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コンピュータ将棋研究Blog

Twitterアカウントsuimon@floodgate_fanによるコンピュータ将棋研究ブログです。

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第27回世界コンピュータ将棋選手権直前特集~戦型別観戦ガイド~

はじめに

ゴールデンウィークの5月3日(水)〜5日(金)の間に第27回世界コンピュータ将棋選手権が開催される。

↓公式サイト

http://www2.computer-shogi.org/wcsc27/

棋譜はリアルタイムでKifuと動画で中継もされる。

第27回世界コンピュータ将棋選手権 2次予選 - 2017/05/04 10:00開始 - ニコニコ生放送

第27回世界コンピュータ将棋選手権 決勝リーグ - 2017/05/05 09:30開始 - ニコニコ生放送

4/29時点では参加チームは50チーム以上であり、激戦が予想される。

ponanzaがディープラーニングの技術を使用することも大会前から大きな反響を呼んでいる。

また、参加チームのうちのひとつであるQhapaqさんがブログ上で参加チームの戦前の注目ポイントを記している。

http://qhapaq.hatenablog.com/

今回、私は現在のコンピュータ将棋が戦型別にどのような戦術を指しているのかをまとめることにした。

ゴールデンンウィークの大会開催中に本記事が観戦の羅針盤になれば幸いである。

ではさっそく始めていきたいと思う。

 矢倉

ここ最近ではコンピュータ将棋では減少傾向にある矢倉。

やはりそれは左美濃急戦をはじめとした急戦矢倉の台頭が大きく影響している。

▲7七銀型を狙った△6五桂をはじめとした攻め筋が強烈で先手側として受けきるのは相当な技量を要する。

先手矢倉を指すソフトがあるとするならば棋風が変わっていなければ技巧は指す可能性があるだろう。

昨秋の第四回将棋電王トーナメントにおいても数局、先手矢倉をもちいていた。

その中から一局ピックアップする。

第四回将棋電王トーナメント予選

先手 技巧  後手 ponanza

(初手からの指し手)

▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △6二銀 ▲5六歩 △7四歩 ▲7八金 △3四歩 ▲7七銀 △7三銀 (途中図)

f:id:fg_fan7:20170429155722p:plain

▲2六歩 △6四銀 ▲2五歩 △3二銀 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲3四飛 △8五歩 ▲7九角 △4二玉 ▲3八銀 △1四歩 ▲6八角 △7五歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲4六角 △6四銀(下図)

f:id:fg_fan7:20170429121443p:plain

▲6六歩保留型矢倉に対して左美濃+早繰り銀で攻めていくのは有力視されている攻め筋。

プロ公式戦でも阿部健治郎七段が最近この形を採用して快勝していた。

この将棋は中盤まで非常に難しい戦いが続いたものの、時間切迫から技巧に疑問手が出て最後はponanzaの勝利に終わった。

▲6六歩保留型矢倉に対しては早繰り銀以外にも有力な攻め筋はある。

以下のツイートを参照してほしい。

その他の参考棋譜

Maidy_Maidy vs. May (2017-04-22 18:00)

f:id:fg_fan7:20170429125542p:plain

左美濃以外にも上図の形からの急戦は有力。飛車先を受けないのは左美濃急戦と同様だ。

角換わり

コンピュータ将棋全体の傾向を見ても角換わりの将棋は多い。

プロ間でも主流の▲4八金・△6二金型だけでなく早繰り銀や▲4五桂速攻の将棋も増えてきている。

他には△3三金型の角換わりもある。

Titanda_L vs. SM_1_25_Xeon_E5_2698_v4_40c (2017-04-28 14:30)

(初手からの指し手)

▲7六歩 △8四歩 ▲2六歩 △8五歩 ▲7七角 △3二金 ▲2五歩 △3四歩 ▲8八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀 ▲3八銀 △3三銀 ▲3六歩 △7二銀 ▲3七桂 △7四歩 ▲6八玉 △7三銀 ▲7八金 △6四銀 ▲2九飛 △5二玉 ▲4六歩 △7五歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲4五桂(下図)

f:id:fg_fan7:20170429130433p:plain

後手の早繰り銀に対して先手は▲4五桂で反撃した。

まさに角換わりの最先端を行くような将棋である。

(上図からの指し手)

△4四銀 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲3四飛 △3三歩 ▲4四飛 △同 歩 ▲1六角 △4三角 ▲同角成 △同 金 ▲3二角 △2二飛 ▲5三桂成 △同 金 ▲6五角成 △6四銀(下図)

f:id:fg_fan7:20170429130723p:plain

先手は飛車を切り飛ばして攻めるものの上図は後手がうまく受けきった模様。

しかしこの▲4五桂は隙があればいつでも狙える筋であるだけに序盤から気が抜けない。

それが現代の角換わりの将棋である。

その他の参考棋譜

SM_1_25_Xeon_E5_2698_v4_40c vs. ukamuse_6700K (2017-04-28 04:30)

f:id:fg_fan7:20170429131125p:plain

やはり今の角換わりの研究課題と言えばこの腰掛け銀▲4八金・△6二金の同型。

両者とも打開が非常に難しく千日手になることも珍しくない。

大会中に新定跡が誕生するかもしれない。

monkeymagic vs. Maidy_Maidy (2017-04-27 06:30)

f:id:fg_fan7:20170429131724p:plain

Maidy_Maidyというソフトが多用している後手番での飛車先切らせ+早繰り銀。

後手番ながら先攻できるのが魅力的な作戦だ。

相掛かり

相掛かりもコンピュータ将棋はそこそこ指している印象がある。

最近のトレンドは▲5八玉や△5二玉型で構える将棋。

序盤からかなりの手将棋になりやすく定跡化もされていない為、力戦形になるのが予想される。

Ukamuse_KabyLake-7700K vs. Titanda_L (2017-04-27 10:30)

(初手からの指し手)

