はじめに
ponanzaは先日の第5回将棋電王トーナメントで引退を表明したが、その戦術はまだまだ研究をし続けることに意義があると考えている。
特にponanzaは対振り飛車で独特の戦術を見せることが多く、またそれらにはおおきな可能性があると感じている。
今回はそのponanzaの将棋から対四間飛車の金無双急戦△6四銀型について見ていきたいと思う。
実戦例
動く将棋盤は以下のリンクから。
対四間飛車ponanza流金無双急戦△6四銀型その1 | Shogi.io(将棋アイオー)
電王PONANZAに勝てたら300万円 2日目
日時:2016/03/13(日)
戦型:四間飛車
先手:挑戦者
後手:ponanza
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲7六歩 △3二金 ▲6六歩 △3四歩 ▲6八飛 △1四歩 ▲1六歩 △6二銀 ▲4八玉 △4一玉(下図)
挑戦者の方は振り飛車党のアマチュア強豪。
ponanzaは2手目に△3二金と上がった。
人間同士なら振り飛車を誘った意味合いがあるが、ponanzaはこの△3二金でなんら問題ないと考えているに違いない。
先手の四間飛車に対して後手は早めの△1四歩。
ソフトは対四間飛車で玉側の端歩を突くことも多い。
損はないと考えているのだろう。
そしてここからどのように駒組みを進めていくかが注目された。
(上図からの指し手)
▲3八銀 △7四歩 ▲7八銀 △4二金 ▲3九玉△3二玉 ▲2八玉 △8四歩 ▲6七銀 △5四歩(下図)
先手の挑戦者の方は正統派の振り飛車党。
基本に忠実な駒組みを続けている。
対するponanzaは3二の金を4二に移動して△3二玉と囲った。
この指し方は以前にも当ブログで紹介したことがある。
参考記事
www.fgfan7.com
ponanza得意の駒組みのひとつと言えそうだ。
金の動きで手損にはなるが、先手に一手多く指させてもそこまでプラスになる指し手がないと考えているのではないかと推測している。
例えば、振り飛車が▲4六歩と突くと中盤で▲4六角と飛車を狙う筋が消える。
このように将棋は一手多く指せば必ずしも得になるとは限らないという点が難しく面白いところである。
(上図からの指し手)
▲5八金左 △8五歩 ▲7七角 △5三銀 ▲5六歩 △5二金上 ▲4六歩 △6四銀 ▲7八飛 △7五歩(下図)
前回は▲4五歩早仕掛けのような指し方を紹介したが、今回は△6四銀から右銀を繰り出していく作戦。
どちらかと言えば、この右銀を繰り出していく作戦のほうがponanzaは多く指している印象がある。
通常の右銀急戦は船囲いだが、今回は金無双の構え。
この違いがどのようにあらわれていくのかが焦点となった。
(上図からの指し手)
▲9八香(途中図)
△9四歩 ▲9六歩 △8四飛 ▲5九角 △7四飛 ▲4八角 △7六歩 ▲同 銀 △5五歩(下図)
30手目△7五歩に対して先手は▲9八香と待った。
ここでは▲4五歩と指し、将来の▲4六角を見せる指し方も有力で
以下、△7六歩 ▲同 銀 △7二飛 ▲6五歩 △7七角成 ▲同 飛 △7三銀 ▲6六角 △3三桂 ▲7八飛 △6二銀 ▲7五歩 △5三銀 ▲4七金△8二飛 ▲7七角
(参考図)
と進むのが一例。
(途中図再掲)
本譜は▲9八香。この手も振り飛車の常套手段であり、将来の△9九角成で香をダイレクトに取らせないという点で大きなポイントである。
後手は△9四歩と端歩を突いてから、△8四飛~△7四飛と時間差の攻撃態勢を作る。
