はじめに
ダイレクト向かい飛車は佐藤康光九段や大石直嗣七段が得意としており、公式戦で高勝率をあげている。
また、floodgateにおいてもDirectMotemitsuという名前のダイレクト向かい飛車を得意とするソフトがたまに出現しており、指され始めてから年月は経ったものの今もなお注目されている戦法である。
今回の記事ではfloodgateの棋譜を題材としてダイレクト向かい飛車を指すうえで押さえておきたいポイントをまとめていきたいと思う。
ダイレクト向かい飛車に対する▲6五角打の実戦例
実戦例その1
動く将棋盤は以下のリンクから
棋戦:wdoor+floodgate-300-10F+gikou2_1c+BURR+20180810170001
先手:gikou2_1c
後手:BURR
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8八角成 ▲同 銀 △4二銀 ▲7七銀 △3三銀 ▲4八銀△2二飛(下図)
角交換系の将棋から10手目に△2二飛と回るのがダイレクト向かい飛車と呼ばれる指し方。
ここでは△4二飛と指すのももちろん一局ではあるが、一手で△2二飛と向かい飛車にすることによって一手を得しようとしている。
(上図からの指し手)
▲6五角 △7四角▲4三角成 △5二金左 ▲同 馬 △同 金 ▲7五金(下図)
10手目△2二飛と回った局面で先手は積極的に行くなら▲6五角と打っていきたいところだ。
▲6五角に代えて▲6八玉ならば序盤は穏やかな展開となり一局。
▲6五角に対しては△7四角がこの一手で▲4三角成に△5二金左(▲2五歩型の場合は△5二金左には▲2四歩があるので△5二金右がよい)で先手の角を取ることができる。
先手も当然ながらこの変化は読み筋で金を取ってから▲7五金で角を再び取り返す。
(上図からの指し手)
△6二玉 ▲7四金 △同 歩 ▲4六歩 △7五歩 ▲同 歩 △5四角(下図)
後手は7四の角を助ける手段がないので△6二玉と上がる。
これに対して先手はすぐに▲7四金と角を取ったが、ここではすぐに取る必要はなく▲6八玉と上がっておくほうが手広かった。
▲7四金△同歩と進んだ局面で▲4六歩が悪手で後手の△7五歩▲同歩△5四角が厳しかった。
(上図からの指し手)
▲4七銀 △8七角成 ▲7六角 △同 馬 ▲同 銀 △2四歩 ▲4五歩 △7二玉(下図)
△5四角は次に△8七角成と△2七金の両狙いで厳しい一手だ。
先手として△2七金を許すわけにはいかないので▲4七銀と上がったが、△8七角成から自陣を乱されてしまった。
以下進んで△7二玉の局面は駒の損得こそほぼないものの先手陣は駒がバラバラでまとめにくい将棋になっている。
(上図からの指し手)
▲7四歩 △8二銀 ▲7八金 △4六歩▲同 銀 △4七角 ▲5六角 △1四角成 ▲6八玉△2五歩 ▲同 歩 △同 馬(下図)
先手の▲7四歩には玉頭をカバーする意味で△8二銀と上がっておく。
▲7八金に対して△4六歩が鋭い一手で▲5六銀ならば△1四角(参考図)が厳しい一手となる。
本譜は△4六歩に対して▲同銀と取ったが、△4七角~△1四角成で後手有利となった。
この将棋の総棋譜は以下から
実戦例その2
動く将棋盤は以下のリンクから
棋戦:wdoor+floodgate-300-10F+gikou2_1c+PANDRABOX+20181028013000
先手:gikou2_1c
後手:PANDRABOX
(初期局面)
(初手からの指し手)
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8八角成 ▲同 銀 △2二銀 ▲4八銀 △3三銀 ▲6八玉△2二飛(下図)
続いて2局目。本局も後手が10手目に△2二飛と指してダイレクト向かい飛車にした。
(上図からの指し手)
▲9六歩△2四歩▲7八玉△9四歩▲6五角△7四角▲4三角成△5二金右▲同 馬 △同 金 ▲7五金(下図)
本局は先手が▲9六歩と突いて9筋を突き合う将棋に。
これがのちの展開に大きな影響を与えることになる。
数手進んで先手はやはり▲6五角と打った。
以下は定跡化された手順で▲7五金まで進んだ。
(上図からの指し手)
△9六角 ▲同 香 △9五歩▲同 香 △同 香 ▲9六歩 △同 香 ▲9七歩 △同香不成 ▲同 銀 △9八歩(下図)
▲7五金の局面で9筋の端歩を突き合っているので△9六角と端に飛び出る一手がある。
以下、△9五歩まで進んで本譜は▲同香と取ったが、ここは▲3六歩△9六歩▲9八歩(参考図)と進めるのも有力だった。
本譜は△9八歩まで進んで後手が一本取った。
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
▲8八銀 △9一香 ▲5五角 △9九歩成▲同 銀 △同香成 ▲同 角 △7四歩 ▲同 金 △9七歩 ▲同 桂 △9六歩(下図)
△9九歩成を受けて先手は▲8八銀とするが、後手は先手の歩切れを見越して△9一香とする。
上図の△9六歩の局面はまだ難しい局面ではあるが、先手陣の方が傷が多く後手としては先手の▲6五角~▲7五金の仕掛けをうまく逆用した形となった。
(上図からの指し手)
▲9八歩 △9七歩成 ▲同 歩 △6二銀▲7五金 △7三銀 ▲3六香 △4三金 ▲4六香 △5四金 ▲4三香成 △9二飛(下図)
先手は香車2枚を使って反撃に出るが、後手は居玉を生かして△9二飛と9筋に飛車を転換した。
後手陣も薄いが、先手陣も相当薄く形勢は後手有利の中盤戦となった。
この将棋の総棋譜は以下から
その他参考棋譜
ダイレクト向かい飛車に対する▲6五角のまとめ
・△4二飛と途中経由せずにダイレクトに△2二飛と回るのがダイレクト向かい飛車の骨子となる。
・先手からは▲6五角の筋があるが、丁寧に対処すれば怖れることはない。
正しい受け方をマスターしよう。
・▲7五金の局面で9筋の端歩の突き合いがある場合は、まず△9六角の筋を考えてみたい。その後9筋を集中的に攻めていく。
また、△5四角のような筋もチャンスがあれば狙っていきたい。
参考書籍