▲3八銀 △8四歩 ▲2六歩 △8五歩 ▲7八金 △3二金 ▲2五歩 △7二銀 ▲5八玉 △5二玉 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲2六飛 △3四歩 ▲3六飛 △3三金 ▲7六歩 △4二玉 ▲2六飛(下図)

f:id:fg_fan7:20170429132644p:plain

先手の陣形は最近の流行に近い形。それに対して後手は玉の位置を5二~4二へ移動させて細かな動きを見せている。

双方、駒がぶつかるまでの駒の配置の最善形を目指しており、その駆け引きが相掛かりの序盤のひとつのポイントと言えるかもしれない。

その他の参考棋譜

monkeymagic vs. ShootingStar (2017-04-27 02:30)

f:id:fg_fan7:20170429133300p:plain

UFO銀と呼ばれる▲3六銀・△7四銀型の将棋も指される可能性はある。

横歩取り

現在、コンピュータ将棋の相居飛車の中では多く指されるようになった横歩取り。

定跡の工夫により、レートの低いソフトでも格上のソフトに一発が入りやすいのが魅力的だ。

SILENT_MAJORITY_sf170225_6950XEE vs. May (2017-04-20 11:30)

(初手からの指し手)

▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩 ▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲3四飛 △3三角 ▲6八玉(下図)

f:id:fg_fan7:20170429134257p:plain

勇気流と呼ばれる玉上がり。

コンピュータ将棋でも2016年頃からしばしば指されるようになった。

(上図からの指し手)

△2二銀 ▲3六歩 △8二飛 ▲8四歩 △8八角成 ▲同 銀 △3三銀 ▲3五飛 △8四飛 ▲3七桂 △2四飛 ▲4五桂 △2九飛成 ▲3三桂不成△同 桂 ▲5五角(下図)

f:id:fg_fan7:20170429141422p:plain

後手は△8二飛と引いて局面を穏やかな方向に持っていきたいところだったが先手は▲8四歩から攻めの手を緩めない。

このように勇気流はノーガードの激しい展開になりやすい。

gpsfish_normal_1c vs. SM_1_25_Xeon_E5_2698_v4_40c (2017-04-28 23:00)

(初手からの指し手)

▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩 ▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲3四飛 △3三角 ▲3六飛 △6二玉 ▲8七歩 △8五飛 ▲2六飛 △2五歩 ▲2八飛 △8八角成 ▲同 銀 △3三桂 ▲6八玉 △8四飛 ▲3八銀 △7二銀(下図)

f:id:fg_fan7:20170429142325p:plain

2016年初頭から指され始めたこの角交換振り飛車に近い形の横歩取りは浮かむ瀬やponanzaが得意としている。

大晦日の合議制マッチもこの将棋だった。

その他の参考棋譜

ukamuse_6700K vs. monkeymagic (2017-04-28 05:30)

f:id:fg_fan7:20170429143006p:plain

△5二玉+△7二銀型はバランスが良く、有力な構え。

この後、△2三銀~△2四飛の飛車ぶつけや△8六歩~△8六飛~△7六飛のような攻め筋がある。

力戦

力戦というカテゴリーながら最近のコンピュータ将棋の序盤は多様化の方向に進みつつあり、特に序盤早々から定跡が切れた場合、このカテゴリーに位置する将棋が多いと言えるかもしれない。

SM_1_24_Xeon_E5_2698_v4_40c vs. Usa2dash_on_Photon2 (2017-03-09 17:30)

(初手からの指し手)

▲7六歩 △3四歩 ▲7八金 △8四歩 ▲2六歩 △3二金 ▲6六歩 △4二銀 ▲6八銀 △4一玉 ▲6七銀 △6二銀 ▲5八金 △8五歩 ▲7七角 △7四歩 ▲2五歩 △3三銀 ▲3六歩 △7三銀 ▲4八銀 △3一角 ▲3七桂 △5四歩 ▲6九玉 △5二金 ▲5六歩

(下図)

f:id:fg_fan7:20170429144118p:plain

先手矢倉の旗色が悪くなりつつある中、注目され出したのが雁木である。

ソフトは▲6七銀・▲7八金型を好む傾向がありこの雁木を愛用するのだろう。

昔の棋書には雁木では▲7七角と上がらない指し方のほうが多く紹介されているが、コンピュータは▲7七角と上がる展開も割と多い。

(上図からの指し手)

△7五歩 ▲同 歩 △同 角 ▲2四歩 △同 銀 ▲4五桂 △4四歩 ▲2五歩 △3三銀 ▲同桂成 △同 桂 ▲2四歩 △同 歩 ▲3五歩 △同 歩 ▲2四飛 △2三歩 ▲4四飛

(下図)

f:id:fg_fan7:20170429144552p:plain

△7五歩 ▲同 歩 △同 角と動いてきたのを見計らって▲2四歩 △同 銀 ▲4五桂が面白い攻め方。ここで△1四歩と突いても▲6五歩が味の良い一着となり手が続く。

本譜も銀桂交換に成功し、先手有利となった。

雁木にはおおきな可能性がある。

その他の参考棋譜

SILENT_MAJORITY_1.25_i5_6200U vs. ukamuse_i7 (2017-04-28 08:00)

f:id:fg_fan7:20170429150107p:plain

一時期よりは減ったもののまだまだ指されている右玉。

昨年はNineDayFeverが採用していた。

基本的にカウンター狙いだが展開によっては自分から攻めていく将棋もある。

振り飛車

純粋なノーマルな振り飛車はかなりの減少傾向にある。

しかし、人間的には少し珍しい振り飛車はたまに指されている。

gikou_nb10_i5-560M vs. Maidy_Maidy (2017-04-26 05:30)

(初手からの指し手)

