はじめに
前回に続いて横歩取り新竹部流▲3三飛成の将棋を検討していく。
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新竹部流は5八玉、4一玉が入った形での▲3三飛成の強襲である。
まずここで横歩取り▲5八玉型のメリットについて簡単に考察してみる。
上図は新竹部流から考えられる変化図である。
先手が▲8五飛成とした局面だが、ここで▲5八玉型が活きている。
というのは▲5八玉が4~6筋の歩にひもをつけており、後手の角打からの成り込みを防いでいるのだ。
試しに▲5八玉、△4一玉の交換がない図を見てみよう。
この場合、ここから後手は△7四角と打って先手の龍を消すことができる。
よって一手前の局面では先手は▲8六飛成と指すことになるのだが、このように序盤から居玉の場合は指し手に制約が生まれてしまうのだ。
横歩取りにおいて▲5八玉型というのは非常にバランスに優れているのである。
▲5八玉型の優秀性を確認したところで本譜の検討に進んでいきたいと思う。
新竹部流横歩取り▲3三飛成の実戦例
動く将棋盤は以下のリンクから
https://shogi.io/kifus/235051
(本譜局面図再掲)
(上図からの指し手)
△同 桂 ▲7七角打 △8八飛成 ▲同 銀 △2七飛 ▲2八歩 △2四飛成 ▲8三飛 △8二歩 ▲8五飛成(下図)
上記の手順の中で△8八飛成に対しては▲同角と取る手も考えられるがここは手得を主張して▲同銀と取ってみたい。本譜はお互い龍を作り合って互角の形勢。
(上図からの指し手)
△4二銀 ▲3六歩 △5二玉 ▲9六歩 △1四歩 ▲3五龍(下図)
上図の▲3五龍が▲8五飛成からの流れを活かした一手。これを△同龍と取るのは▲同歩で自然に3筋の歩が伸びていくので先手好調となる。
(上図からの指し手)
△2一龍 ▲3八金 △6二銀 ▲4八銀 △7二金 ▲3七桂 △7四歩 ▲8七銀 △6四歩 ▲3九金(途中図)
△6三銀 ▲8八角 △7三桂 ▲7五歩 △同 歩 ▲1六歩 △9四歩 ▲7五龍 △7四歩 ▲7六龍(下図)
後手は△2一龍と龍同士の交換を避ける。
以下は駒組みや微妙な駒の繰り替えがおこなわれるが、実は先手が上手くいっているとは言い難い。
やはり後手だけ角を手持ちにしているのは大きいだろう。上図は55手目▲7六龍と指したところだが、後手はここから、
①△1五歩②△2七歩打➂△2六龍など有力手が多く、時間があればいくらでも考えたい局面だったと思う。
(上図からの指し手)
△2四龍 ▲5五角 △8三歩 ▲7七桂 △5四歩 ▲4六角 △3四龍 ▲8二歩 △同 金 ▲1五歩(途中図)
△3六龍 ▲7五歩 △同 歩 ▲同 龍 △7四歩 ▲3五龍 △同 龍 ▲同 角 △3六歩 ▲6二飛(投了図)
まで75手で先手の勝ち
本譜は途中図からの△3六龍がよくなかったようだ。
先手からの▲7五歩△同歩▲同龍が好手順で次の①▲7四歩②▲3五龍の二つの攻め筋が現れて後手が急に忙しくなってしまった。
△3六龍では△7二金や△2五桂と指していれば難解な形勢だったと思う。
なお、74手目の△3六歩に代えて△7二金も▲3四歩で先手優勢である。
この将棋の総棋譜は以下から
新竹部流横歩取り▲3三飛成戦法のまとめ
この新竹部流横歩取り▲3三飛成戦法はまだ前例がこの一局のみで成否の判定は難しいところだ。
この作戦の主張としては▲5八玉型なので、従来の居玉での竹部流よりも後手からの角の打ち込みの隙が少ないという点である。
本局は全体的に振り返ってみても先手が上手くいっていたかは微妙なところだと思う。今後のこの戦法の可否が注目される。
参考書籍