はじめに
2018年3月24日に将棋クエストの2分切れ負けで八段に昇段することができた。
ついにクエスト2分切れ負けで八段になりました!!
— suimon (@floodgate_fan) 2018年3月23日
将棋クエスト【2分】で『八段』に昇級しました! https://t.co/o9nIA9bYvj #将棋クエスト #ShogiQuest pic.twitter.com/UVksQULSYY
昇段ペースは以下の通り。
将棋クエスト2分切れ負けの昇段の歩み
— suimon (@floodgate_fan) 2018年3月24日
六段 2015/09/21https://t.co/Wu8O1VTuch
七段 2016/08/08https://t.co/WaBIVIaABD
八段 2018/03/23https://t.co/xT9utubkGB
六段→七段に約11ヶ月、七段→八段に約1年7ヶ月掛かりました。
— suimon (@floodgate_fan) 2018年3月24日
今回の記事では普段、将棋クエストを利用している方に2分切れ負けで2500、八段になるために必要なことを紹介していきたい。
まずは2300に到達する
2500点に到達するためにはまずはそこを狙える最低水準まで引き上げるためにレートを2300点台にする必要がある。
2300以下にはほとんど負けないようにしていかないとレートがなかなか上がらないからだ。
その具体的な勉強法だが、2300点台を維持するならば毎日少しの時間でも将棋に時間を割いたほうがいいだろう。
詰め将棋、連盟モバイル中継、序盤の戦術書、終盤の寄せとしのぎの問題を繰り返し解く…等、よく言われているトレーニング方法で大丈夫だ。
これを毎日継続する。
もし、2300点未満の点数で落ち着いてしまっているのならば、やはり序盤・中盤・終盤のどれかの基礎が固まっていないと考えられる。
苦手な戦法をスマホのメモ等に記録しておき、家に帰ってからその戦法の対策をソフトを使って検討してみるのもいいだろう。
自分なりに戦術等をアウトプットする
将棋クエストは2300点以上の相手になるとその強さもかなり強敵となってくる。
私もこの2300点台の期間が長く、そこから上に上がるのに大変苦労した。
私の経験を踏まえて言えば、ただ漫然と指し続けるだけではレートが上がらないということである。
そこでおすすめなのが、自分なりに戦術をノート、SNS(Twitter等)、ブログなどに書くことだ。
これには個人差があって、人に見てもらった方がやる気になる人と、人に見せずに書いておきたい人に分かれると思う。
それに関してはどちらでも大丈夫だ。
公開する必要性を感じないのであれば、ブログはプライベートモードに設定もできる。
さて、私が本格的に自分なりに戦術をまとめ始めたのが、2017年11月頃からである。
私は基本的に居飛車党なので、相居飛車の戦術で棋書に載っていない変化をWordにまとめはじめた。
この棋書に載っていない変化というのが大事で、今の時代将棋の戦術の進歩がとても速く、なかなか棋書の出版もその最先端に追いつくのは大変である。
(もちろん、出版されている棋書のほとんどは内容も優れている。自分の研究と併用するのがよい。)
よって、自分なりに体系化していく必要がある。
私の場合は2017年11月から休日はこのWordにまとめる作業を欠かさず行い、合計6万字強の文字を書いた。
まとめたのは相居飛車の4つの戦法である。
その作業がひと段落ついたのは、2018年2月末のこと。
かかった期間は、3か月強であった。
その間、自分なりにまとめたことが功を奏したのか、将棋クエストにおいて2400点台を維持できることが多くなってきた。
序盤で作戦負けになることが少なくなったのを自分でも実感できた。
ただ、それでも八段への道のりは遠く、なかなか2450以上には上がれなかった。
この時は、「相居飛車だけでなく 、対振り飛車でも同じようにまとめる必要があるな」
と考えていた。
対戦相手の癖を見抜く
ここからはやや実戦的な話になる。