▲7六歩 △3二金 ▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △8八角成 ▲同 銀 △3三金 ▲6八玉 △2二飛(途中図)

f:id:fg_fan7:20170429154035p:plain

▲7八玉 △4二銀 ▲3八銀 △6二玉 ▲3六歩 △7二玉 ▲3七銀 △4四歩 ▲5八金右 △8二玉 ▲9六歩 △9四歩 ▲4六銀 △4三銀 ▲6六歩 △5四銀 ▲6七金 △7二銀(下図)

f:id:fg_fan7:20170429154112p:plain

 阪田流向飛車を思わせるような角交換型の振り飛車。

Maidy_Maidyというソフトがfloodgateで連採しており期待の振り飛車として注目される。

その他では相振り飛車も指される可能性はあるだろう。

まとめ

 コンピュータ将棋選手権の将棋において予想される出現頻度順に戦型を並べると、

角換わり≧横歩取り>相掛かり≧力戦≧矢倉>振り飛車の順になるかと思う。

数年前に比べて矢倉の出現頻度が大幅にダウン。

角換わりと横歩取りが中心になるだろう。

角換わりは最近出てきた新工夫の指し方に注目したい。

中盤での千日手模様の打開方法やそこからの新手にも期待される。

横歩取りはまふ定跡などの影響もあり、定跡の整備によって一発が入る可能性がある。

それだけのリスクはありながら堂々と避けずに戦うソフトも多い。

相掛かりはお互いの玉の位置に注目したい。

駒がぶつかるまでの互いの駒の配置が勝負の分かれ目となるだろう。

力戦では特に注目したいのが雁木。

攻撃的かつ、金銀の連結が良く容易に崩れない陣形が魅力的だ。

矢倉はやはり急戦矢倉が中心となるだろう。

矢倉を採用するソフトは減少傾向にあるがそれでも中には挑戦するソフトをいるかもしれない。

特に左美濃急戦は最近、斎藤七段による新刊が出たばかりなので新たな展開がみれることに期待したい。

振り飛車も局数は少ないと思うが、従来にはなかったような変わった振り飛車がみられることになると思う。

参考書籍

コンピュータ将棋に造詣が深い、将棋観戦記者の松本博文氏による新書が5/2に発刊される。

この本を前日に読んでおけば第27回世界コンピュータ将棋選手権がより楽しめるものになるのは間違いないだろう。

また、5/11にはponanza開発者、山本一成氏による本も出版される。

ponanzaに関しては情報が少ないだけにその内容に注目が集まるはずだ。

目次をみるだけでワクワクする人もいるだろう。

 はじめに

【第1章】将棋の機械学習――プログラマからの卒業
将棋の名人を倒すプログラムは、名人でなければ書けないのか?
そもそも、コンピュータとは何か?
将棋を指すプログラムは、どう作るのか?
将棋における探索と評価
評価の仕組みの作り方
人工知能の「冬の時代」
人間の思考を理解するのは諦めた
なぜ、コンピュータ将棋はコンピュータチェスに20年遅れたのか?
局面数が多いから人間に勝つのが難しいわけではない
コンピュータにとって将棋が難しい理由
コンピュータにとっての将棋とチェスの本質的な違い
コンピュータ将棋での機械学習
機械学習の弱点と工夫
ポナンザの成長
電王戦
プログラマからの卒業

【第2章】黒魔術とディープラーニング――科学からの卒業
機械学習によってもたらされた「解釈性」と「性能」のトレードオフ
黒魔術化しているポナンザ
黒魔術の1つ「怠惰な並列化」
ディープラーニングで人工知能が急速に発展する
ディープラーニングのしくみと歴史
ディープラーニングを支える黒魔術、「ドロップアウト」
今、ディープラーニングはどれくらいのことができるのか?
ディープラーニングと知能の本質は「画像」なのか?
還元主義的な科学からの卒業

【第3章】囲碁と強化学習――天才からの卒業
人工知能の成長が人間の予想を大きく超えたわけ
人間は「指数的な成長」を直感的に理解できない
人類はこれから、プロ棋士と同じ経験をする
ポナンザの「守破離」
強化学習とは何か
ポナンザ流の誕生
人類の反撃と許容
アルファ碁の登場
なぜ、コンピュータにとって囲碁だけが特別なゲームだったのか?
モンテカルロ法という救世主
サイコロにも知能がある!?
モンテカルロ囲碁の成長
アルファ碁が示したこと「囲碁は画像だった」
アルファ碁の3つの武器
アンサンブル効果
科学が宗教になる瞬間
天才からの卒業

【第4章】倫理観と人工知能――人間からの卒業
知能と知性
「中間の目的」とPDCAで戦う人間の棋士
「目的を持つ」とは意味と物語で考えるということ
人工知能はディープラーニングで知性を獲得する
ポナンザ2045
人工知能は人間の倫理観と価値観を学習する
シンギュラリティと「いい人」理論

おわりに

【巻末付録】グーグルの人工知能と人間の世紀の一戦にはどんな意味があったのか?
人間を超えたアルファ碁は、どのようにして強くなったのか
アルファ碁はたくさん手を読んでいるのではなく、猛烈に勘がいい
読んでいない手を打たれると途端に弱くなる? アルファ碁の攻略法を探る
人類に残されたのは、言葉と論理。アルファ碁が示した人工知能の可能性とは

 この2冊を読めばコンピュータ将棋をより深く知ることができ楽しめるのは間違いない。

 それでは本記事が世界コンピュータ将棋選手権を楽しみにしているすべての方に参考となる記事になることを願って終わりにしたいと思う。

【コラム】四間飛車に対する急戦策について

はじめに

今回は四間飛車に対する急戦策について考えてみたい。

代表的な急戦策として挙げられるのは、

棒銀、4六銀左急戦、4五歩早仕掛け、鷺宮定跡、右四間飛車などである。

この中で私がよく用いていたのが4六銀左急戦と鷺宮定跡だった。

しかし、現在の私はこれらの作戦を用いることが少なくなってきている。

これからその理由を説明していきたいと思う。

 4六銀左急戦

青野九段による詰みまで行き届いた研究が有名なこの急戦。

私も実際、学生大会を中心にこの戦法で多くの勝ち星を上げることができた。

しかし、序盤の駒組みで四間飛車側に工夫をされると居飛車が戦いやすい局面になりにくいと考えている。

(初手からの指し手)

▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩
▲4八銀△4二飛▲6八玉△6二玉
▲7八玉△7二銀▲5六歩△9四歩
▲9六歩△7一玉▲5八金右△3二銀
▲2五歩△3三角▲3六歩△8二玉
▲6八銀△4三銀▲5七銀左△5四歩(下図)

f:id:fg_fan7:20170427060620j:image

上図最終手△5四歩が工夫の一手でかわりに△5二金左なら▲4六銀で先手も戦える。(しかしそこでソフト推奨の△4五歩という手もあってやっかいであるが…)。

△5四歩に対して▲4六銀と上がると△3二金という手があり、以下▲3五歩と突いても△4五歩▲3三角成△同桂となり先手が攻めにくい形となる。

詳しくは藤井九段の著書が詳しい。(この四間飛車の急所シリーズは四間飛車対急戦の決定版的な内容である)。  

この△4一金型は対四間急戦党にとって今もなお、かなりの難敵となっている。

特に四間飛車に対して急戦しか指さないという相手にはその効力を発揮しやすい。

(上図に誘導しやすい)

