はじめに
角道を止めた四間飛車はその洗練された駒組みと手順のわかりやすさ、そして捌きの醍醐味もありアマチュアに大変人気のある戦法である。
対する居飛車側の作戦は多岐にわたり、どの作戦もそれなりに有力である。
今回は四間飛車への作戦として根強い人気がある「天守閣美濃」に対しての振り飛車側からの面白い構想を紹介していきたい。
実戦例
↓動く再生盤はこちらのリンクから
https://shogi.io/kifus/73567
(初手からの指し手)
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △4四歩 ▲4八銀 △3二銀 ▲6八玉 △4二飛 ▲7八玉 △7二銀 ▲5六歩 △5二金左 ▲5八金右 △6二玉 ▲9六歩 △9四歩 ▲8六歩 △7四歩(下図)
本局の序盤は藤井システムも意識した駒組み。
▲8六歩と天守閣美濃を目指したところで△7四歩が趣向の一手。
△6二玉型で待機するのがポイントだ。
(上図からの指し手)
▲8七玉 △6四歩 ▲7八銀 △8四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲3六歩 △7三桂 ▲5七銀 △6三金 ▲3八飛 △4一飛(下図)
先手はオーソドックスな手順で天守閣美濃に組み上げたが、後手は△6二玉型で駒組みを続けて何やら狙っている雰囲気。
そして先手の▲3八飛に対して△4一飛となおも△6二玉型を保持する。
その狙いはいかに?
(上図からの指し手)
▲3五歩 △同 歩 ▲同 飛 △5二金 ▲6六歩 △8一飛(下図)
いよいよ後手の構想が明らかになってきた。
先手の3筋の歩交換に対して△5二金~△8一飛が狙いだった。
天守閣美濃の弱点である8筋の玉頭をめがけての攻めを見せている。
(上図からの指し手)
▲6七金 △3四歩 ▲3六飛 △4三銀 ▲7九角 △4五歩(下図)
後手の陣形は金銀が入れ替わった右玉のような構えだが、思いのほかしっかりしている。
※8/7追記
※本局の指し方はソフト流とは呼べません。
古くから指し継がれてきた形に試行錯誤でシステムが形成されていった人間の叡智が詰まった構想です。
人間が考えだした形をソフトもこのような指し方に対して評価が高いということです。
▲6七金では▲7七桂も考えられるが、以下△4三銀 ▲3四歩 △4二角 ▲7九角 △5四歩 ▲6八角 △4五歩 ▲3八飛 △8五歩 ▲同 歩 △8六歩 ▲同 玉 △6五歩(参考図)
と進んで後手有利。(先手 -110)
この展開は天守閣美濃に組んだのを完全に逆用された格好だ。
本譜も後手の駒が前に進んできて後手好調である。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲7七桂 △5四歩 ▲6八角 △6五歩 ▲3七桂 △4四角 ▲4五桂 △6六歩 ▲同 銀 △6五歩 ▲同 桂 △同 桂(下図)
後手も駒組みが整ってきたので、いよいよ先手陣に攻めかかる。
6~8筋の徹底攻略を目指す。
先手も右桂を使ってなんとか攻めの形を作ろうとするが、上図の局面はいわゆる「攻めている箇所が違う」といったところだ。
形勢は後手有利となった。(先手 -550)
(上図からの指し手)
▲4六角 △8五歩 ▲同 歩 △7三銀 ▲5五歩 △6四金 ▲2四歩 △5五歩 ▲2三歩成 △5四桂(下図)
後手は金銀を前に繰り出して押さえ込みの方針。
△6四金は力強い一手だ。
先手の▲2四歩はいかにも苦しく攻めている箇所が違うが、もう仕方のないくらい形勢は離れている。
上図最終手の△5四桂が勝利を確定付けた一手。
以下も、危なげなく後手が寄せ切った。
※その後の指し手を見たい方は以下から鑑賞してください。
まとめ
振り飛車の構想もまだまだたくさんの可能性がある。
端歩を突き越してからの△3二金型の力戦四間飛車も指されているし、雁木模様からの振り飛車も有力である。
今後も振り飛車は進化を続けていくだろう。