私は将棋クエスト以外のネット対戦サイトやアプリをあまり利用しないのでわからないが、将棋クエストに関しては上位層で対局する人は限られてくるという傾向がある。
何度も対戦していると居飛車党、振り飛車党というおおまかな分類ではなく、さらに枝分かれしてその対戦相手の癖がわかってくることだろう。
そういう相手に少なくとも6割5分以上は勝っていかないと、2500点は遠のいてしまう。
私は、そういった相手と対戦した後で負けてしまった場合は必ず、ひとりで敗因を考えたり、将棋クエストのヒント機能を利用するようにしてきた。
その敗因は序盤の指し方にあったのか、それとも終盤でのミスなのか。また、2分切れ負けは大変時間が短いので形勢がよくても時間切れで負けてしまうこともよくある。
「この相手は指し手が速いので自分も遅れないようにする」なども心掛けるようにした。
こういった対局後に敗因を検証し、次の対局に生かそうとするのは別に将棋に限った話ではなく、いわゆるPDCAサイクルとしてその他の分野でも重要なことである。
参考書籍
指し手を速くするには
まず、相手の指し手を一手ごとに予測しておくこと。これに尽きるだろう。
予測してきた指し手を相手が指してきたならば、すぐさま考えた次の一手を指す。
この場合は指し手に1秒ほどしかカウントされないはずなので、これが続けば時間切れで負けるということは無くなる。
問題は予想してきた指し手とは違う指し手を相手が指してきた場合だ。
その際は、間違っても当てずっぽうのように用意した手を指すのは極力控えた方がよい。
それが致命傷にならなければいいが、もし見当はずれの指し手をしてしまった場合、敗勢になったらあとは相手の時間を切らすしか勝つ方法がなくなる。
そういったことで運よく勝てたとしても長くは安定しないだろう。
このケアレスミスを防ぐには、相手の指し手を複数予測していく必要がある。
もちろん、「この局面ではほぼこの一手」という局面も将棋には多く存在するのでその場合は一手の読みでも問題ない。
ただ、難解な局面の場合は複数の有力手が存在するのが将棋である。
難解な中盤戦で2手、3手と予測できれば自然と全体的な指し手も速くなっていくだろう。
2手、3手と素速く読めるようになるには、やはり普段の基礎的なトレーニングが重要となってくる。
どんな分野でもそうだが、ある程度上達したならば、あとは地道なトレーニングの継続が大事となるのである。
自分の得意形を作る
私の場合は、相居飛車の角換わり腰掛け銀をフリーソフトの検討モードを使って徹底的に自分なりにまとめていった。
角換わり腰掛け銀という戦法は比較的居飛車党同士なら誘導しやすく、また、事前に想定した局面に持っていきやすいという性質がある。
よって細かく事前に研究しておくことで持ち時間の節約にもなり、作戦勝ちもしやすくなった。
そして近年になって流行している雁木に関しても居飛車党は対策が必須である。
雁木は角換わり調の出だしや4手目△4四歩で相手が角道を止めてきたらほぼ誘導されるので自分なりに対雁木の得意形をもっておくのが大事となる。
私の場合は、下図のような左美濃+早繰り銀の構えをよく採用した。
他にも、対雁木は右四間飛車、▲4八金型、相雁木等が有力である。
これらを組み合わせたりして、戦術を固めておくのがよいだろう。
角換わり腰掛け銀の新型の同型(▲4八金・△6二金)に関してはまだ、棋書等でもあまり情報が出回っていない。
その為、普段からのfloodgateでの強豪同士の対局やプロ公式戦での対局、やねうら王+aperypaqを使っての研究が役に立った。
繰り返しになるが、スマホアプリのメモでもいいので自分なりに指し方の方針などをメモしておくのをお勧めする。
対振り飛車に関して
現代振り飛車は多様化を極め、また振り飛車といっても先手振り飛車と後手振り飛車では戦い方を全く変える必要が出てきたりする。(中飛車は特にその傾向が顕著だ。)
そういった戦術の多様性は将棋の面白さを引き立たせるものだが、対策する側としては一苦労である。
私が八段昇段までにかなりの対局数を要してしまった一因として、対振り飛車の戦略が甘かったのは正直なところである。
これに関しても、やはりなるべく最近出た棋書(古い棋書は結論が変わっていたりするので注意)を熟読することや、ソフトでの研究、また、プロ棋戦を毎日チェックする必要があるだろう。
