コンピュータ将棋研究Blog

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駒落ち将棋の効用について考えてみた

はじめに

私は駒落ち将棋を級位者の頃に6枚落ちからスタートし、香落ちまですべての段階を経験した。

実力があがるにつれ、最初は相手に駒を落としてもらっていたのが自分が駒を落とすことも増えてきた。

今では対人戦での駒落ち戦と言えば自分が駒を落とすことだけとなった。

ただ、最新のソフトはかなり強くなったので駒を落としてもらって指すこともある。

参考記事

www.fgfan7.com

最新ソフトとは飛車落ちでは勝ちにくく、2枚落ちなら勝てるといった手合い差だ。

今回の記事では駒落ち将棋にスポットを当ててその効用を考えてみたいと思う。

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下手(駒を落とされる側)の効用

まずは下手側の効用を考えてみる。

指導対局で適切な手合いで指すことができる

プロ棋士と指導対局で対局する際には自分の実力にあった駒落ちの手合いで指してもらうのがよい。

中には級位者のうちから平手戦で指導してもらう方もいるが、棋力向上という観点から見た場合、駒落ちのほうが局後の棋士からのアドバイスも含めて自分のためになると思う。

駒落ちは相手陣の急所を見抜く力を養うことができる。

例えば、下図の局面は6枚落ちの初期配置。

f:id:fg_fan7:20190408083558j:plain

6枚落ちは定跡として9筋を狙う指し方と1筋を狙う指し方、2通りの指し方が確立されている。

これは上手側に桂香がないことを見越してその弱点を突きにいくことが理にかなっているからである。

次に4枚落ち。

f:id:fg_fan7:20190408084624j:plain

今度は上手の初期配置に両桂があるので簡単には端を破ることができない。

よって左右の端の攻めを見せつつ、銀を繰り出して攻めていくような工夫が求められる。

最後に2枚落ちをみてみる。

f:id:fg_fan7:20190408084104j:plain

下手は序盤早々から▲4五歩・▲3五歩とすることにより、上手の駒組みを制限させることができる。

上手はこの後、△2二銀と△3二金の壁形をなかなか解消できずに苦労することになる。

これも相手に大駒がないことを見越しての指し方である。

このように6枚落ち、4枚落ち、2枚落ちと段階を踏んで局面の急所を考えることができるので将棋の上達という観点から見ても駒落ち将棋は有用だと思う。

この記事を読んでいる級位者の皆さんは指導対局では是非駒落ちでプロ棋士と指してみてほしい。

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上手(駒を落とす側)の効用

次に上手側の効用を考えてみる。

不利な局面での粘り方を学ぶことができる

もともと、駒落ち将棋は初期配置の段階で上手側には駒を落とす枚数によってそれぞれハンデがある。

初期局面の点数差の目安としては以下のようになる。

6枚落ち(下手+3300ほど)

f:id:fg_fan7:20190408085801j:plain

4枚落ち(下手+2600ほど)

f:id:fg_fan7:20190408085421j:plain

2枚落ち(下手+2350ほど)

f:id:fg_fan7:20190408090101j:plain

飛車香落ち(下手+1300ほど)

f:id:fg_fan7:20190408090701j:plain

飛車落ち(下手+1100ほど)

f:id:fg_fan7:20190408090311j:plain

角落ち(下手+1000ほど)

f:id:fg_fan7:20190408090909j:plain

香落ち(下手+200ほど)

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ひとつの表にまとめると以下のようになる。

6枚落ち(下手+3300ほど)
4枚落ち(下手+2600ほど)
2枚落ち(下手+2350ほど)
飛車香落ち(下手+1300ほど)
飛車落ち(下手+1100ほど)
角落ち(下手+1000ほど)
香落ち(下手+200ほど)

これをみると、上手に大駒一枚が加わると一気に評価値が下がることがわかる。

香落ちに至っては+200の差でしかないので相当難しい手合いだ。

ただ、どの手合いでも上手はハンデがあることには変わらない。

よってどのように逆転を狙っていくかが勝負となる。

私が普段、駒落ちの上手を指す上で意識しているのはすべての駒を働かせるという点である。

経験則からいっても上手側に働きのない駒があるとまず勝てないと思う。

また、駒落ち上手の経験があると平手将棋でも大局観を生かせる場面に出くわす時がある。

それは以下のような局面だ。

f:id:fg_fan7:20190408092528j:plain

私が後手で題材はネット将棋から。

序盤から狙っていたわけではないが、中盤の途中から私の陣形は2枚落ちの上手のような3段目に玉が行く展開となった。

64手目に△7五歩とした局面だが、ここでは-750ほどで私の有利となっている。

2枚落ちの上手と比較してみた場合、飛車はいるし角は持ち駒にあるのでとても戦いやすい。

では試しにこの局面で後手の飛車角を無くしてみる。

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評価値は先手(下手)の+2171で2枚落ちの初期値(下手+2350ほど)とほぼ変わらない。

実際に局面的にも▲7五同歩△同銀に▲7二歩が好手で後手(上手)が厳しい。

※▲7二歩に△同玉は▲7四歩がある。

このようにやはり駒落ちの上手は苦しい。しかし平手戦での応用を考えれば局面がぐっと楽になるという典型的な将棋であった。

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駒落ち将棋の効用のまとめ

駒落ちは下手側にとっては

・相手陣の弱点を突く訓練になる

・手合いが進むにつれ段階を踏んで局面の急所を見抜けるようになる

という効用がある。

上手側としても

・すべての駒を活用しようとする訓練になる

・平手将棋へ大局観が応用できる

という利点がある。

私は今でも地元の将棋センターで主に子供たちを相手に、駒落ちの上手をもって指すことが多い。

これからも駒落ち将棋は指し続けていきたいと考えている。