
代えて▲2六歩から飛車先の歩を伸ばしていく手順で一局。
進んで下図。
山﨑叡王はこの△6五歩で作戦負けになってしまったと感じたようだ。この局面の類似局面は将棋ウォーズでも指されており、
将棋ウォーズ棋譜(2015tanadai三段対2016Pona九段)
確かに後手の居角が効いてきている。
そして進んで下図
ここで△5四歩というのがソフトらしい一手。藤井九段いわく、図々しい一手。
ここで山﨑叡王は▲5四同歩を考えたが、以下△8八角成▲同金△6三金▲5五銀△5三歩の変化に自信が持てずに見送った。しかし対局中に後で▲5四同歩の一手だったと後悔したようだ。
進んで下図。
ここも本譜は▲同銀引だったが、▲2二角成から踏み込む順も考えられた。
本譜は▲同銀引 △8八角成 ▲同 金 △6三金 ▲5五歩 △3一玉(下図)
と進んだ。
本局で私が最も感心したponanzaの指し手が△6三金から△3一玉の構想だった。
このような漠然とした局面でじっと金を上がり、玉を寄せることで格段に陣形が安定した。このような指し手を見習っていきたいと思った。
その次の一手、封じ手の▲4九玉には驚かされた。
以下ponanzaのペースで将棋は進んだ。局面は進んで下図。
この70手目の△1三同玉は波紋を呼んだ。人間感覚ではいかにも危なっかしい。
なかなか指せる人はいないだろう。
ここで本譜は▲6五歩だったが、ponanza開発者の山本さんは単に▲1五香と走られるのを恐れていた。以下予想される手順は△1四歩▲同香△同玉に▲6五歩や▲2二歩と打つ変化。千田五段のツイートでは
https://twitter.com/mizumon_/status/734304471845474304
との事でこの局面は山﨑叡王にとって最後のチャンスだった可能性がある。
本譜の▲6五歩からnozomiの評価値が-1000を超え始めた。
以下進んで下図。
山﨑叡王はこの△7九角を見て、はっきり苦しくなったと感じたそうだ。
以下はponanzaの正確な寄せを見るばかりとなった。
投了図
まとめ
本局を振り返ってみると、ponanzaが先手矢倉に対して、急戦志向であることは事前の棋譜からわかっていたが、私はもっと激しく攻めてくるものだと思っていた。
しかし中盤の△6三金から△3一玉という腰を落として確実に+になる指し手を見てコンピュータ将棋(ponanza)の奥を深さを思い知らされた。
矢倉の歴史に残る手順と言えるかもしれない。
その後の記者会見では第二期叡王戦に羽生現名人の参加も発表された。
また来年の電王戦で歴史的な戦いが見れることを期待したい。