鷺宮定跡

青野九段、米長永世棋聖らが数々の名勝負を繰り広げた鷺宮定跡。

△3二銀で待機する四間飛車に対して有力な急戦策として知られる。

(初手からの指し手)

▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩
▲4八銀△4二飛▲6八玉△7二銀
▲7八玉△6二玉▲5六歩△7一玉
▲5八金右△8二玉▲9六歩△9四歩
▲2五歩△3三角▲3六歩△3二銀
▲6八銀△5二金左▲5七銀左△1二香(下図)

f:id:fg_fan7:20170427062508j:image 

上図最終手の△1二香が有力視されている一手。

以下、鷺宮定跡を志向するなら▲3八飛だが△4三銀と進んだ局面でまた岐路を迎える。

f:id:fg_fan7:20170427062954j:image

上図から▲1六歩には△1四歩と受けておく。

この交換はソフトは後手からの△1五歩という打開策もできるので四間飛車側が得とみている。

▲6八金上には△6四歩と待機する。

四間飛車側は△5四歩を突かないのが工夫で、ここを突かずに待機すると終盤での攻防の▲4四角が急所にならず非常に美濃囲いが堅いのである。

以下、居飛車側攻めるなら▲3五歩だが、△同歩▲4六銀△4五歩▲3三角成△同桂▲3五銀△2五桂▲3四歩△3二飛の展開はソフトの評価値的にはほぼ互角だが、上に書いたように△5三歩型での美濃囲いが非常に堅いので実戦的には四間飛車側の勝ちやすい将棋だと私は考えている。

4五歩早仕掛けと棒銀

(初手からの指し手)

▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩
▲4八銀△3二銀▲6八玉△4二飛
▲7八玉△7二銀▲9六歩△9四歩
▲5六歩△6二玉▲5八金右△7一玉
▲6八銀△8二玉▲2五歩△3三角
▲3六歩△5二金左▲5七銀左△4三銀
▲6八金上△5四歩▲4六歩△6四歩
▲4五歩△6三金▲3七桂△7四歩(下図)

f:id:fg_fan7:20170427064801j:image

上図は4五歩早仕掛けの基本図と言える局面だが、ソフトの評価値は先手−60ほど。

ただ、私はこの評価値の点数以上に居飛車側が勝ちにくいと感じている。

なぜなら、先手が船囲いなのに対して後手は高美濃まで組めており、陣形の堅さが段違いだからである。

実際、ソフトは上図から▲6九金△7三桂▲4四歩などという展開を読んでいるが、読み筋を進めていくと先手の玉形の薄さが響く展開が多い。

▲6九金に代えて▲4四歩から攻めていっても同様で居飛車側としては体感としてはノーミスを続けてようやく勝てるという感じある。

棒銀は急戦の中では最有力視される向きもあるが、私は経験が少ないので今回の記事では詳しく触れないことにする。

しかし、プロ公式戦で対四間飛車にはほとんど棒銀を指す加藤九段に対して、他のプロ棋士がノーマル四間飛車をあえて指して誘導しているのをみると棒銀できてくれるなら四間飛車は勝ちやすいと考えている人が多いということだと思う。

まとめ

現状、藤井九段をはじめとした四間飛車党の優れた対急戦の研究とソフトによる新たな対策が生まれてきたこともあり、急戦党は全体的に苦戦していると感じる。

しかし、ponanzaも局数はすくないものの急戦策を用いることがあり、まだまだ対四間急戦も開拓の余地があると思う。

ただ、ponanzaの指す急戦策は従来からの急戦策とは駒組みが一風変わっており、一度対四間の急戦策は根本から見直す時期に差し掛かっているのかもしれない。

対振り銀冠穴熊の急所 その1~なぜこのような指し方が必要なのか~

はじめに

ponanza流銀冠穴熊の記事を書いてから、8か月強の歳月が経った。

www.fgfan7.com

 その後、増田四段がこの戦法を公式戦で採用してから注目度が一気に上がり、他の棋士も採用しはじめるようになった。

www.fgfan7.com

(6/14に増田四段によるこの戦法を解説した新刊も発売される)

そしてアマチュア将棋ファンでもこの戦法を採用する方が増えてきたが、まだまだ情報が少なく指し方が難しいという話も聞く。

今回からシリーズものとして、この対振り銀冠穴熊システム(左美濃→銀冠→銀冠穴熊)についてコンピュータ将棋の実戦からその指しこなす急所をひも解いていきたいと思う。

なぜ左美濃を経由するのか

 そもそもなぜ左美濃→銀冠→銀冠穴熊のような駒組みの仕方をするのかという疑問が生じる方は多いかもしれない。

実際のところ、ponanzaはこの銀冠穴熊システム以外の指し方を用いることも多いので、なんとも言えない面もあるのだが、ひとつ推測するならば、藤井システムやトマホークを警戒しているというのは考えられる。

藤井システムの例

NineDayFever_XeonE5-2690_16c vs. ponanza-990XEE (2013-07-19 03:00)

f:id:fg_fan7:20170423081122p:plain

上図△6二飛でponanzaは-156で自身が有利と判断。

(上図からの指し手)

