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藤井聡太七段の棋史に残る一手△6二銀を詳細解説

はじめに

いやはやすごいものを見てしまった。

下図は終盤の局面で中田宏樹八段が▲5四歩と銀取りに歩を打った局面である。

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ここで藤井聡太七段の指し手は△6二銀!(下図)。

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なんと龍が利いているところに銀を引いたのである。

実戦は両者一分将棋となっている中、中田八段は▲同龍と銀を取った。

以下、△6八龍 ▲同 玉 △6七香 ▲5七玉 △5六歩▲同 玉 △4五金(投了図)

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まで110手で藤井聡太七段の勝ちとなったのだ。

投了図以下は、▲5七玉△3九角▲4八歩△同角成▲同銀△5六歩▲4七玉△3五桂▲3七玉△2七馬(参考図)までの詰みとなる。

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駒余りなしの詰みでまさに驚愕の手順である。

本記事ではこの最終盤にスポットを当てて、本譜で現れなかった手順も含めて詳細解説をしていきたい。

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棋史に残る一手△6二銀の意図

そもそもこの△6二銀は現在の最新コンピュータ将棋ソフトの読み筋と同じなのだろうか。まずはそれを調べてみた。

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ある程度の時間、ソフトに思考させたところ、最善手は△同銀となった。

局面の形勢としては+882点で中田八段が優勢となっている。

藤井聡太七段が指した△6二銀は次善手の読みで評価値は+1493点でやはり先手優勢とソフトは判断している。

では△6二銀と指した局面をソフトに検討してみる。

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ここで▲3四桂ならば先手は評価値+1505で勝勢とソフトは判断している。

ただ、次善手の▲4四歩になると評価値がぐっと下がって+483となっている。

この終盤の持ち時間が一分という状況下で+483は完全な勝負形である。

そしてなんと3番候補手の▲2四金は-112で後手がやや有利となってしまうのだ。

つまり藤井聡太七段の指した△6二銀という手はソフトの最善手の読みではないが、次に先手が▲3四桂と指せないと形勢が急接近するという恐ろしい勝負手だったのである。

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詰み手順の詳細

本譜は藤井聡太七段の△6二銀に対して中田宏樹八段が▲同龍と取って後手陣をほぼ絶体絶命の形にした。

藤井聡太七段としては先手玉を詰ますしかない状況である。

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まずは△6八龍から入った。

これに対して①▲同金は以下△8八角▲同銀△同と▲同玉△9六桂▲9八玉△9七香▲同玉△8八銀▲9六玉△8五金(参考図)

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②▲同銀も△8八金▲同金△同と▲同玉△9六桂▲9八玉△9七香▲同玉△8八角▲9六玉△8五金(参考図)までの詰みとなる。

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よって本譜は▲同玉と取った。

対する藤井七段の△6七香は絶対手で、他の手では詰み筋がなくなってしまう。

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△6七香に対して①▲7九玉は△6九香成▲同玉△5八角▲7九玉△6七桂▲6八玉△6九角成▲5七玉△5八馬右▲5六玉△4五金(参考図)

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②▲同金も△同馬▲同玉△5五桂▲5七玉(1)△7九角▲6八香△4七金▲5六玉△4五金(参考図)と進んで詰みとなる。

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上記手順中、△5五桂に▲5八玉(2)も△4七角▲4八玉△3八金▲5九玉△5八金(参考図)までの詰みとなる。

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(本譜局面図再掲)

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よって本譜は▲5七玉と上がった。

そして△5六歩▲同 玉 △4五金(投了図)までで藤井聡太七段の勝ちとなった。

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以下の手順ははじめにで解説した通りである。

詰みに至るまでの分岐の手順もほとんど駒が余らない変化ばかりで、この将棋はまるで創作で作られたかのような完成度の高い終盤で見ごたえがあった。

 

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他のプロ棋士からも称賛の声

遠山雄亮六段

今泉健司四段

勝又清和六段

片上大輔七段

 

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藤井聡太七段の棋史に残る一手△6二銀のまとめ

・△6二銀はソフトの最善手ではなかった。しかし次の一手で▲3四桂以外ならば形勢が急接近するという驚愕の勝負手。

・一分将棋の中、複雑な変化をすべて読み切るのは困難。中田八段は指運をかけて▲6二龍と銀を取った。

・△6八龍からは変化がたくさんあるものの、どの変化もほとんど駒が余らないぴったりの詰み。本譜も駒が一枚も余らないきれいな手順となった。

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