単に△7二飛は▲6五歩の切り返し手段があるのでこのような迂回経路で7筋に飛車を持っていった。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲4七金 △5六歩 ▲同 金 △5五銀 ▲6五金△7一飛 ▲5三歩 △6二金 ▲5五金 △同 角 ▲6七銀 △7八飛成 ▲同 銀 △5三金右(下図)
▲4七金に対して△5六歩~△5五銀と中央から攻めていく。
△5五銀に対して▲同金と取ると以下、△同角▲4七銀打△5六歩(参考図)
と進めて攻めがつながる。
本譜は▲6五金。
▲5三歩には▲6二銀打や▲5二銀打を避ける意味で△6二金が最善である。
いきおい、飛車交換となったが7八の銀が取り残されており後手が-450ほど有利となっている。
(局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲7七桂 △7九飛 ▲6五桂 △7八飛成 ▲5三桂成 △同 金▲5一飛 △4二銀打 ▲8一飛成 △5六桂(下図)
苦しいながら先手の▲7七桂~▲6五桂は遊び駒を活用する筋のよい指し方。
対する後手は△7九飛~△7八飛成と自然に駒得する。
▲5一飛にも一回、△4二銀打としっかりと受けるのが大事なところ。
そして急所の△5六桂が入った。
(上図からの指し手)
▲3九角 △4八金 ▲同 金 △同桂成 ▲同 角 △同 龍 ▲4九金 △9八龍 ▲5八歩 △5七歩(下図)
ここからの後手の寄せはかなり上手いので参考にしたい。
まず、▲3九角に対して△4八金と露骨に攻めていく。
そして▲4九金と弾かれた時に△9八龍と龍を逃げながら香を取ることができたのが大きい。
先手は▲5八歩と懸命に受けようとするが、△5七歩が平凡ながら厳しい寄せ。
龍の利きが通ると先手は受けが次第に厳しくなっていく。
(上図からの指し手)
▲4五桂△5八歩成 ▲5三桂成 △5一歩 ▲4二成桂 △同 銀 ▲5八金 △同 龍 ▲4九金 △6六角(下図)
先手の▲4五桂には△5四金と逃げる手もあるがここは△5八歩成から強く踏み込むのが最短の寄せ。
▲5三桂成には△4九とでも勝ちだが、ここは△5一歩が「負けない」指し方。
再度の▲4九金の弾きには龍を逃げずに△6六角が幸便となった。
勝利はもうすぐである。
(上図からの指し手)
▲3九金打 △4七桂 ▲4八銀 △同 龍 ▲同金右 △同角成▲3九銀 △同 馬 ▲同 金 △同桂成 ▲同 玉 △5七角(途中図)
▲4八桂 △同角成 ▲同 玉 △5六桂 ▲4七玉 △5七金 ▲同 玉 △6八銀 ▲5六玉
△5七金(下図)
まで106手で後手の勝ち
後手は持ち駒がたくさんあるのでもう大駒を逃げる必要がない。
あとは、豪快に大駒を切り飛ばして寄せ切った。
投了図以下は、▲6六玉 △6五銀 ▲同 玉 △6四金 ▲7六玉 △7五金打までの詰みとなる。
まとめ
今回みてきた、対四間飛車ponanza流金無双急戦△6四銀型は通常の船囲いからの右銀急戦とは異なり、
・振り飛車側に多く手を指させている
・自陣の金銀の連結がよい(△4二金型がおもったよりも隙がない)
という特徴がある。
また、△9四歩を突いてからの△8四飛~△7四飛の指し方にも注目したい。
これにより先手からの▲6五歩の捌きの効力を弱めている。
そして、この将棋は終盤の寄せ方も教科書のように上手なのでおおいに参考にしてもらいたい。
みなさんもぜひ、この金無双急戦を自分の中の戦術のひとつに取り入れてみてほしい。
参考棋譜
対四間飛車ponanza流金無双急戦△6四銀型その2 | Shogi.io(将棋アイオー)