はじめに
ツツカナというコンピュータ将棋ソフトは人間らしい指し手や中終盤の粘り強さ、作者の一丸さんの人柄が印象に残るソフトだ。最近はあまり大会に出てこなくなったが、復活を期待している。
さてそんなツツカナだが、私がツツカナ将棋で真っ先にその特色を挙げるとすれば、矢倉△4五歩反発型の将棋である。後手番でツツカナがこの指し方をよく指している印象があった。
今回はツツカナの矢倉△4五歩反発型についてみていきたいと思う。
2013年の実戦例
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/231392
開始日時:2013/03/20 13:00:01
棋戦:wdoor+floodgate-900-0+BlunderXX_Q6700_2c+tsutsukana_1303p2+20130320130003
先手:Blunder
後手:tsutsukana
(初手からの指し手)
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲5六歩 △5四歩 ▲4八銀 △4二銀 ▲5八金右 △3二金 ▲7八金 △4一玉 ▲6九玉(途中図)
△5二金 ▲7七銀 △3三銀 ▲7九角 △3一角 ▲3六歩 △4四歩 ▲6七金右 △7四歩 ▲3七銀 △6四角 ▲6八角 △4三金右 ▲7九玉 △3一玉(途中図)
▲8八玉 △9四歩 ▲1六歩 △9五歩 ▲1五歩 △7三桂 ▲4六銀 △4五歩(下図)
先手が▲4六銀と出た瞬間に△4五歩と突くのが矢倉△4五歩反発型の骨子となる。
後手の△7三桂が早いようだがこれには狙いがあった。
(上図からの指し手)
▲3七銀 △8五桂 ▲8六銀 △5三銀 ▲6五歩 △7三角 ▲7五歩
△同 歩 ▲同 銀 △2二玉 (途中図)
▲7四歩 △5一角 ▲8六歩 △9七桂成 ▲同 玉 △8五歩 ▲8七玉 △8六歩 ▲同 角 △6二銀 ▲7六金 △7三歩(下図)
後手は△8五桂~△9七桂成と端に桂を成り捨てた。
こうして端に傷を作っておき、桂損ながら細かい攻めを繋いでいこうという方針だ。
上図の局面でツツカナは -155と少し後手が有利と見ていた。確かにこの局面になると先手をもって後手の攻めを受けきるのは容易でない感じがする。
この将棋の総棋譜は以下から
この形の他の参考棋譜
https://shogi.io/kifus/231402
開始日時:2013/06/27 20:00:00
棋戦:wdoor+floodgate-900-0+Momoiro_Clover_Z+tsutsukana_1303p3+20130627200001
先手:Momoiro_Clover_Z
後手:tsutsukana_1303p3
次の対局を見てみよう。
実戦例その2
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/231406
開始日時:2013/03/27 03:30:03
棋戦:wdoor+floodgate-900-0+kato2+tsutsukana_1303p3+20130327033005
先手:kato2
後手:tsutsukana_1303p3
(上図からの指し手)
▲3七銀 △5三銀 ▲4八飛 △9四歩 ▲9六歩 △7三角 ▲4六歩 △同 歩 ▲同 角 △6四歩(下図)
△6四歩と角筋を止めるのはやや消極的にもみえるが、じっくりした展開に持っていこうとした。こういう展開もツツカナは得意としている。
(上図からの指し手)
▲7五歩 △同 歩 ▲7四歩 △5一角 ▲3五歩 △同 歩 ▲同 角 △4四歩 ▲8六銀
(途中図)
△9五歩 ▲同 歩 △9六歩 ▲7五銀 △9五香 ▲9八歩 △9二飛(下図)
前回の将棋と同様▲7五歩から角が追われる展開となったが、ツツカナはこの筋は大したことがないとみているようだ。△9五歩から端を詰めて、ポイントを稼いだ上図でツツカナは-136と評価し、少し後手有利とみた。
ここら辺の中盤の大局観は非常に優れているように感じる。
この将棋の総棋譜は以下から
この形の他の参考棋譜
https://shogi.io/kifus/231424
開始日時:2013/03/28 23:30:03
棋戦:wdoor+floodgate-900-0+kato2+tsutsukana_1303p3+20130328233003
先手:kato2
後手:tsutsukana_1303p3
さらに次の対局を見てみよう。
実戦例その3
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/231433
開始日時:2013/10/20 21:30:00
棋戦:wdoor+floodgate-900-0+Titanda_L+ttkn_eval110528_2630QM+20131020213000
先手:Titanda_L
後手:ttkn_eval110528_2630QM
(上図からの指し手)
▲3七銀 △5三銀 ▲4八飛 △9四歩 ▲1六歩 △9五歩 ▲1五歩 △9三桂 ▲4六歩 △同 歩 ▲同 角 △8五桂(途中図)
▲8六銀 △4四歩 ▲6八角 △9七桂成 ▲同 銀 △8五歩
(下図)
△8五桂~△9七桂成と端に桂馬を成り捨てて先手陣を弱体化させた。
南流とも呼ばれる指し方だ。コンピュータ将棋ソフトもこの筋を指すソフトは多い。
(上図からの指し手)
▲7九玉 △9六歩 ▲8八銀 △8六歩 ▲同 歩 △同 角 ▲同 角 △同 飛
▲9八歩 △8二飛(途中図)
▲7三角 △8一飛 ▲7七銀 △8六歩 ▲8二歩 △7一飛 ▲8四角成 △6四歩 ▲8八玉 △9三角 (下図)
巧みな手順で9筋、8筋に傷を作ることに成功した。このような展開になれば桂損は影響が薄いと言えるだろう。この後実戦では200手でツツカナが勝利した。
長手数の将棋を苦にしないのもツツカナ将棋の特徴である。
この将棋の総棋譜は以下から
続編記事はこちら
ツツカナの矢倉△4五歩反発型(2014年) - コンピュータ将棋研究Blog
(参考書籍)