コンピュータ将棋研究Blog

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対振り銀冠穴熊の急所 その1~なぜこのような指し方が必要なのか~

はじめに

ponanza流銀冠穴熊の記事を書いてから、8か月強の歳月が経った。

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 その後、増田四段がこの戦法を公式戦で採用してから注目度が一気に上がり、他の棋士も採用しはじめるようになった。

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(6/14に増田四段によるこの戦法を解説した新刊も発売される)

そしてアマチュア将棋ファンでもこの戦法を採用する方が増えてきたが、まだまだ情報が少なく指し方が難しいという話も聞く。

今回からシリーズものとして、この対振り銀冠穴熊システム(左美濃→銀冠→銀冠穴熊)についてコンピュータ将棋の実戦からその指しこなす急所をひも解いていきたいと思う。

なぜ左美濃を経由するのか

 そもそもなぜ左美濃→銀冠→銀冠穴熊のような駒組みの仕方をするのかという疑問が生じる方は多いかもしれない。

実際のところ、ponanzaはこの銀冠穴熊システム以外の指し方を用いることも多いので、なんとも言えない面もあるのだが、ひとつ推測するならば、藤井システムやトマホークを警戒しているというのは考えられる。

藤井システムの例

NineDayFever_XeonE5-2690_16c vs. ponanza-990XEE (2013-07-19 03:00)

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上図△6二飛でponanzaは-156で自身が有利と判断。

(上図からの指し手)

▲9九玉    △6六歩    ▲同 角    △9五歩▲7八金    △9六歩    ▲同 歩    △9七歩    ▲同 香    △8五桂(下図)

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端攻めで居飛車穴熊の弱点を突く。

この後、後手が勝利した。

トマホークの例

Titanda_L vs. ponanza-990XEE (2014-04-25 17:30)

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上図から▲7五歩△5一玉!!▲5五角△8二銀▲5九金△7二飛(下図)と進んだ。

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後手は居玉で攻めの体制を築く。

この後、後手は角筋のラインと端攻めを駆使して先手居飛車穴熊を崩壊させた。

後手玉は左辺に逃げ込むことが出来る分、かえって居玉が好位置なのである。

この三間飛車トマホークシステムに興味を持った方はタップダイス氏、信玄m@ster氏による電子書籍を参照すると理解が深まると思う。

その1 まとめ

このように振り飛車に対して普通に居飛車穴熊を目指すと振り飛車からの急戦策(藤井システム、トマホークなど)を居飛車側は迎え撃たなくてはならないのである。

振り飛車側からの端攻めと角筋のラインを活かした攻め筋は破壊力があり受けきるのは相当な技量を要する。

ならば、振り飛車からの急戦に備えつつこちらからの急戦も見せて相手を牽制し、そこから堅陣に組めないかという発想が対振り銀冠穴熊システム(左美濃→銀冠→銀冠穴熊)のコンセプトなのだ。

その2からはいよいよその対振り銀冠穴熊システムの駒組みをみていきたいと思う。