▲9九玉    △6六歩    ▲同 角    △9五歩▲7八金    △9六歩    ▲同 歩    △9七歩    ▲同 香    △8五桂(下図)

f:id:fg_fan7:20170423084246p:plain

端攻めで居飛車穴熊の弱点を突く。

この後、後手が勝利した。

トマホークの例

Titanda_L vs. ponanza-990XEE (2014-04-25 17:30)

f:id:fg_fan7:20170423081954p:plain

上図から▲7五歩△5一玉!!▲5五角△8二銀▲5九金△7二飛(下図)と進んだ。

f:id:fg_fan7:20170423082228p:plain

後手は居玉で攻めの体制を築く。

この後、後手は角筋のラインと端攻めを駆使して先手居飛車穴熊を崩壊させた。

後手玉は左辺に逃げ込むことが出来る分、かえって居玉が好位置なのである。

この三間飛車トマホークシステムに興味を持った方はタップダイス氏、信玄m@ster氏による電子書籍を参照すると理解が深まると思う。

その1 まとめ

このように振り飛車に対して普通に居飛車穴熊を目指すと振り飛車からの急戦策(藤井システム、トマホークなど)を居飛車側は迎え撃たなくてはならないのである。

振り飛車側からの端攻めと角筋のラインを活かした攻め筋は破壊力があり受けきるのは相当な技量を要する。

ならば、振り飛車からの急戦に備えつつこちらからの急戦も見せて相手を牽制し、そこから堅陣に組めないかという発想が対振り銀冠穴熊システム(左美濃→銀冠→銀冠穴熊)のコンセプトなのだ。

その2からはいよいよその対振り銀冠穴熊システムの駒組みをみていきたいと思う。

将棋の初手30通りを全て検証してみた③

はじめに

➀、②と続けてきたこの初手シリーズも今回が最終回となる。

③では主に初手に右銀、飛車、玉を動かす指し方をみていきたいと思う。

可能性を秘めた初手

初手▲3八銀、▲7八飛、▲5八玉といった指し手はプロ公式戦でも見られるようになってきており、今後に注目が集まっている。

ひとつひとつその良し悪しを検証していく。

▲4八銀

居飛車志向の初手。

2016年のfloodgate上位ソフトではgpsfishや、やねうら王が好んで指している。

ponanzaも数局ではあるがfloodgateでこの▲4八銀を指している。

ケース➀

ponanza-990XEE vs. NineDayFever_XeonE5-2690_16c (2015-02-11 19:30)

(初手からの指し手)

▲4八銀 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲3六歩 △3二銀 ▲7六歩 △4三銀 ▲7八銀 △4二飛 ▲6八玉 △6二玉 ▲2五歩 △3三角 ▲5八金右(途中図)

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△7二玉 ▲9六歩 △8二玉 ▲7九玉 △5二金左 ▲3七銀 △9四歩 ▲8六歩 △7二銀 ▲7七角 △6四歩 ▲8七銀 △7四歩 ▲8八玉 △8四歩▲9八香 △3二銀 ▲9九玉

(下図)

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NineDayFeverのノーマル四間飛車に対してponanzaおなじみの升田美濃→銀冠→銀冠穴熊となった。こうなれば特に初手▲4八銀も普通の将棋である。

ケース②

ponanza_expt vs. gpsfish_mini (2015-04-28 17:00)

(初手からの指し手)

▲4八銀 △8四歩 ▲2六歩 △8五歩 ▲7八金 △3四歩 ▲2五歩 △3二金 ▲6九玉 △7二銀 ▲5八金 △6四歩 ▲7六歩 △8六歩 ▲同 歩△同 飛 ▲5六歩 △8二飛 ▲8七歩(下図)

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次は初手▲4八銀に対して2手目に△8四歩と突く相居飛車の将棋をみていく。

これには先手は飛車先交換を防ぐ指し方もあるが、本譜は相手に飛車先を切らす展開となった。

(上図からの指し手)

△4一玉 ▲3六歩 △7四歩 ▲3五歩 △同 歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △6三銀 ▲2六飛 △2三歩▲5五歩 △4二銀 ▲3七銀(途中図)

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△3三銀 ▲4六銀 △4四銀 ▲6八銀 △5二金 ▲3七桂 △1四歩 ▲5七銀上 △7三桂 ▲5六銀 △3一玉 ▲4五銀左△同 銀 ▲同 銀 △4二金右 ▲3四銀(下図)

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先手は飛車先を切らせた代償を急戦を仕掛けることで求めた。

二枚銀を繰り出しての攻めは強力である。

上図は2筋突破が約束された格好となり先手有利となった。

▲3八銀

初手▲3八銀は第4回将棋電王トーナメントにおいて真やねうら定跡として使われたことにより有名になった。

yaneuraou.yaneu.com

今回、やねうら王は先手だと初手38銀を指します。やねうら王はこれが最善手だと考えているからです。

いなり配達員(?)の千田先生にちょっと盤面を動かして確認していただいたところ、居飛車で角換りになるなら、普通の局面に合流。振り飛車にされても直接咎めることは難しそうという結論になりました。
先手の初手38銀。これを真やねうら定跡と呼ぶことにします。
真やねうら定跡が注目されるためにも、真やねうら王が勝ちまくってくれないと…。(´ω`)

 この初手▲3八銀はponanzaもたまに指しており、相居飛車なら右銀を早繰り銀のように使っていって勝負することが多い。

相手が振り飛車にしてきた時が気になる人も多いと思うが、それにも対応できる。

第3回将棋電王トーナメント 予選

先手:ponanza 後手:nozomi

(初手からの指し手)

▲3八銀 △4二飛 ▲9六歩 △6二玉 ▲9五歩 △7二玉 ▲3六歩 △8二玉 ▲3七銀 △3四歩 ▲6八玉 △4四歩 ▲5八金右 △9二香 ▲7八玉△3二銀 ▲7六歩 △4三銀 ▲3八飛(下図)

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 後手は2手目に△4二飛と指し四間飛車に構えた。対する先手は9筋の端を突き越し船囲いにした後に、2筋を保留して▲3八飛と寄ったのが工夫の一手。

ここから後手の穴熊が完成する前に急戦を狙う。

(上図からの指し手)

△9一玉 ▲3五歩 △3二飛 ▲4六銀 △8二銀 ▲3四歩 △同 銀 ▲3三歩 △同 飛 ▲4四角 △4三銀▲3三角成 △同 角 ▲8八銀(下図)

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途中の▲3三歩が習いのある筋で飛車角交換となる。上図は先手の▲2七歩型が活きており後手は角を打ち込む隙が無い。

まだまだ難解な形勢ではあるが先手の作戦はうまくいったと言えるだろう。

▲7八飛

ここからしばらく初手に飛車を振るケースをみていく。

初手▲7八飛はプロ公式戦でも、門倉五段、菅井七段、久保王将などが好んで指している。

floodgateにおいては全体の割合からは0.3パーセントの確率でこの初手が指されている。

第二期電王戦バージョンのPONANZAも練習対局でこの初手を指してきたそうで、

その中の手順でこのような進行があったという。

(初手からの指し手)

