・流行戦法の条件には
①玉が堅い②攻撃力がある③誰にでも指せる④勝率が高い⑤誘導しやすい
といった複数の要素が必要となる。どれか一つでも欠けるとなかなか流行には至らないし、次第に廃れていく。今大流行をしている矢倉に対する左美濃急戦はこの5つの要素を満たしているといえよう。
まず、この戦法の基本図ともいえる図の局面を見てみよう。
まず①玉が堅いだが、従来の急戦矢倉に比べて玉型が飛車打ちに強い形になっている。
②攻撃力があるは飛車を切り飛ばす攻めが成立しやすい為、思い切った攻めが可能だ。
③誰にでも指せる、これは高段者の間でこの戦法が爆発的に流行ったことからもわかるように一定の棋力さえあれば初見でも取り入れやすいことの表れだ。少なくとも横歩取りよりは指しこなしやすいはずだ。
④勝率が高い、これは現在プロ棋戦でも左美濃急戦側の勝率が高いことが証明している。
⑤誘導しやすい、これは実はこの戦法はそこまで誘導しやすいわけではないのだが、矢倉という居飛車の最大の戦法における対策ということで関心度が高いことは間違いない。
といった全ての流行戦法に至る要素を満たしているのでこの戦法は大ブームを巻き起こしている。この流行は必然の流れだったのかもしれない。
矢倉は激動の時代だ。戦法の根幹を揺るがしかねない戦法の出現。
5手目▲6六歩からの矢倉は無くなってしまうのか。いや、もっと事態は深刻で矢倉という戦法そのものが一部の特殊な状況のみで成立する戦法となってしまうのかもしれない。コンピュータ将棋の隆盛がこうやって現代将棋の基本理念を塗り替えていく。
千田五段のようにコンピュータ将棋を活かして研究している棋士が上に上がっていく時代なのかもしれない。