なお、floodgateに関してはたまに振り飛車専門のソフトは放流されているが、基本的には相居飛車の将棋(角換わりや横歩取り)が多いのであくまで特殊な場合と考えた方がよい。
指す時間帯について
私は朝の5時半頃の早朝から対局するという習慣を続けてきたが、この時間帯は起きて朝食をとった脳があまり疲れていないということもあり、よく勝てることが多かった。
反対に、夕方6時以降は脳や体が疲れていることや、強豪プレーヤーが増えるので勝ち続けるのは大変である。
しかし、強豪プレーヤー相手に挑むことも必要である。
なぜなら、あまりにレートのかけ離れた相手とばかり指していてもなかなかレートは上がらないし、たまに負けてしまうとレートが10点くらい下がってしまうのでモチベーションの維持や、またレートを取り戻すのが大変になるからである。
強豪相手に勝てれば、レートの上昇率もよい。
やはり、強い相手にだんだんと勝率を上げていくことも大切だ。
終盤での競り合いについて
ここでは私の2つの対局における終盤戦から戦い方のコツをみていきたい。
先手中飛車からはじまった将棋で後手が私だが、ここでは勝ち将棋となっていた。
ここで△5九とと踏み込めば私の勝ち筋だった。
以下、▲3四桂で後手玉に必至がかかるが、先手玉に詰み筋が生じている。
その手順は、△1八金 ▲同 歩 △同歩成 ▲同 玉 △1七歩 ▲2八玉 △1八飛 ▲3九玉 △4九と ▲同 銀△4八角 ▲同 銀 △3八金(下図)の13手詰め。
時間がある将棋ならばそこまで難しい詰み手順ではないので読めていたかもしれない。
しかし、実戦は85手目▲6五銀の局面で私の残り時間は49秒であった。
そこで上記の詰み手順は読み切れずに、受けの手を指してしまい金星を逃してしまった。
このように、手順こそ難しくなくても短時間の間に正確に読み切る技術が2分切れ負けには要求される。
次の対局から。
相居飛車の将棋で中盤以降、私の劣勢の局面が続いた。
そして85手目▲6二歩で受けがなくなった。
ここで投了でもおかしくないところだが、私は△7七桂成と金を取った。
それに対して▲同銀と取れば先手玉に詰みはなく先手の勝ちだったが、実戦は▲同桂と取ったため、△7八銀成 ▲同 金 △7九銀 ▲同 金 △同 馬 ▲同 玉 △6八金(投了図)と進み後手の逆転勝ちとなった。
このようにたとえ敗勢でも逆転のチャンスがある場合は指し続けた方がよい。
2分切れ負けという短時間のルールではこのような逆転も起こりやすいからだ。
指すのを止めるのも時には大事
どうしても勝ちたかった将棋で無念の逆転負けで、熱くなってすぐに次の対局に移る…。
私も何度もこのようなことを繰り返してはレートを下降させることをしてしまった。
どうしても連続して対局を続けていると、次第に指し手の精度が鈍ってくるのは仕方がない。
そういった時には思い切って対局をしないと決断するのも大事である。
軽く、短手数の詰将棋を解いたりして次の日に対局をしたほうが結果的にはレートは上がる。
これは昔から言われているネット将棋における鉄則のようなものだ。
たまにはリアルでも将棋を指す
どうしてもネット対局だけでは真剣味が薄れてきてしまうという側面がある。
まだ、レーティングの上下がある分いいのだが、たまには将棋センターに足を運んだり、大会に出てみるのをお勧めする。
そしてリアル対局での結果を分析してネット対局に臨めば、また違った将棋観が養われるに違いない。
まとめ
・まずは2300点を目標とする。大事なのは基礎を固めること。
・自分なりにノート等に考えをまとめてアウトプットすること。
・敗因をよく検証して次につなげること。
・相手の指し手を予測できるようにすること(できれば複数の手)。
・自分の得意形(勝ちパターン)を作ること。
・苦手な戦法を克服すること。
・指す時間帯を変えてみること。
・短時間の終盤戦で正確に読み切ること。
・時には対局を休むこと。
・リアルでも対局すること。
ひとりでも多くの方が将棋クエスト2分切れ負けにおいて2500点八段に到達することを願っている。