▲7八飛 △4二玉 ▲7六歩 △3二玉 ▲2八飛(下図)

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驚愕の手順だが、先手の手損よりも後手の△3二玉型のほうが弱点があるとみているのだろうか。上図の局面でのSILENT_MAJORITY1.24の評価値は先手-50ほどだがPONANZAはどのように評価するのかは興味深いところだ。

▲6八飛

なんでも四間飛車の初手。

水谷流藤井システムで有名なアマチュアのmztn7さんが好む初手のうちのひとつだった。

水谷流藤井システム

この初手▲6八飛を駆使して将棋ウォーズの2016Ponaに対して2度の勝利を挙げたことは今でも鮮烈なイメージとして残っている。

1局目

将棋ウォーズ棋譜(mztn7六段対2016Pona九段)

2局目

将棋ウォーズ棋譜(mztn7六段対2016Pona九段)

▲5八飛

なんでも中飛車の初手。

ただこの初手よりは▲5六歩のほうが手広い意味がある。

実際、floodgateでも上位ソフトは初手▲5八飛をほとんど指しておらず、データとしては非常に少なくなっている。

ただ、第二期電王戦バージョンのPONANZAの初手の候補には入っていた初手なのでいきなり作戦的に損になるとまではいかないだろう。

▲4八飛

なんでも右四間飛車。

しかし、floodgateでも実戦例は非常に少なく、また第二期電王戦バージョンのPONANZAにおいても除外されていた初手であった。

実際のところ、初手に▲4八飛と指してしまうとその後の駒組みには苦労することになる。

▲3八飛

この初手も▲4八飛と同様、ほとんどfloodgateでは指されていない。

第二期電王戦バージョンのPONANZAもこの手は除外している。

袖飛車にする場合は初手▲3六歩のほうが手広いだろう。

▲1八飛

一間飛車の初手だが、これはその後▲1六歩に△1四歩と突かれてしまうと飛車が活用しにくくなってしまうのであまりよくない。

一間飛車にする場合は1筋の端歩を突き越せたときのほうが得策である。

▲6八玉

ここから初手に玉を上がる手をみていく。

結論からいうと玉が上がる手は▲4八玉以外はなかなか有力である。

しかしどちらかと言えば棋力の高い人のほうが指しこなしやすいと思う。

初手▲6八玉はponanzaも好んで指している。

ponanza-990XEE vs. ycas (2015-11-18 14:30)

(初手からの指し手)

▲6八玉 △8四歩 ▲7六歩 △4二玉 ▲7八金 △8五歩 ▲7七角 △6二銀 ▲2六歩 △7四歩 ▲2五歩 △3二金 ▲8八銀 △3四歩 ▲3八銀△7三銀 ▲3六歩 △6四銀 ▲3七桂 △7五歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △6四銀 ▲2九飛

(下図)

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後手に飛車先を切らす指し方もあるが、本局のponanzaは▲7七角と受ける将棋に。

上図は27手目にしてすでに定跡外の力戦形となり力と力の戦いである。

力戦派の方はこのような将棋も試してみる価値はあるだろう。

なお、初手▲6八玉に対して相手が飛車を振ってきた場合には先手は角道保留(クルクル角等)の指し方も視野にいれて一局。

▲5八玉

ある意味、ponanzaの代名詞ともいえるこの▲5八玉。

▲5八玉とあがるタイミングはまちまちだが、初手にあがるケースもある。

 基本的な考え方としては、

相手が振り飛車の場合

玉を58→68に動かして一手損。

相手が居飛車の場合

なるべく58のまま戦う。展開によっては68や69に移動。

というケースが多い。

アマチュアの場合は振り飛車党も多いので初手に▲5八玉と指すのがいいのかは難しいところがある。

しかし初手にこだわらず、序盤の早い段階で▲5八玉と構えて戦うのは視野に入れておくとまた違ってくると思う。

糸谷八段も▲5八玉型に関しては「一手で形が良くなる」と言っていたのでプロも注目している指し方なのだ。

▲4八玉

初手▲7六歩に対して2手目△6二玉という指し方が「新米長玉」として有名だが、初手▲4八玉はそれを先手でやってしまおうという一手。

しかし、これを指しこなすのはなかなか大変であると思う。

私も右玉狙いで何度かやってみたが、なかなか構想段階から苦労する展開になることが多かった。

しかし、この初手は第二期電王戦バージョンのPONANZAの初手の候補手になっていたという。

もう見ることはできない幻の初手となってしまったがPONANZAはどのような構想で指していくのかは見てみたいところである。

▲1八香

最後に初手▲1八香をみてこのシリーズは終了となる。

なんでも穴熊という感じの初手ではあるが、結論を言うとこの初手は居飛車で来られても振り飛車で来られても損になりやすい初手である。

かなり昔のプロ公式戦において初手から、

▲7六歩△3二金▲1八香という将棋もあったが、穴熊に囲う前に攻めをみせられると苦戦に陥りやすい。

居飛車のケース

棋戦:将棋ウォーズ 

後手:2016Pona

(初手からの指し手)

▲1八香 △8四歩 ▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △4二玉 ▲7七角 △7四歩 ▲7八銀 △6二銀 ▲6七銀 △1四歩 ▲7八飛 △3二銀 ▲4八玉△1五歩 ▲3八玉 △7二飛 ▲6八角 △3一玉 ▲5六歩 △6四歩(途中図)

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▲4六角 △6三銀 ▲6八金 △8五歩 ▲2八玉 △8二飛 ▲7七金 △7三桂(下図)

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後手は自然にコンピュータ将棋が対振り飛車において好む形である升田美濃に組み上げた。先手は急戦を警戒し▲7七金と苦心の駒組みをしたが左右分断された形になっており早くも後手リードといえる序盤戦となった。実戦も後手が快勝となっている。

振り飛車のケース

(初手からの指し手)

▲1八香 △3二飛 ▲7六歩 △6二玉 ▲6八飛 △3四歩 ▲4八玉 △3五歩 ▲3八玉 △3六歩 ▲同 歩 △同 飛(下図)

