はじめに
2018年9月7日から全国で上映された映画「泣き虫しょったんの奇跡」。
第42回モントリオール世界映画祭 フォーカス・オン・ワールド・シネマ部門の正式出品作品であった。
主演の瀬川晶司さんの役を務めたのは松田龍平さん。
その他、ロックバンドRADWIMPSのボーカル野田洋次郎さんが出演するなど豪華キャストの数々も話題となった。
映画タイトル「泣き虫しょったんの奇跡」は同名の瀬川晶司さんのノンフィクション本が原作となっている。
将棋のプロ養成機関である奨励会を年齢制限で惜しくも退会した後にサラリーマンとして数々のアマチュア大会で活躍し、プロ公式戦でも高勝率を挙げた瀬川さんが日本将棋連盟に「プロにさせてください」と嘆願書を提出。
紆余曲折のあと61年ぶりにプロ編入試験が行われ、その試験に合格し晴れて念願のプロ棋士の夢を実現させた。
ひとりの夢が、みんなの夢になった。
将棋界の歴史を変えた感動の実話。(映画パンフレットより)
パンフレット裏面には羽生善治さんからの言葉もある。
それぞれの対局シーンがとても迫力があり臨場感がありました。
将棋が好きな人だけではなく
これから映画の道に関わりたいと思っている人達にも見てほしい作品です。
そして何よりも瀬川さんの起こした奇跡が実感できました。
ーー羽生善治竜王(注 当時)
この記事を書いている私も実際に映画を見に行った。
自分の住んでいる県では上映のスケジュールは合わなかったため他県まで行って映画を見に行った。
「泣き虫しょったんの奇跡」観てきます。 pic.twitter.com/Y97SXIODGe
— suimon (@floodgate_fan) September 9, 2018
とてもいい映画でした。
— suimon (@floodgate_fan) September 9, 2018
よく知っているアマチュア強豪の知人(フォロワー)がクライマックスで出演していてビックリしました。
プロ入りの嘆願書を出した時点で反対の声も上がっていた事実が映画の中でも描かれていたのが内容としてしっかりしていたと思います。
— suimon (@floodgate_fan) September 9, 2018
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豊田利晃監督が映画に込めた思い
2018年10月号の将棋世界に豊田利晃監督と瀬川晶司五段の対談記事が載っている。
まず対談の冒頭で瀬川五段からの喜びの声が載っている。
瀬川 何というか夢のようでした。
もちろんうれしいんですけど、うれしいという言葉だけでは言い表せないというか。
いまでも不思議な気持ちです。松田龍平さんが主演と聞いたときはちょっとかっこよすぎるかなと思いましたが(笑)。
その後、豊田監督と瀬川五段の奨励会時代の話となり、豊田監督が奨励会を退会した後に映画の世界に入った経緯が語られている。
そして豊田監督から映画化にあたってこだわった部分が話されている。
豊田 いろいろありましたが、これだけはちゃんとしないといけない、と思ったのが将棋を指す手つきです。古い将棋の映画ではそれができていなかった。映画というのは小さなリアリティの積み重ねで大きなウソをつく、というところがあるんです。
だから、その最初の段階がダメだと、ダメな映画になってしまう。そこだけは瀬川さんをはじめ、髙見さん(泰地叡王)とか三枚堂さん(達也六段)とか、いろんな人に協力してもらってこだわりました。
実際、映画を見て感じたのが出演している方たちの将棋を指す手つきにとてもリアリティがあるという点であった。
きれいな手つきでそっと指す人、感情にまかせて荒々しく指す人、子供のやんちゃな手つき…それぞれの将棋にとてもリアリティのある映画だった。
最後に豊田監督からのメッセージで対談が締めくくられている。
豊田 将棋を愛する全ての人に見てほしい。瀬川さんの生き方から学べるものがあると思うし、将棋が好きだっていう最初の気持ちがあればもっと強くなれただろうし、それがなくなっていったり、ごまかされていったりする、その気持ちを感じてもらえたらすごくうれしい。個人的には奨励会にいた人にぜひ見てほしい。きっと心に刺さるものになっていると思います。
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豊田監督「いつかまた、将棋の映画やりたいですね」
宝島社から1999年5月に発刊された「将棋これも一局読本」に豊田監督のインタビュー記事が載っている。
そのインタビュー記事の中で豊田監督は、「いつかまた将棋の話、やりたいですね」と語っている。
インタビュー記事の中で印象に残った箇所を引用する。
ーまた将棋を指す気持ちになりますかね。
豊田「いやあ、将棋はもういいですね」
ー今の将棋界にはまったく興味はない?
豊田「うーん。ないですね。たまに『将棋世界』とか見ますけど。誰かが死んだときとかね」
ー自分で並べることもない。
豊田「ないですね。でもね、将棋の駒のパチーンって音があるじゃないですか。あれはたまに脚本書いてて煮詰まったりしたときにやるんですよ。そうすると、脳がね、刺激されて。もちろん定跡とかも全部覚えてますよ。だからパチーンって指すとポーンって全部出てくる。そういうのって脳が気持ちいいんで」
この部分だけ見ても豊田監督が根っからの勝負師だったのだなと感じることができた。
元奨励会員で映画監督になるという異色の経歴を持つ豊田監督についてわかるインタビュー記事となっているので、興味のある方は古本で手に入れてみてほしい。
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出演者と監督の残念なお知らせ
ここでは詳しくは取り上げないが、映画「泣き虫しょったんの奇跡」の出演者であった新井浩文さんと監督の豊田利晃さんがそれぞれ逮捕された。
新井浩文容疑者出演『泣き虫しょったんの奇跡』BD・DVD&配信延期 | マイナビニュース
拳銃所持で映画監督逮捕 「泣き虫-」など手掛けた豊田利晃容疑者/芸能/デイリースポーツ online
この影響で、
Blue-rayとDVDの発売、配信が延期されることが15日、発表された。当初は3月30日の発売・配信を予定していたが、変更後の日程は未定。
となっており、「泣き虫しょったんの奇跡」のBlue-rayとDVDの発売が未定になってしまった。
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作品に罪はない
ここからは私の思いを書く。
実際に映画を劇場で見たこともあり、素晴らしい映画だったのでぜひ多くの方に見てもらいたいと思っている。
しかし、「泣き虫しょったんの奇跡」は全国上映されたとはいえ、とくに地方の方は自分の県での上映がなかったというケースも多かったと思う。
なので、二つの事件は起こってしまったけれども作品自体には罪はないので、Blue-rayとDVDを当初の予定通り発売してほしいと願っている。
最後に印象に残ったツイートを紹介してこの記事を終わりにしたい。
素晴らしい映画でしたので、推薦コメントを書かせていただきましたが…
— 白鳥士郎 (@nankagun) April 18, 2019
作品に罪があるわけではありませんが、こうしたことで多くの方に観ていただく機会を逸したり、内容に対してよくない先入観を抱かれるのは、本当に残念なことだと思います。
将棋があれば銃なんて必要ないだろ。 https://t.co/vh38RcF24J