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振り飛車にする場合は2手目に△3二飛が速攻を含みにした一手。

以下囲いもしないうちに突っかけていく。

こうなると先手の初手▲1八香が完全に不急の一手となってしまっているのがわかる。

(上図からの指し手)

▲2八玉 △3三桂 ▲3八飛△同飛成 ▲同 金 △4五桂 ▲2二角成 △同 銀 ▲5五角 △3三角 ▲同角成 △同 銀 ▲2一飛 △3一飛 ▲同飛成 △同 金 ▲5六歩 △5七桂成

(下図)

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後手はさらに△3三桂と跳ね速攻含み。先手は▲3八飛と勝負手を放ったものの、やはり後手の攻めは止まらず、一気の速攻が決まった格好となった。

このように初手▲1八香は居飛車、振り飛車どちらでこられても苦戦になりやすい。

第二期電王戦バージョンのPONANZAも除外されている初手であった。

まとめ

➀、②、③と3回に分けて将棋の初手30通りの指し方についてみていった。

なかには指さないほうが良さそうな初手もあったが、今はまだあまり指されていないが有力と思える初手もあり、今後のプロ棋戦などでの登場が楽しみだといえる。

本文中でも触れたが、第二期電王戦第1局後の特番においてPONANZAの初手30通りから8通りが除外された中の残った22通りの指し手について佐藤名人、永瀬六段から正式に公表された。

徹底検証!電王戦第1局研究会 - 2017/04/09 18:00開始 - ニコニコ生放送

22通りと聞いた時から大方予想通りではあったが、それでもこの22通りの意義は大きかったと思う。まだまだ初手から将棋の可能性はあると教えてくれたPONANZA。

もちろん第2局の後手番においても2手目から工夫をしてくるのだろう。

今後もponanza及び、コンピュータ将棋界。またプロ公式戦において初手からのさまざまな工夫が見られることを楽しみにしている。

(3部作 完)

将棋の初手30通りを全て検証してみた②

はじめに

前回の続き

www.fgfan7.com

前回は初手に歩を突く指し手(9通り)をみていったので②ではその他の指し手(主に金銀を動かす初手)を検証していこうと思う。

マイナーな初手

将棋の初手において有力とされているのは①▲7六歩②▲2六歩③▲5六歩といわれており、それらは前回記事にしたので今回の記事で紹介する初手群はいわゆるマイナーな初手と分類されることになるかと思う。

しかし、それらの中には有力な初手もあるのでひとつひとつ検証していく。

▲9八香

穴角戦法を目指す初手だが、残念ながらコンピュータ将棋的にはfloodgateで検索してみても上位ソフトは全く指しておらず「候補にない初手」という結果となった。

PONANZAが除外していた初手のうちのひとつとみて間違いないだろう。

▲7八銀

人間が指しているのをほとんど見たことがない初手だがこれはなかなか有力。

初手▲7八銀からの有力な指し方は2つあり、升田美濃に組む形とパックマンとなる。

まず升田美濃にする将棋から。

luminos vs. GPSfish021_r2896_4C (2014-04-16 17:30)

(初手からの指し手)

▲7八銀 △3四歩 ▲4八銀 △8四歩 ▲2六歩 △8五歩 ▲6八玉 △7二銀 ▲2五歩 △3三角 ▲7九玉 △3二銀 ▲5八金右 △7四歩 ▲7六歩△4二玉 ▲5六歩 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩(下図)

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先手は一目散に升田美濃に組む。注意すべきは玉が79までいってから角道を開けること。そうしないと角がただ取りされてしまう。

上図は一局の将棋としかいいようがないが、居飛車党ならこのような将棋も考えてみてもいいだろう。

次にパックマンにする指し方をみてみる。

ApeTW_Pack_EC2Win16-8 vs. nanopery_FX9590_4.7GHz_test (2015-12-29 22:30)

(初手からの指し手)

▲7八銀 △3四歩 ▲6六歩 △同 角 ▲6八飛 △5七角成 ▲7六歩 △6八馬 ▲同 金 △2二飛 ▲6五角 △3二金 ▲8三角成(下図)

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通常のパックマン戦法は後手番でもちいるが、この指し方はそれの先手番での応用である。

▲7八銀が入っている分、自陣は補強されているのですこし得はしている。

上図は完全な力戦形ではあるが、試してみる価値はあるだろう。

▲6八銀

嬉野流として有名になった初手。

floodgateでは嬉野流専門のソフトが一時期存在し、また将棋ウォーズの2016Ponaも10局弱、この初手を指している。

棋戦:将棋ウォーズ
先手:2016Pona

(初手からの指し手)

▲6八銀 △8四歩 ▲7八金 △8五歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲2六歩 △3二金 ▲6七銀 △6四歩 ▲2五歩 △6三銀 ▲5八金 △8六歩 ▲同 歩△同 飛 ▲8七歩 △8二飛 ▲7九角 △3四歩 ▲5六歩 △4一玉 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 角 △2三歩 ▲5七角(下図)

f:id:fg_fan7:20170409145049p:plain

Ponanzaは▲6七銀・7八金型を好む。

本譜は最近のソフトの流行である飛車先を切らす展開になった。

完全に力戦形ながら先手としても不満はない序盤戦である。

▲7八金

初手▲7八金はPonanzaが好む初手のうちのひとつ。

プロ棋戦では最近、棋王戦のタイトル戦で千田六段が指した。

2017年2月5日 五番勝負 第1局 渡辺明棋王 対 千田翔太六段|第42期棋王戦

相手が居飛車で来たならば、角換わり、横歩取り、相掛かりなどで普通に対応して一局。

振り飛車で来た時がやや気になるがその時の参考棋譜をみてみよう。

ponanza-990XEE vs. gpsfish_XeonX5680_12c_bid (2016-03-21 14:00)

(初手からの指し手)

▲7八金 △3四歩 ▲7六歩 △4二飛 ▲2六歩 △4四歩 ▲9六歩 △7二銀 ▲9五歩 △7四歩 ▲6九玉 △3二銀 ▲4八銀 △4三銀 ▲5六歩△6四歩 ▲5七銀 △6二玉 ▲3六歩 △5二金左 ▲6八金 △6三銀 ▲7八玉(下図)

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先手は銀冠にする指し方もあるが、組み上げるまでの自陣の形がやや気になるところだ。

ponanzaは78~68に金を動かし78に玉を持っていく指し方も多い。

(上図からの指し手)

△7二金 ▲4六銀 △3三角 ▲3五歩 △4五歩 ▲3三角成 △同 桂▲5五銀 △3五歩 ▲2五歩 △2二飛 ▲8八角 △4二金 ▲4四銀 △同 銀 ▲同 角 △2一飛 ▲5八金上

(下図)

f:id:fg_fan7:20170409150857p:plain

後手陣が△6二玉型なのを見越して急戦を仕掛けていく。

上図最終手の▲5八金上で先手陣は金無双の形になったが、私はこの指し方を「金無双急戦」と呼んでいる。

このような指し方もあるので慣れは必要だが初手▲7八金は振り飛車にも対応できる。

▲6八金

なんとも形容しがたい初手。

一応の狙いとしては69~78に玉を持っていき、戦えなくもないが特にメリットもなく電王戦のPONANZAもこの初手は除外していたかもしれない。

なお、floodgateでの上位ソフトは初手▲6八金はほとんど指していなかった。

▲5八金左

▲5八金左は初手最悪手候補のうちのひとつとしてよく挙げられる。

当然ながらfloodgateでも上位ソフトはほとんど指していない。

電王戦のPONANZAも除外していたことだろう。

せっかくなので一局だけ紹介する。

YaneuraOu_XeonE5-2690v3_24core vs. TMOQ_64bit (2016-04-16 19:30)

(初手からの指し手)

▲5八金左 △3四歩 ▲4八銀 △8四歩 ▲7八銀 △8五歩 ▲7九角 △3二銀 ▲5六歩 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △5六飛 ▲5七銀△5四飛 ▲2六歩 △3三銀 ▲2五歩 △1四歩 ▲7六歩 △6二玉 ▲6六銀 △7二銀 ▲6九玉(下図)

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まさか▲5八金左と上がった金を68~78と戻すわけにはいかないので、本譜のような駒組みになるのは仕方がない。

上図は形勢不利とまではいかないものの駒組みが難しく、やはり先手が好んで指す変化ではないと思う。

実戦はマシンスペックの差もあり先手の勝ちとなった。

▲5八金右

可もなく不可もなくという印象の初手。

当然ながら初手にこう指すと振り飛車にはしにくくなる。

かといって居飛車党ならば他の初手を選びたいという人が大多数だろう。

2016Ponaが4局ほど指していたので一局紹介する。

棋戦:将棋ウォーズ
先手:2016Pona

(初手からの指し手)

▲5八金右 △3四歩 ▲9六歩 △9四歩 ▲7六歩 △3二金 ▲7八金 △8四歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲2六歩 △4二銀 ▲2五歩 △3三銀 ▲5六歩△5四歩 ▲6八銀 △5二金 ▲4八銀 △8五歩 ▲6七銀(下図)

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上図まで進めば普通の将棋ではある。

余談ではあるが、最終手は矢倉を目指すならば▲7七銀だが、Ponanzaは▲6七銀と上がり雁木を目指すことのほうが多い印象がある。

雁木という戦法は主流ではないもののとても有力な戦法であり、将来的には対局数も矢倉<雁木となっているかもしれない。

(上図からの指し手)

△4四歩 ▲3六歩 △4一玉 ▲4六歩 △4三金右 ▲3七桂 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛
▲8七歩 △8二飛 ▲6九玉 △7四歩 ▲6五歩 △7三桂 ▲4七銀 △3一玉 ▲1六歩 △1四歩 ▲7九玉 △5三銀 ▲4五歩(下図)

f:id:fg_fan7:20170409154352p:plain

雁木は居角で攻めることができるのが魅力の戦法である。

 上図は先手がそこそこ上手くいった序盤戦であると思う。

雁木の研究はこれから数年で一気に進む可能性もある。

▲4八金

初めてこの初手を見た時には意味不明だったが、最近角換わり腰掛け銀で▲4八金型が増えていることからもわかるように昔ほど悪い形という認識は無くなってきている感じはする。

むしろ有力な金の配置である可能性が高い。

しかし、だからといって別に初手に▲4八金型にする必然性はなく、この初手が今後主流になることはないだろう。

せっかくなのでこの初手も一局紹介する。

棋戦:将棋ウォーズ
先手:2016Pona

(初手からの指し手)

▲4八金 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲7六歩 △2二銀 ▲7八金 △3二金 ▲3三角成 △同 銀 ▲8八銀 △7二銀 ▲3六歩△8五歩 ▲7七銀 △7四歩 ▲3七桂 △6四歩 ▲5五角 △6三銀 ▲4五桂(下図)

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初手に変わった手を指していても、手が進んでいくにつれ徐々に形が良くなっていくというのはponanza得意のパターン。

本譜は後手の飛車のコビンに隙が出来たのを見計らって▲4五桂速攻を決行した。

(上図からの指し手)

△5四歩 ▲3三桂成 △同 桂 ▲4六角 △9四桂 ▲8八金 △4四歩▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲2九飛 △6二玉 ▲6八玉 △7三桂 ▲9六歩 △8一飛 ▲9五歩 △8六歩 ▲同 歩 △同 桂 ▲8七歩(下図)

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どうも後手の序盤の駒組みに危険があったようで、先手の攻めが成立したようだ。

冷静に後手の攻めを受け止めた上図は先手優勢である。

▲3八金

第二期電王戦2番勝負第一局でPONANZAが指して一躍有名になった初手。

私もネット将棋でたくさん指してみたがなかなか面白い初手であると感じている。

対振り飛車には右金を繰り出しての抑え込み、相居飛車では中住まいや左美濃+▲4六金型が有力である。

詳しくは以前に書いた記事を参考にしてほしい。

参考記事

www.fgfan7.com

まとめ

その②では主に金銀を動かす9通りの初手をみていった。

なかなか良さそう、可もなく不可もなく、イマイチとそれぞれ見解は分かれたが、興味のある人はここで紹介したいろいろな初手を試してみるのも面白いと思う。

次回その➂では残りの初手を検証していきたい。